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第5章ー15

 そんな想いを欧州派遣の内示を受けた面々はしている一方で、欧州に派遣されず、対共産中国戦線に赴くことが決まった者、また、逆に新たに日米満韓連合軍が占領した極東ソ連領や日米満韓側に寝返った外蒙古等の治安維持に当たらされることが決まった者もいる。

 彼らは、様々な悲喜こもごもを呈し、部隊の再編制、再配置に直面することとなり、来春に始まる対共産中国戦線の本格化に対処することになるのだった。


「取りあえずは、後方の安全確保か。仕方ない話だな」

 小畑敏四郎大将は、自虐めいたことを言いながら、自らに与えられた任務を果たすことにした。

 その任務とは、シベリア派遣総軍総司令官として、大雑把に言えば、万里の長城以北の日本軍全てを統括して、占領地の治安維持、民生回復の任務に努めることである。


 占領地と言っても、実際には(通称)満州国政府、蒋介石政権が実効支配している土地もあるし、日米満韓側に寝返り、新たに徳王を指導者とする(旧)外蒙古政権が実効支配を確立している土地もある。

 特に内蒙古の一帯は、蒋介石政権も徳王政権も、お互いに本来の自国領であるという有様だった。

 更に付け加えるなら、蒋介石政権は徳王政権を自国の統治下における自治政府扱いしようと考えているのに対して、徳王政権は自らを蒋介石と対等な政権と考えているという有様である。


 この点について、日米韓の三国政府(更に英仏等の政府も)は、内心では徳王政権側を支持していた。

 だが、今は第二次世界大戦の最中である。

 第二次世界大戦終結までは、この点については事実上棚上げして、各国の政府は共闘していくしかないというのが現実というものだった。


 少なからず話がずれたので、話を戻すと。

 小畑大将の新たな任務の為に与えられたのは、治安維持に当たるための師団、いわゆる丙師団が主力というのが現実だった。

 これまで、小畑大将が指揮していた部隊の中で、機甲部隊の多くは既述のように欧州に派遣されることが決まっていた。

 そして、それ以外の歩兵師団は、米軍と共に中国本土の戦線に多くが向けられることになっていた。

 つまり、中国本土に展開していた部隊の多くと部隊が入れ替えられることになったのだ。


 これはある意味で仕方のない話だった。

 イルクーツクや外蒙古を拠点として、日米満韓連合軍側は、対ソ戦においては守勢に徹するという基本方針が、本国政府、軍の上層部の協議により決まったからである。

 その一方で、中国本土での攻勢再開も決まっている。

 そうなると日本の国力的に余裕がない以上、部隊の再配置、再編制で、日本軍は戦力をひねり出すしかないというのが現実というものだった。


 このために小畑大将の手元に残される戦力は激減することになったのだが、その一方。


「確かに戦力は充実し、米軍の本格的な来援もある。西安、武漢三鎮、長沙、広州等へ、更に現在、共産中国政府が事実上の臨時首都としている成都まで前進できる戦力は整ったといえるだろう」

 岡村寧次大将は複雑な表情を浮かべながら言った。

「確かにおっしゃる通りですが。こんな泥沼の戦争を続けてよいのか。参謀長の私としては疑問を呈さざるを得ません」

 今村均中将は、内心に溜め込んだものを吐き出すかのように言った。


「全くだな」

 岡村大将は、今村中将の言葉に肯くように言わざるを得なかった。


 中国内戦が始まったのは、1937年の夏だった。

 その後、一時的な攻勢を日満連合軍が1938年に展開したことがあったが、その日満連合軍の攻勢がその年内に終わった後は地上戦では睨み合いが基本的に続く一方で、日米の航空隊が戦略爆撃を行うことにより、共産中国政府の屈服を図ろうとしているというのが現実だった。

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