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第5章ー3

 日米連合軍のイルクーツク方面への攻勢が開始されたのは、1941年9月20日だった。

 それこそ教科書でお手本にできそうな基本に忠実な攻勢だった。


 敵戦線の後方には重爆撃機部隊を飛ばし、連絡線、補給の途絶を図る。

 前線近くに航空管制班を展開させて、戦術爆撃機部隊等により、敵前線にし烈な爆撃を加えるとともに、砲撃観測班による砲撃を更に浴びせる。

 それにより、ソ連軍の戦線が綻んだところに、戦車部隊と自動車化歩兵部隊を突撃させて、更に戦線を崩壊させる。

 その後は、戦車部隊と自動車化歩兵部隊で敵の後方へと更なる進撃を図り、徒歩歩兵部隊で取り残されているソ連軍の残存部隊を掃討するというものだった。


 それ以前から、大興安嶺付近で日米連合軍と対峙しているソ連軍は徳王率いるモンゴル民族主義者による後方破壊活動によって、補給物資が不足気味になっていたが、日本空軍と米陸軍航空隊が協同して行った補給破壊活動は、それに更に致命的な打撃を加えた。


「これがソ連軍の防御射撃か。思ったより弱いな」

 西住小次郎大尉は、そう呟きながら、今や人馬一体ならぬ人車一体の境地に達しつつある自らの一式中戦車を指揮して、ソ連軍の最前線陣地を蹂躙突破した。

 念のために百式重戦車後期型を前面に据え、その後方を一式中戦車で支援してのソ連軍の最前線陣地突破を図ったのだが、念を入れ過ぎたような気がする。

 初陣の部下にしてみれば、拍子抜けしたのではないだろうか。

 もっともそれは、西住大尉が戦車に乗っていたからで。


「小隊長、こんなに銃弾を敵は浴びせて来るものでありますか」

「うん。今回のは、かなり撃って来ない方だが」

「これででありますか」

 今回が初陣の補充兵にしてみれば、自分に銃弾が集中しているようにさえ思えるのだろう。

 右近中尉の傍にいる補充兵は完全に声を震わせている。


 一方の右近徳太郎中尉は、周囲に気を緩めずに目を配りながら、擲弾筒分隊に援護射撃をさせつつ、軽機関銃分隊を前進させていく。

 右近中尉にしてみれば、この程度の射撃、怖いことは怖いが、そう大したものではなかった。

 だが、初陣の補充兵にしてみれば怖い代物だろう。


「ともかく身を伏せて、適宜、その小銃を敵兵に向かって撃て」

「はい」

 少なくとも撃てば、多少なりとも恐怖心が薄らぐはずだ。

 そう考えて、右近中尉はその補充兵に指示を出し、(右近中尉の目からすれば)その補充兵は弾をばら撒きだした。


 このような戦いを行った後、右近中尉率いる歩兵小隊は、ソ連軍の最前線陣地を突破することに成功した。

 ソ連軍の最前線陣地を突破した後、西住大尉も右近中尉も、部下と共に更なる前進を策し、それに成功した。


 日米連合軍の最初の目標となったのは、チタだった。

 この時、この方面に展開していたソ連軍はシベリア鉄道の損害と補給能力から、額面上は15個師団に達していたらしいが、10個歩兵(狙撃)師団程度にまで戦力を低下させていた。

 一方の日米連合軍は、日本陸軍5個機甲師団、米陸軍10個歩兵師団が、この攻勢に投入されており、更に航空優勢が日米側にあることから、有利に攻撃を展開することが出来ていた。


 とは言え。

「いきなり爆弾が夜空から降ってくるとは」

「日米が共同使用している移動式電探では探知が困難か。かと言って、夜間監視員の目と耳でも早期探知は難しい。あいつらは単機飛行を好むからな」

 そう西住大尉は部下と愚痴りあう羽目になった。


 ソ連空軍は、Po-2を使用した夜間空襲に活路を見出して、それを多用した。

 Po-2は複葉機で時代遅れ臭のする代物だったが、低速すぎて日米軍の戦闘機では捕捉困難だった。

 その心理的な影響は結構なものがあったようである。 

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