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第1章ー1 禁断の兵器

 第1章の始まりになります。

 大河内正敏子爵という貴族院議員がいる。


 土方千恵子が、義祖父の土方勇志伯爵(義祖父も貴族院議員に選出されている)の私設秘書として働き出した当初、最初に千恵子が心掛けたのが、全ての貴族院議員、衆議院議員の顔と名前を一致させ、更にある程度の人物像を把握することだった。

 義祖父は何も言わなかったが、秘書として働く以上、それ位はやらねばと千恵子は考えたのだ。

 そして、懸命に貴族院議員、衆議院議員全員の顔と名前を千恵子は覚え込み、更にある程度は人物像の把握までも徐々に済ませつつあったのだが。


 その内に、義祖父が大河内議員を敬遠しており、更に相手も同様であることに千恵子は気づいた。

 何故なのだろうか、と大河内議員の周囲を千恵子は探ったのだが、その過程で千恵子も大河内議員を敬遠するようになってしまった。

 何故かというと。


 大河内正敏の大河内姓だが、実は明治維新前は松平姓だった。

 それも江戸時代に超有名人を出した家でもあった。

 徳川家光、家綱と二代の将軍に仕え、「知恵伊豆」と名を馳せた老中、松平信綱である。

 更に言うなら、信綱は、家光から「託孤の遺命」を受け、事実上の将軍後見人として幕政を取り仕切った保科正之にとって右腕ともいえる存在だった。

 直接の子孫ではないが、家督相続の点から見れば、大河内正敏は、その松平信綱の直系の末裔と言うことになる。

 

 更に言うならば、保科正之は言うまでもなく、会津松平家の藩祖である。

 こうした経緯からすれば、両親共に会津藩士の末裔である千恵子は、大河内家現当主である大河内正敏に親近感を持つのが本来の姿であると言えた。

 だが。


 幕末の動乱、鳥羽・伏見の戦いが、会津松平家と大河内家、更に土方家の仲を微妙にした。

 大河内正敏の実父、松平正質は、この時に総督として旧幕府軍の将帥の一人であったが、鳥羽・伏見の戦いが旧幕府側の敗北に終わった後に速やかに周囲に取りなしを頼んで回り、鳥羽・伏見の戦い前後には旧幕府軍の首魁呼ばわりされていたのに、薩長側への帰順が認められ、更に明治維新後には御咎め無しということになり、領地削減どころか藩主交代もなくして、そのまま華族にまでなったのである。

 その際に、松平姓では色々と今後は差しさわりがあるといって、江戸時代以前の系図まで持ち出して大河内に、松平正質は改姓してしまった。

(幕末までは、我が藩は親藩だ、と松平正質は鼻に掛けていたのにである。)


 一方、会津松平家は悲惨極まりない会津戦争を戦った末に、明治維新に際して、松平容保は隠居、更に斗南藩に23万石から3万石に減封の上で転封という厳罰に処された。

 そして、土方勇志の父、土方歳三もその際に幕府軍、会津藩の味方として戦ったという経緯がある。

(ちなみに言うまでもないことだが、林忠崇に至っては、この時に滅藩処分という苛酷な会津藩以上の処分を明治維新に際して受ける羽目になっている。)


 幾ら大河内正敏に責任はなく、実父のしたこととはいえ、何と無しにあの男の実子か、どうも気に食わないという感情が、土方勇志(や千恵子)に過ぎるのはやむを得ない話だった。

 更に言うなら。


 土方勇志が伯爵に叙せられたのは、父の令名があった、林侯爵の贔屓があった、という陰口が無くは無いが、文句なしに一代の軍功で爵位を勝ち取ったといえるものだった。


 一方の大河内正敏が爵位(子爵)を持っているのは、養父から受け継いだものである。

(なお、養父と実父は兄弟であり、正敏は伯父の養子として爵位を受け継いでいる。)

 そして、大河内正敏は工学博士であり、理研グループと称される財閥の領袖でもあった。

 土方勇志とは肌合いが違いすぎ、それもあってお互い敬遠していた。

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