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第4章ー3

「ところで、わしも聞きたいことがあってきた。もう一人のボースの行方は分かったのか」

「スバス・チャンドラ・ボースのことですか。英政府の官憲のみならず、インド国民会議派のシンパまで懸命に捜索していますが、どうもソ連に既に亡命しているのは間違いなさそうですな。ソ連から嘘の情報が流れたと信じたかったのですが、インド国内にはどうも潜伏していないようです」

「厄介なことになったな」

 土方勇志伯爵とラース・ビハーリー・ボースは、そうやり取りをし、二人は深刻な顔になった。


 スバス・チャンドラ・ボースの名に土方千恵子は覚えがあった。

 こちらのボースも有名なインドの革命家、独立運動家である。

 いやスバス・チャンドラ・ボースの方が遥かに有力な存在だった。


 この当時のインド独立運動の主な担い手といえたインド国民会議派は、内部に右派(穏健派)から左派(急進派)まで広く包摂する団体(政党)だった。

 その中でスバス・チャンドラ・ボースは、左派(急進派)の中心と言える存在で、マハトマ・ガンディーを中心とする主流派に対峙していた。

 特に対立したのが、マハトマ・ガンディー率いる主流派が、インド独立運動について非暴力主義に基づく反英不服従運動を信奉していたのに対し、スバス・チャンドラ・ボース率いる左派(急進派)は、インド独立運動については武力によってのみ達成されるとしていたことだった。


 その余りに過激な主張から、インド国民会議派が分裂することを懸念したマハトマ・ガンディーは主流派内部を説得して、1938年度の1年限りのインド国民会議派の議長職をスバス・チャンドラ・ボースに提供することで、左派(急進派)の懐柔を図ったが、却って増長したスバス・チャンドラ・ボースは、1939年度において半ばお手盛りの議長選挙を行い、議長選挙に勝利を収めて、インド国民会議派の議長職の続投を図った。

 だが、このことはマハトマ・ガンディー率いる主流派の離反を招き、任期半ばでの議長職辞任をスバス・チャンドラ・ボースは余儀なくされた。


 その後、スバス・チャンドラ・ボースは、前進同盟というインド国民会議派内の団体(いわゆる党内党)を結成して自らがトップに収まり、自身のインド国民会議派の議長返り咲きを狙っていたのだが。

 そういった時に起こったのが、1939年9月に勃発した第二次世界大戦である。

 スバス・チャンドラ・ボースにしてみれば、千載一遇の好機が到来したのだ。


 スバス・チャンドラ・ボースは、早速、マハトマ・ガンディーらに対して、対英独立の武装闘争、レジスタンス活動の開始を訴えたが、マハトマ・ガンディーらは、そのような武装闘争の準備が出来ておらず、レジスタンス活動はインドの民衆に多大な犠牲を出すとして反対した。

 逆にその言動を察知した英政府の治安当局により、治安妨害等の容疑を掛けられたスバス・チャンドラ・ボースは、第二次世界大戦終結まで収監されることになってしまった。

 しかし、スバス・チャンドラ・ボースは諦めなかった。


 ハンガーストライキをスバス・チャンドラ・ボースは行い、衰弱によって仮釈放されて入院していた際、熱烈な自らのシンパの協力を得て、スバス・チャンドラ・ボースは地下に潜伏することに成功した。

 英政府の治安当局は慌てふためき、また、マハトマ・ガンディーらも、スバス・チャンドラ・ボースのこれまでの言動を危険視したことから、水面下で手を組んでスバス・チャンドラ・ボースの行方を捜索することになった。


 こうした状況から、スバス・チャンドラ・ボースはインドからの亡命を決断した(らしい)。

 と言うのは、スバス・チャンドラ・ボースの足取りが分からないのだ。

 チャンドラ・ボースの思想、行動ですが、仮想史小説という事もあり、史実と微妙に違えていますので、その辺りはご了解ください。


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