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第3章ー13

 そんなふうにかつて自分が情を交わした女性が想っていること等は思いも寄らずに、重い気持ちのまま、アラン・ダヴー大尉はウィーンからマドリード近郊へと移動し、スペイン青師団の編制、強化に協力することになっていた。


 さて、スペイン青師団とは何か。

 第二次世界大戦において、スペインは表向きは中立を保ち続けた。

 何故かというと、(第二次世界大戦の前哨戦と謳われる)スペイン内戦の惨禍の傷を癒すのに、スペインは手一杯だったという国内事情からだった。

 だが、これは連合国側の一部の国において、反感を覚えるものだった。

 何故かというと。


 スペイン内戦は、上記のように第二次世界大戦の前哨戦と謳われるものだった。

 共和派をソ連が、国民派を英日伊が、半ば公然と後押しした末に、国民派が勝利を収めたのだ。

 それなのにソ連と戦うのに際して、勝利を収めた国民派が占めるスペイン政府が、中立を保ち続けるというのは、英日伊にとって、理屈としては分かっても、感情的には反感を覚えるものだったのである。


 また、スペイン政府の内部事情もあった。

 スペイン政府の上層部には内戦の経緯から、熱狂的な反共主義者が多数おり、彼らは対ソ宣戦を熱烈に主張している一方、内戦に敗れた共和派が国内で力を取り戻さないような対策を講じる必要性もあった。

 こうした状況から、スペイン政府はいわゆる国内のガス抜きが必要であると考えていた。

 

 こういった思惑が絡み合った結果、スペインのフランコ総統は、ある程度は国内の傷が癒え、連合国軍によるソ連本土侵攻作戦が間近に迫った1941年秋になって、連合国側の政府に対してある提案を行った。

「スペインは、ソ連本土侵攻作戦において、連合国側に義勇兵を派遣する用意がある。但し、その義勇兵のための兵器弾薬は全て連合国側に少なくとも負担してもらう必要がある」


 この当時、連合国軍は本音を言えば兵員確保に悩んでいたという現実があった。

 何しろ共産中国は世界最大の人口を誇る国家である。

 また、後述する(次章で主に述べる)が、実質的に次の人口を持つインドもソ連の画策する陰謀により不安定化しつつあるという現実があった。

 それへの対処するための兵員を連合国は確保する必要があったのだが。


 日米は対共産中国戦に倦みつつあり、兵員の損耗も深刻化しつつあった。

 また、英もインドが不安定化しては、そうそう兵員を対ソ戦に向ける訳には行かなかった。

 こういった状況から、兵員確保よりも兵器製造の方が(相対的にだが)順調という現実があった。

 こうしたことから、スペインのフランコ総統の提案を、連合国は受け入れることにした。

 もっとも、実際にどんな義勇兵が集まったかというと。


 熱狂的な反共思想から義勇兵に志願した者がいる一方、父や兄が共和派だったことから、遺された家族を少しでも迫害から守ろうと義勇兵に志願する者もいるといった有様だった。

 だが、総体としていえるのは義勇兵として志願してきた者は、良質な兵とは言い難かったという事だ。

 これはある意味、当然の話で、戦争景気に沸くスペインにおいて、酔狂にも対ソ戦の戦場に行く者の質が良い訳が無かった。

 まともに食べられる仕事を捨ててまで戦場に行く必要は無い、と考える人間が世間では多数を占めるのは世の理だった。

 さすがに、こんな義勇兵を対ソ戦に送り出す訳には行かないとフランコ総統らは考えた。


 そのためにフランコ総統らは、義勇兵を集めた部隊の士官、下士官は、正規軍から派遣することにした。

 また、スペイン軍を見回して最優秀とフランコ総統自ら考えたグランデス将軍を義勇兵団の長に据えるという英断を下した。

 このような紆余曲折を経て、青師団は編制された。

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