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第3章ー3

 ダヴー大尉とフリアン曹長は、マドリードからベオグラードまでは旅客機で、ベオグラードからブダペストまでは鉄道を活用して移動することになっていた。

 思わず本名を呼ばないように、また、暫く使っていなかったスペイン語を流暢に話せるように、二人はスペイン語の会話等をして、その間の時間を有効に使うことにした。

 とは言え、そうそう話すネタが思いつく訳もない。

 気が付けば、二人はブダペストでの任務の背景等について語り合うことになっていた。


「何でスペインの軍人として、ブダペストに向かうことになったのです」

 フリアン曹長は、ダヴー大尉にスペイン語の小声で嘆いた。

「うん。スペインがハンガリーで活動する格好の理由があったからだ」

 ダヴー大尉もスペイン語で即答した。

「どういう理由ですか」

「知らないのか」

 二人は更にスペイン語でやり取りをして、ダヴー大尉は背景説明をすることになった。


「そもそも、ユダヤ人といっても一括りにできないのは知っているか」

「そうなんですか。ユダヤ人の知り合いが余りいないので知りませんでした」

 ダヴー大尉の問いかけに、フリアン曹長は即答する有様だった。

 ダヴー大尉は、これは説明に手間取りそうだ、と本腰を入れることにした。


 さて、ユダヤ人と一括りにされることが多いが、実際には大きく二つの集団に分かれる。

 この二つは基本言語も異なる集団で、アシュケナジム、セファルディムと一般に呼ばれることが多い。

 一方のアシュケナジムは、多くがイディッシュ語(ドイツ・ユダヤ語)を基本言語としている。

 もう一方のセファルディムは、ラディーノ語(ユダヤ・スペイン語)の話者がやや多いとはいえ、他のユダヤ・ラテン系言語等の話者が多数を占める。


 この二つの集団の起こり、分け方については、学者、専門家の間で論争になる。

 やや多数を占める説によれば、基本的にはだが現に住む地域と話す言語によって分けられる集団と言うことになる。

 アシュケナジムは、ドイツ、東欧諸国に基本的住んでいる。

 セファルディムは、南欧や北アフリカ、中東に基本的に住んでいる。

 そして、その起こりだが。


 いわゆるユダヤ戦争後のディアスポラにより、ユダヤ人は世界に離散した。

 そして、世界各地にユダヤ人は散在するようになった。

 中世欧州において、ユダヤ人は「キリスト殺し」として基本的に一貫して迫害されていた。

 土地の所有は禁じられ(つまり農業は基本的にできない)、商工業ギルドもキリスト教徒のみが加入を認められ、という所が多かったために、ユダヤ人は、金貸しや行商、芸能といった職業に就くしかなかった。

 とは言え、幾つか欧州でも例外の土地があった。


 例えば、ポーランド王国である。

 13世紀以降、モンゴルやドイツ騎士団の侵攻に苦しんでいたポーランド王国は、ユダヤ人を受け入れることで、人口の増加や税収の確保(この当時のポーランド王国はドイツ民族以外の移民は受け入れる用意があった)を図った。

 そうしたことから、欧州各地からこの当時、ポーランド王国が支配していた東欧各地に移住するユダヤ人が増えた。

 これがアシュケナジムの起こりとされる。


 また、中世においては、当時イスラム教徒が基本的に支配していたイベリア半島にすむユダヤ人も多かったが、こちらはレコンキスタが完了した16世紀以降、スペイン王国から迫害されるようになり、南欧諸国や北アフリカ、中東へと流出していき、オスマン帝国等は彼らを庇護した。

 これがセファルディムの起こりとされる。


 なお、アシュケナジムと改宗したユダヤ人が支配層を占めたハザール王国の関わりをどう考えるか等、細かい部分については、多数説内部にも色々と対立があるのが現実である。

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