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第2章ー18

 東欧史やドイツの東方植民史に詳しい方から、多大なるツッコミがありそうな話になります。

 できるだけお手柔らかなご指摘をお願いします

 土方勇中尉自身、伝聞による誤りや誤解が混じっているかもしれないと思いつつ、父の話をあらためて想い返した。


 父によると、ヒトラー率いるナチス党が唱えた東方生存圏は、意外と歴史的に根が深いものだという。

 中世、12世紀頃から当時はキリスト教(カトリック)を余り受け入れていなかったスラブ、バルト民族の住む土地に対して、スラブ、バルト民族に対する改宗を進めると共に、土地のないドイツ民族による、いわゆる東方植民運動が始まった。

(10世紀には、ポーランド等において一部の西スラブ系民族がカトリックに改宗等はしていたが、12世紀当時はまだまだ異教徒が多かった。)


 とは言え、そこにスラブ、バルト民族が既に住んでいる以上、現地にいるスラブ、バルト民族による武装抵抗運動が起こり、それに対処するためにドイツ騎士団等は戦う羽目になり、現地にいるスラブ、バルト民族を虐殺等してまでも、ドイツ民族は土地を入手していった。

 それを大きな原因として、幾つかのスラブ、バルト語を話す民族は絶滅に至ったという。


 それによって、11世紀以前にはエルベ河より東にはドイツ民族がほとんどいなかったのに、東方植民運動がほぼ終わる15世紀頃には、エルベ河より東、バルト海沿岸を中心に大量のドイツ民族が移住した。

 また、その過程で、ある者はカトリックを受け入れ、また、東方正教を受け入れという形で、スラブ、バルト民族はほぼ完全にキリスト教徒になった。

 父によれば、そういった背景もあって、ヒトラーは東方生存圏を唱えたのではないかという。

 

 なお、その歴史の過程の中で色々な民族、宗教も東欧に流れ込んだ。

 例えば、ユダヤ人(ユダヤ教徒)であり、ロマ(ジプシー)である。

 今、東欧で吹き荒れている異民族、異教徒排除の動きは、それだけ歴史的に根が深い代物だった。


 ある時は宥和し、ある時は憎しみの果てに武器を向けあい、と長い歴史を重ねてきたのだ。

 元をたどれば、ここはスラブ民族の土地だ、ドイツ人は出ていけ、というポーランドやチェコスロヴァキアに住むスラブ系住民の想いを、むげに否定することはできない、と土方中尉は想わざるを得なかった。

 だが、それによって今引き起こされていることは。


 ポーランドやチェコスロヴァキアといったところから、ドイツ各地に向かう列車はドイツ系の乗客で一杯になり、ドイツ各地からポーランドやチェコスロヴァキアに向かう列車は連合国軍の将兵や物資でいっぱいになるという事態が引き起こされている。

 ドイツ系の乗客で、ドイツ国内に身寄りのある者はまだいい。

 身寄りのない者は、ドイツ国内にはたどり着くものの、それこそ路上生活を家族全員ですぐに余儀なくされる有様だった。


 勿論、ドイツを軍政下におく米英仏が手をこまねいている訳ではない。

 だが、どうにも数百万人単位の民族移動となると対処するにも限度があった。

 しかも、その一方で対ソ(欧州)本土侵攻作戦の準備も進めねばならないのだ。

 テントやバラックを供給して、せめて雪や風が凌げるようにと配慮するのが手一杯、教会等による慈善活動にも頼らねばならないという現状らしい。

 

「連合国軍の将兵に身を任せる若い女性が増える訳だ」

 土方中尉は更に独り言を呟いた。

 潔癖な土方中尉にしてみれば堪らない話だが、先行してポーランドやチェコスロヴァキアに展開している連合国軍の駐屯地の近くには、早くも兵士向けの臨時の歓楽街ができつつあるという。

 そこで働く女性の多くが、従前からポーランドやチェコスロヴァキアにいたドイツ系の住民らしい。

 ドイツから生活苦のためにそこに行く女性までいるという噂が、日本海兵隊の駐屯地内にまでも流れる有様だった。

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