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第2章ー15

 土方勇志伯爵とペタン仏首相の会談が、一つのきっかけになった。

 土方伯爵の提案について、ペタン仏首相が考慮に値するとの態度を示したことから、土方伯爵率いる日本からの特使団は、日本の本国政府に対して、ペタン仏首相の態度を急きょ連絡した。

 その足で、土方伯爵達は英米両国政府の要人とも、日本本国への帰途において会談を行った。

 ペタン仏首相の態度変更に伴う仏政府の独に対する外交姿勢の軟化は、英米両国政府にも効果があった。

 そのために。


「1941年の独民族へのクリスマスプレゼント」

 と後に伝えられる出来事が起こることになった。


 1941年12月21日、緊急の連合国外相理事会がロンドンで開始された。

 3日間に及ぶこの理事会において、米英仏日等の連合国は、独の復興を進めるために、独の軍事産業を連合国監視下で再稼働することを認めること、但し、それは暫定的なもので可及的かつ速やかに民需へと転換を進めること、そして、それによって生産された兵器等については、連合国の管理下に全て置かれるが、それと引き換えに食料等を独に連合国は提供することが決定、公表された。

(なお、その裏で、独の保有してきた技術について仏等が優越して確保することが秘密裡に認められた。)


 日本からは吉田茂外相以下の面々がこの時に派遣されて、他の連合国との利害調整に当たった。

 日本政府の本音としては、独の各種技術について、日本にも相応の分け前が欲しいところではあったが、連合国間の協調優先と、独民族蜂起の危険を勘案した末に、日本への分け前を断念して、上記の結論に至るように、米英仏等と直接に交渉を行ったり、また、仲裁役になったりと多忙極まりない事態となった。


(もっとも、日本政府としても、独民族への全くの善意から上記の事を行ったのではない。

 日本政府にしてみれば、対ソ(欧州)本土侵攻作戦中において、欧州で混乱が起きることは何としても避けるべきことだった。

 だから、独民族の不穏な動きは何としても事前に鎮めたいというというのが本音であり、その想いはかなりの程度において、米英等の各国政府上層部でも共有する想いだった。


 更に述べれば、先の第一次世界大戦の反省が各国政府上層部の間で暗黙の裡にあったのも大きかった。

 ヴェルサイユ条約で余りにも苛酷な条件を独に押し付けた結果、独の国民の間に連合国に対する反感が高まり、それによって第二次世界大戦が起きたという反省があったのである。

 そして、来年の春に発動される予定のソ連(欧州)本土侵攻作戦のためには、少しでも兵器等が必要であるという現実も、各国政府上層部の判断を、独に対して宥和的な態度を執らせる要因となった。)


 こういった連合国外相理事会の決断は、第二次世界大戦の敗北に苦しむ独の国民、民族にとって、福音としか言いようが無かった。

 それこそ、職場が確保されることになり、更に生産した兵器は連合国が全て管理販売することになったとはいえ、それとバーター取引で食料品等を入手できるようになったのである。

 食糧難で餓死者が出るという現実だったが、自らが努力すれば、食糧を入手できるという希望が目に入るようになったのである。


(ちなみにバーター取引は、日本政府の苦肉の提案とも言えた。

 現金、外貨を独に渡しては何に使われるか分からない、という警戒心を一部の連合国政府上層部が示したことから、その懸念を避けるためにバーター取引という方策を提案したのである。

 ヒトラー政権時代に外貨不足に苦しむ独では兵器を売って原材料を手に入れることが稀でなく、独ではそれなりにバーター取引に馴染んでいたことが、この時にバーター取引を成功させた一因でもあった)

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