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第1章ー9

 そんなことが1941年11月初めの土方伯爵家では起こっていたが、米英日仏による共同核兵器開発計画となった「マンハッタン計画」は、同じころに試行錯誤を繰り返しつつ、進みつつあった。


 例えば、核兵器に必要不可欠な濃縮ウランだが、この当時に知られていた4つの方法全てを並行的に行ってウラン濃縮が試みられることになった。

 これは米国が加わることによって可能になったことだった。

 日英だけの力では、4つの内2つを並行的に進めることさえ困難だった。


 ちなみに4つの方法とは何かというと。

 遠心分離法、ガス拡散法、電磁分離法、熱拡散法の4つだった。

 当時の技術では、この4つの方法のどれが、最も濃縮ウランを効率的に生成できるのかを、プラントを造らずに理論のみで判断することは不可能と言ってよいレベルの話であり、4つの方法を全て試みた上で、最も効率的な方法を判断するということになったのである。


 結果だけを言えば、電磁分離法がこの当時の技術からすれば最も有効であった。

 だが、これはこれで大変な方法だった。

 銅が戦略物資として当時は必要不可欠な存在だったにも関わらず、大量の銅が電磁分離法で濃縮ウランを生成するには必要だったために、その代用品として、わざわざ銀を集めて使用する、というぜい沢極まりないことをやらざるを得ない羽目になった程である。


 その話は第二次世界大戦後に明かされたのだが、それを聞いた多くの人が、銅の代わりに銀を使うとはぜい沢極まりないと驚嘆したほどだった。


 また、核兵器開発の為の土地の確保等も進められた。

 それによって、ロスアラモスやオークリッジ等で核兵器開発の為の施設建設が進められることになった。

 これにグローブス准将等の面々は、精力的に動き回ることになった。


 そして、米国以外から駆け付けた科学者も、こういった環境に応じて、適宜に配置されて行った。

 この頃、米国(というよりグローブス准将)の方針としては、各国の科学者を細かく分離して、自分が専従している個別の分野以外の進捗状況については、お互いに全く知らないという状況で核兵器開発の研究を進捗させたかったらしい。

 これは機密漏洩を怖れる軍人の発想からすれば、極めて真っ当な考えだった。

 だが、科学者たちの基本的な発想には真っ向から反していた。


 科学者たちの基本的な発想からすれば、専従の個別分野以外の進捗状況等はお互いに開示して、情報を伝え合うことが、科学の進歩(この場合は核兵器の順調な開発進捗のため)には必要不可欠だった。

 更に英日仏も、科学者たちの基本的な発想を積極的に支持した。

 何故なら、米国による核兵器開発情報の独占を危惧したからである。


 仏はともかくとして、英日にしてみれば、自分達の研究があったからこそ、米国が核兵器を開発できるのであり、米国による核兵器開発情報の独占は我慢ならない話だった。

 米国の秘密主義を積極的に容認しては、結果的に米国による核兵器開発情報の独占が進みかねない、と英日は危惧したことから、核兵器開発に際しては科学者を細かく分離して進める、という米国の方針に英日は反対することになり、それを宥めるために、米国は核兵器開発情報の英日仏への開示をある程度は認めざるを得ないという事態が引き起こされた。


 このように1941年末から1942年初めに掛けて、「マンハッタン計画」は様々な思惑が渦巻き、半ば迷走しながら進捗していかざるを得ないという事態が引き起こされたのである。

 だが、迷走はしていても、独の科学者を手に入れたソ連の核(ロケット)脅威に対処するためには、「マンハッタン計画」を米英日仏は進めざるを得なかったというのも、当時の現実だった。

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