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プロローグー1

 1941年9月中旬の「四姉弟」視点の話に、プロローグはなります。

 9月も中旬になったある日、ベルリン近郊の第6海兵師団の駐屯地に、土方勇中尉の姿はあった。

 ワルシャワからウィーンを経由して、ようやくベルリン近郊まで土方中尉はたどり着いたのである。

 本来からすれば、ワルシャワからベルリンに行くのに、ウィーンを経由する等、遠回りもいい所なのだが、土方中尉はそうする必要があったのだ。

 その理由だが。


「全く暴れるにしても、もう少し考えてから暴れろ」

「言われる通りです」

 義弟の岸総司大尉に顔を合わせて早々に土方中尉は忠告され、土方中尉は頭を下げて言う羽目になった。

 岸大尉は、土方中尉からすれば、義弟とはいえ2歳年長であり、階級も上で、尚且つ海軍兵学校の2期上の先輩でもある。

 更に暗に岸大尉が言いたいことを考え合わせれば、土方中尉は身をすくめるしかなかった。


 先日、ダンツィヒを占領した際に、その近郊に設けられていた独軍の慰安所を日本海兵隊は確保した。

 こういった施設については、独軍は連合軍が迫る前に閉鎖して、働いていた女性達を追い出す等して、証拠を隠滅することが多発していたが、この時は日本海兵隊の進撃が急だったために、慰安所はそのままで働いていた女性達もそのまま確保されたのだ。

 そこまでは良かった。

 だが。


 第1海兵師団の素行の悪い下士官兵複数が、彼女達を利用するという不祥事を起こした。

 更にその上司たる尉官級の士官も何人か、彼らの甘言に誘われて彼女達を利用した。

 利用した面々からすれば、これまでもそういったことをしてきた女性達であり、別にいいではないか、という理屈である。

 しかし、彼女達のほとんどが、本音ではこういった所から解放されたいと願っており、利用した面々の願いを叶えれば早く解放されるのでは、と考えて止む無く応じたという事情があった。


 それを知った土方中尉が激怒して、所属している第1海兵師団司令部に告発し、更に遣欧総軍司令部にまで告発したのだ。

 この不祥事が発覚した当初、師団司令部としては内々の処分で済まそうと考えていたが、遣欧総軍司令部まで先に告発がいっており、しかも告発者が土方中尉(言うまでもなく海兵隊きっての名門出身)ということから、内々で済ませる訳には行かなくなり、厳重に処分せざるを得なくなった。

 更に遣欧総軍司令部も、こういった事態が起こらないように指針を(内部に)示すことにした。

 その一方で。


 こういった独軍の施設について、これまでにも日本以外の連合軍では曖昧な取り扱いが多発していた。

 中には看板を架け替えただけで自軍の施設にした例まであったという。

(それこそ、日本海兵隊で利用した面々と基本的に同じ小理屈からで、これまでもそう言ったことをしてきた女性達であり、別にいいではないか、という主張である。)


 そういった軍にしてみれば、日本海兵隊の態度は、立派と言えば立派だが、いい格好をしやがって、という想いもさせられる話だった。

 そう言ったことから、日本軍としては、決して他国軍のこれまでの取り扱いを非難するつもりはない、と遣欧総軍司令部は内々に釈明して回ることにし、土方中尉もウィーンにいる仏軍司令部に釈明に行かされたという次第だった。


「やってしまったことは仕方ないが、これからは自分の立場をよく考えて動けよ。自分の正義感から動いたのだろうが、傍から見ると土方伯爵家の権威を振りかざして動いたように見られても仕方ない。自分にその気は無くとも、周囲はそう見るぞ」

「はい」

 岸大尉は、あらためて土方中尉に忠告した。

 その言葉を聞いて、土方中尉はあらためて背中に汗がにじみ出る想いがした。

 確かに否定できない、自分にはその気は無くとも周囲が忖度しかねない立場にあるのだ。

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