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断切  作者: 池田 ヒロ
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五百二十三日目

 キリが二人の家へとやって来て、一年と半年が経った。家の畑で草むしりをしている彼を見て思う。あんなに小柄で死にかけていた子が、自分たちの養子となり――こうしているだなんて、と。


感慨深いものだな、と改めて思っていると、偶然にもアシェドの足元に人懐っこい小動物がすり寄ってきた。誰かに餌付けでもされているのかとも思ったが、そうではないだろう。この村では小動物を見掛ければ、仕留める――すなわち、捕まえることが当たり前。そして、その捕らえた動物を捌いて自分たちの胃袋へと収める。だが、これを自分たちはしない。この手で捌くという行為に抵抗があるからだ。そんなものやったあかつきにはしばらくの間肉を食べるということができなくなってしまう。それだけは勘弁だ。なぜって、アシェドは肉が好きだから。命をいただくという大切さも大事だと思うのだが、それを美味しくいただきたいのも事実。だからこそ、肉は下の町の食料雑貨で購入するべきだ、と考えているのである。


 そんなアシェドは「第一なぁ」と優しく捕まえた。小動物は大人しい。ふんふんと鼻を鳴らし、耳をぴくぴくと動かす。


「こんな、可愛いのがあんな姿になるのはわかっていても、経過だけは見たくないよなぁ」


 そう呟いていると、草むしりをしていたキリは立ち上がってこちらの方へと駆け寄ってきた。目をキラキラと輝かせている。その綺麗で、純粋そうな薄い青色の目は一年前よりも澄んで見えていた。そして何より、自分の腰ぐらいの身長だったのが腹辺りまでに大きくなっていた。彼が健康に育っているという証拠だ。


 キリは「父さん」とどこか羨ましそうな面持ちで小動物を見つめている。


「それ、おれに触らせて」


「いいぞ」


 一年半前、小動物を見るだけで体が仕留めにかかろうとしていたキリはもういない。それをしてはいけない、と必死になって右手を押さえつけていた可哀想な子どもはもういない。今では――。


「もふもふだぁ」


 キリはアシェドから小動物を受け取ると、優しく頭をなでてあげていた。よしよし、お前は可愛いなぁ。なんで、こんなに可愛いんだ? この手足、ふにふにする腿、柔らかいお腹、ふわっふわの毛並み――!


「もふもふ、気持ちいい」


 ふわふわの毛並みに顔を埋めてしまうほどの愛でっぷり。こうなるきっかけが、半年ほど前の朝の情報番組だった。テレビタレントがぬいぐるみに頬ずりをしているところを見たキリが「何をしているんだ」と首を捻っていたから、それを教えていたら。動物をむやみに殺してはいけない、可哀想だろう、という教えのもと――このような結果となってしまった。正直言って、ドン引きしているのを彼には内緒にしている。だが、以前と違って小動物イコール食べ物とした認識はなくなっているようで、殺そうとしないだけマシである。それだからこそ、アシェドは「ほどほどにな」と苦笑いするしかない。


 しかしながら、この異常なまでの愛で方をしているせいで、キリに抱っこされる小動物は逃げ出したがっている様子。現にじたばたと手足を動かしていた。止めてあげたら、と言うに言えない状況の中――。


 車道の方から一瞬だけ光が見えた。それはキリも気付いたようで、何事か、とそちらの方を見れば――誰もいない。その代わりと言ってはなんだが、その油断した隙をついて、小動物は逃げ出した。一目散に。追ってこられないように、早々と。それだからこそ、彼は残念そうな顔で逃げるお尻を見つめるだけ。本当はもっと触りたかったのに、遊びたかったのに。どうして!? あの可愛がり方が異常だということをキリはまだ知らない。


 だとしても、アシェドはもう一度車道の方を見た。もちろん、そこには先ほどと同様に誰もいないと確認できるが――犯人は一人心当たりがある。


 あいつはまた学校サボっているのか。なんてため息をつくのをよそに、キリだって村の学校には行っていないということを思い出す。ある程度の知識や常識を教えて、それを自分の物としても――。


 自分が車道の方ばかりを見ているからなのか、気になるキリはこちらの後ろへと隠れ込む。そうだ、まだ彼の人見知りが治らない。これだけはどうしようもなかった。文字の読み書き、簡単な計算ができようが。地図の見方、世界の歴史を知ろうが。様々な知識を頭に叩き込もうが――対人というものだけはどうしようもなかった。いつかは独りで生きていかなければならないときが来るのにな、とは思う。それでも、ついつい甘やかしてしまうのがアシェドだった。


 キリの頭に手を置くと「大丈夫だよ」と落ち着かせる。


「何も怖くないさ」


「本当?」


「ああ。あれは村一番の悪ガキ……ヴィンというやつの仕業さ。おもちゃのカメラを手に入れてから、ああして村を撮っている困ったやつでな」


「カメラ……」


 一度、実物は見せたことがある。それでキリを撮ったとき、フラッシュに驚いてからはあまり撮られたくないと思っているようだ。唐突の光が苦手らしい。まあ、誰もがそうだと思うが。


 何もその村一番の悪童は突然の写真を撮りに回っているだけでもない。車道の向こう側――村の集落の方から女の子の悲鳴が聞こえてきた。あれはその悪童の姉だ。またしても、落とし穴に引っかけたな? ちなみにであるが、アシェドが落とし穴に引っかかった回数は三百七十七回目。どれもこれもあの悪ガキのせいである。まあ、まさか悪童がキリにまでちょっかいを出しに来るとは思わないが、念だけは押しておこう。


「あとな、ヴィンからのお誘いには気をつけろよ? 落とし穴に落とされるからな」


「えっ」


「そのお誘いのヴァリエーションは無限大だ。用心しておけよ」


 なんて、別に脅しをかけたわけではない。それなのに、キリはあたふたとして、家の中へと逃げ込もうとする。それを流石に、とアシェドは止めた。


「ああ、大丈夫だ。大丈夫」


 そうとは思えない、という表情をこちらに向けている。疑うのも無理はない。ちょっと言い過ぎただけだから。


「最近は落とし穴よりも、写真にはまっている方だから、まだいい方だし」


「えぇ」


 とっても嫌そうな顔。エナから聞いたことがある。一年半前に突如として現れた連続殺人事件の犯人にキリが襲われた際、軍人との事情聴取で嫌悪感丸出しの顔をしていた、と。その顔はまさしくこの顔だろうか。彼女は今、家の片付けをしているから確かめようがないのだが。


 そのことで思う。結局、未だとしてその犯人は捕まっていない。あれから事件も起こっていない。殺人犯の狙いとしては愉快犯らしい。現にキリだけではなく、この村には被害者は他に二人いる。その内の一人は殺され、一人は――まだ生きている。そして、その一人にアシェドは用がある。あの事件を闇に葬ろうとしている人物に。


「それじゃ、俺は村長さんのところに行ってくるな」


「また?」


 怪訝そうな顔をするキリ。そういうことだ。アシェドは何度もこの村――鬼哭の村の村長の家へと足を運ばせている。あの事件の真相を。あのときに何があったかを。それはこの子の身に降りかかってしまったことに決着を着けるために。情報が足りなさ過ぎる。ティビー・ウラビのお面を被り、全身黒ずくめの成人男性。それだけの情報で多くの人が被害に遭っていることを忘れてはならない。おそらくは、軍ですらもこの難解事件にお手上げで放り投げようとしているだろう。それを風化してはならない。してしまって、また事件が起きたときでは遅いのだから。


 行ってきます、というアシェドにキリは不安そうな顔で見送るのだった。


     ◆


 どうせ、今日も門前払い。どことなくわかって仕方がないが、微かな希望にすがってみたい。アシェドは車道を歩く。周りは生い茂った木々。年に一度だけ、この鬱蒼とした木々の剪定を村人たちだけですることがある。もちろん、それは彼もやっていた。村長の家から剪定道具を一式借りての一日作業。去年、今年はやった。当然、来年も、再来年も。


「はあ」


 あのじーさん、今日も人の話を聞いてくれないのかな。なんて大きなため息をついたときだった。道の逸れた斜面の木の上から光が見えた。これは――カメラのフラッシュ。アシェドは光が見えた方を見ながら「好きだな」と苦笑を浮かべる。


「ヴィンはそんなに写真を撮ることが好きか?」


 その木の上にいたのはキリと同世代の少年がいた。手には少しだけボロボロとなったおもちゃのカメラが握られている。その少年――ヴィンは「もちろん」といたずら好きな子どもがよく見せるニヤニヤ顔をこちらに向けていた。


「みんなの反応がおもしろくてね」


「反応って、眩しいからだろ」


 まだフラッシュを叩かないのであれば、誰も文句は言うまい。もちろん、キリだって挙動不審になったりしない。いや、それを知ったところで外出をしようとしなくなってしまうだろうし、そこまでは注意できそうにない。本当に実行されたらば、困るからだ。


「そう思う?」


 ヴィンの反問にアシェドは片眉を上げた。これまでになかった会話だ。いつもであるならば「そうだね」と笑っているところだろう。誰かが眩しいとわかっていながらも、楽しむという悪趣味をだ。だが、ヴィンは「おれはそう思わないね」とまたシャッターを切った。


「写真はそのときのショーコとやらを残している」


「へぇ、珍しくヴィンは哲学か? 授業をサボりまくっているのに」


「うん、まあね。そのサボりぐせで気付いたんだ」


 木の上にいることに疲れたのか、ヴィンはそこから下りてきた。近くで見れば見るほど、手にしているおもちゃのカメラは使い古されていると思った。確か、それを使い始めたのは去年なのに。まるで十年前から持っていたような佇まい。


「これでも、写真データをプリントアウトしたりしているし」


「すごいな」


「うん、それでおれはなんとなーく、写真が写し出すものが見えた気がするんだ」


「それがそのときの証拠か。何の証拠を掴んだ?」


 気になるアシェド。もしも、その証拠が連続殺人事件の関連となるならば、是非ともこの悪童から入手したいと思っていた。


「んー? おじさんには関係ないと思うよ?」


「教えろよ。こうして、落とし穴にはまってあげるほどヴィンの相手をしてあげたことがあるんだから」


「いや、それはおじさんの不手際じゃないの?」


 あくまでも、口にしないらしい。なんだか、じれったいと思うアシェド。いいじゃないか、教えても。関係ないならなおさら問題ないのでは? そう口に出そうとする前に、ヴィンが「ところで」と道路の写真を撮る。


「おじさん、また村長の家に行くの? こりないね」


「そりゃね、自分の息子が事件に巻き込まれているんだ。そして、その事件には村長さんたちも絡んでいるから」


「一年半前……」


 アシェドは大きく頷く。


「村長さんは村の人たちにその事件を黙っていた。猛獣でなく、人が殺したということを隠してね」


「ふぅん?」


 ヴィンはこちらに背を向けて、集落の方へと歩き出す。つられるようにして、アシェドも後を追う。


「おじさんはその真相を知ろうとしている」


 シャッター音が聞こえる。


「それだけじゃないさ。慟哭山にどうして入ってはいけないか、の理由も不明なままなんだ。俺はこれも知ろうと、村長さんにね」


 慟哭山には山のバケモノが潜んでいる。そのバケモノとは何か。いるということだけをカワダから聞いただけ。事実かどうかすらも知らない。あのとき、村長の後を追ってみれば、慟哭山へと入る姿を見た。自分もそこへと入ってみれば、山の中には小屋があった。石碑があった。何の変哲もなさそうな山だった。


「ヴィンが言う証拠を残すなら、写真だろうね。それがあるならば、俺は知る権利ぐらいある。もちろん、訊く権利だって」


 少しばかり、この話には興味がないのか、ヴィンは車道の写真ばかりを撮っていた。そうしていると、村の集落の方へと続く分かれ道が見える。だが、彼はその道へと曲がることなく、真っ直ぐへと歩く。アシェドはそんな彼をじっと見ると、曲がってしまった。


     ◆


 あのジジイっ! とアシェドは叫びたかった。何度も何度もしつこく村長の家へと訪れているのに。物腰低くしているのに。向こうも毎日懲りなく「あんたに教えることなんてない」の一言で終わるだなんて! 何度も説得はしている。自分の息子の仇を取りたくないのか、自分を殺そうとしたやつを捕まえたくないのか、と。それでも村長の態度は相変わらず。彼を動かす言葉は何が効果てき面なのだろうか。


 大きくため息をついていると、舗装されていない道に穴があった。その傍らにはヴィンが下向けてシャッターを押す。苛立つ音がそこら一体に響き渡ったかと思うと、その穴の中から「この野郎!」と怒声が上がる。いつもは女の子の声なのに、と思うが――そう言えば、それより前にその声は上がっていた。ということは、別の誰かなのか。いや、穴の中から聞こえてくる声は聞き覚えがある。


「何しているんだ、ヴィン」


 一応は見つけたからには叱咤をしなければ。そうだとしても、珍しい。カワダを落とし穴に落とすだなんて。


「なにって、写真撮ってる」


 もっともな答えが返ってきた。求めていた答えではあるにしても、納得がいかない答えだ。違う、アシェドが訊きたいことはそうではない。いや、こちらを叱るよりもカワダを助けてあげなければ。「大丈夫ですか」と穴に落ちて、身動きができそうにない彼へと手を伸ばした。


「腰、やられていませんか?」


「そこは平気だけど……」


 アシェドに助けられて、カワダはまだフラッシュを叩いて写真を撮り続けているヴィンの頭に拳骨を落とすが――「当たんないよ」と避けられてしまった。


「まあ、本当はサカキのおじさんを狙っていたんだけれども」


 どうも、ヴィンはサカキを落とす気だったらしい。


「何が狙いだ、何が」


 どうせ俺の無様なシャッターチャンスだろ、と泥塗れながらも悪態をつく。だが、ヴィンは自身の左指を慟哭山に向けた。


「慟哭山のバケモノの正体」


 その言葉にカワダはヴィンを睨みつけた。滅多なことを言うな、とでも言っているようだった。だが、待って欲しい。彼の狙いは慟哭山のバケモノの正体。そのためにサカキ、あるいはカワダを狙っていた。二人はそのことについて、何か知っているとでも?


「カワダのおじさんもさ、知っているでしょ? だから、おじさんに教えてあげなよ。知りたがっているみたいだよ」


「いや、教えろって……」


「あの山で殺人事件が二回も起きていることとかさ」


 その場の空気が一気に変わった気がした、が――すぐに「何の話だ」とカワダは片眉を上げた。


「殺人事件って、そんなことを俺が知るわけないだろ。ましてや、サカキさんもさ」


 こういうことをする暇があるならば、勉強をしろ。そうカワダはヴィンに学校へと戻るように言うが、それで言うこと利くとでも? ヴィンは「やだね」とあかんべえをすると、もう一度カワダの顔写真を撮って、どこかへと走っていってしまった。その場に残った二人は気まずい空気が漂うが、先にカワダが「ばかなことを言いやがって」と盛大にため息をついた。


「デベッガさんも、あんまり気にするなよ。ここ最近になって、あいつは変なことばっかりしたりしているし」


 それじゃあ、俺は畑仕事があるから、と言うカワダをアシェドは呼び止めた。その呼びかけに、後ろを向いた状態で立ち止まる。


「二回の殺人事件って、どんな内容なんですか?」


 おそらくは、と何かしらの確信を持つ。そうだ、ヴィンが言っていた証拠とやらだ。その証拠とは慟哭山のバケモノの正体に関わってくること。


「おいおい、俺はそんな話を聞いたことないぞ」


 何を言っているんだ、とでも言うようにして、カワダは胸ポケットからタバコの箱――タバコを一本取り出すと、それに火をつけた。その場に紫煙をくゆらせる。


「仮に知っていたとしても、十年ぐらい前に起きた事件なら全くの別だけどな」


「そ、それって――!」


「その話、ここじゃタヴーに近い。ちょっとうちに来てもらおうかね」


 他の人に聞かれたら厄介だ。カワダは自身の家にアシェドを招くのだった。


     ◆


 何度も来たことがあるカワダの家。中庭にあるベンチに腰掛けて、二人とも大きく息を吐いた。年のせいということもある。座ろうとするだけでも疲れるな。


 早速アシェドは約十年前に起きた事件を振った。


「あの山で何が起きたんですか? それに山のバケモノって……?」


「落ち着いてよ、デベッガさん。俺が知っている事件と山のバケモノは全くの別の話だ」


「別の話?」


「あれだよ、行き倒れってやつ。ほら、デベッガさんとこの子どもみたいに」


 十年ぐらい前、慟哭山に隣国である黒の皇国の女性が死んでいた。死因は餓死。短絡的な説明にアシェドは開いた口が塞がりそうにない。


「だから、事件って言ってもな。殺人事件じゃないな。ただの可哀想な事故って言うべきだろうなあ」


 その事件の時期とキリを重ねる。大体彼が生まれるぐらいの時期。黒の皇国は大飢饉に見舞われ、たくさんの孤児が出た。その孤児らがこの国――青の王国に住まう心優しい者たちに引き取られる、という事案もある。カワダの言う死んだ女性はその孤児たちと同じくして食べる物がなくて、こちらへと助けを求めに向かっている最中に――ということか。


 しかし、とここでアシェドは不審に思う。


「どうして、この事件がタヴーなんですか? 別に口に出してもって、不謹慎かもしれないですけど」


「俺も詳しくは知らないなぁ。多分、村長さんが知っていると思うけど」


「そうですか」


 またしても村長。こればかりは、と歯噛みをする。その様子に気付いたカワダは「あのさ」とタバコの煙を吐く。


「この村のことを気にかけてくれるのは嬉しいけどさ。深追いしたところで、デベッガさんは何ができるの?」


 思わず、アシェドは「え」という感嘆を上げる。きょとん、とした彼の顔を見てカワダは頭を掻いた。


「多分、子どものためにやっているんだろうけど。村長さんの気持ちもちょっとは考えてあげた方がいいよ。あの人、冷たい人に思うかもしれないけどね。それでも、自分の子どもが死んでいるんだ。仇を討ちたいっていう思いよりも、悲しいというだけの気持ちの方が大きいんじゃないか」


「で、ですがっ!」


「事件が解決したところで、息子は帰ってこないという結果しか待っていないんだぜ」


 カワダの言葉にアシェドは何も言えなかった。それは事実であるから。本当は、村長はあの事件のことを蒸し返したくない、と思っているかもしれない。そう考えるだけでも――いや、自分の気持ちは変わらない。それとこれは別だ。犯人逮捕のために話を訊きに行くことの何が悪い? キリだけではない、これは村の人たちの命にも関わることなのだ。そうそう簡単に諦めます、というのはいただけない。だが、それをカワダに吐露しても意味はないということはわかっている。それだからこそ「そうですか」という反応を見せるだけ見せて「帰ります」と頭を下げて彼の家を後にするのだった。

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