報告
シャイン一行は数日をかけて魔王国に戻った。
シャインはまず最初に王国で仕入れた情報の報告にあがった。
「それはまとこか?」
珍しく真剣な表情の魔王が言う。理由はシャインの報告にある。
「はい魔王様が聖職者が大好物というのはもっぱらの噂です。特に生きたまま頭蓋骨を開けて脳ミソを食べるのが――」
魔王の髪がざわめいたのでシャインは言葉を止めた。
「魔王様! 今から王国を焼き討ちしに行きましょう!」
フリージアが激昂する。
「いえ、これは王国だけではありません。行商人などに聞いたところ世界の共通認識のようですよ」
「ば、馬鹿な。我らはサキュバス族だぞ。それではまるでグールではないか。誰がそんな馬鹿げた話を信じるというのだ」
フリージアが狼狽する。
「人の噂とはそういうものです。魔王様は捕虜の精気を吸い上げて、相手国に奴隷として売り返すという噂も聞きましたが、そういうのも関係していると思いますね。おまけに通常の30倍はする高額報酬の提示。これでは何か裏があると子供でも思いますよ」
お前が悪口を言っている、とばかりにギリリとシャインを睨み付けるフリージア。
魔王もわなわな震えている。
シャインは溜め息をついた。
「悪い報告にこんな態度では、そら今まで誰も報告しないはずだ。まあプリーストの獲得は別の方法を考えた方がいいよ。魔法書を手に入れて誰かに覚えさせるとか」
シャインが呆れて言った。
「なんだその口の利き方は!」
「はいはい」
フリージアの言葉にシャインがだるそうに返事をした。
☆
シャインはそんなレベルの報告をいくつかし終える。
「――報告は以上です。では失礼します」
シャインがお辞儀をして背を向けようとしたのを魔王は慌てて止めた。
「待て待て、すぐ帰るな。何か棘があったような気もしたが有意義な報告だったのではないか? のうフリージアよ」
「そ、そう言われたらそですね――」
「よし何か褒美を取らせよう。欲しい物はあるか?」
魔王が言った。
「いえ、助けに来て頂いただけで感謝しておりますので」
「遠慮するな。いいから何か欲しい物を言ってみよ」
「あ、そうだそれならウクピーが欲しいですね――」
「ダメじゃ。他には?」
間髪入れずに断られた。シャインがあんぐりと口を開ける。
「……今は特にありません」
「そうか殊勝な奴だの。フリージアぐらいなら抱かせてやってもよいぞ?」
「え!」
シャインは思わずフリージアを見た。流れるような美しい黒髪、白い胸元、すらりとした肢体。
――いやいや俺にはカイがいるしな。
しかし男の性か心に反してフリージアの二の腕や太ももに視線がいってしまう。
「嫌です! 私は魔王様以外に抱かれたくありません! ううぅ」
フリージアが泣きながら魔王の膝にすがりついた。その勢いに魔王は目を白黒させる。
「じょ冗談じゃフリージア。それよりあいつ本気にしおったぞ、かかかっ」
魔王が半笑いでフリージアに言う。
フリージアは胸元を隠しながらシャインをきっと睨んだ。
シャインは呆れた顔で二人を見た。
「まあ、別に今の僕はサキュバスなんて興味ないからいいですけどね」
その言葉に二人がむっとした雰囲気を出した。
「そんなことを言っても無駄だぞ。我らには下心が見える。普通の女でも童貞や昨日自慰した男がわかるが、サキュバス族の嗅覚はさらにその上をいく」
「え、そうなの?」
「なんじゃ知らんのか。女はなんだってわかるぞ。後ろから尻を見ていたら振り返られたりするだろ。男だって昨日セックスした女がなんとなく分かるだろ。我らの感覚はその強化版じゃ」
「まじか」
男女関係においては百戦錬磨だろう魔王が自信満々に言う。シャインは軽く動揺を覚えた。
それを見て魔王が不敵に笑う。
「ふふふ。どうじゃフリージア?」
「はっ」
フリージアが凝視するようにシャインを見た。
美しい眼差しにシャインは緊張した。
「……この者、私を毎晩おかずにしております。しかも童貞です」
「ぬう、やはりか」
フリージアの言葉に魔王が頷いた。
いつの間にかシャインは踵を返していた。
「あ、こら。まだ話は終わっていないぞ」
聞こえないフリをしてシャインは部屋を出た。
☆
「ふざけるなよまじで」
ぶつぶつ言いながら廊下を歩いていると、前から二つの影。
ゴブキンとオークロードが歩いていた。どちらも目尻が下がり、にやけた顔をしている。
「お前ら――」
『あ、シャイン様!?』
二匹は悪戯がバレた子供のようにバツが悪そうな顔になった。
「こんなところで何してるんだ?」
『あ、いや、たいした用事ではありませんゴブよ』
そこに後ろから人がやってきた。豪奢な金髪で豊満なボディを持ったサキュバスだ。
【大喰いのレミ】
「キングさん、ロードさん私のために次の戦争も頑張ってくださいね」
そう言ってレミが二人のほっぺにキスをした。
『は、はひぃ』
顔を真っ赤にして柳のように体をくねらせる二匹。
すぐさま冷たい視線を感じシャキッと持ちあがる。
「まさか、あの体たらくな戦いをした後に、自分たちの村も放ってこんなところでずっと遊んで?」
『そ、そんなわけないじゃないですか〜』
『そうそう。社会勉強ゴブ。本当に本当ゴブ。この目を見てくださいゴブ!』
キリリと表情を作るが、血走ったゴブリンの目なので普通に怖いだけだった。
「この前なんて言ったか覚えているか?」
『はい……。帰って訓練しろゴブ』
「はあ、自主トレを期待した俺が間違っていた。もういい。ちょうど良かった、付いてきて」




