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ギフテッド2

最終回までの目処もついて、序盤の重さやダンジョン抜けてからの成長要素のなさなどここまできて分かった様々な問題点を改善した第二弾も執筆中ですので楽しみにしてください。あとカクヨムさんでヒカル(ある意味ヒロイン)バージョンも連載しています。

 シャインは状況を見て心底安堵した。


 胸騒ぎがした後、即座に<アクティブ・サークル>を発動。全てのMPを注ぎ込み一瞬だけ魚群探知機のように放射線状に飛ばした。結果、砂場で一粒の砂を探すかのごとく奇跡に等しい確率でノエルを探し出せたのだ。


 城壁があるものの直線的には近い距離にいた、全速力で走り城壁を登り40メートルある壁から飛び降りてきた。

 


「誰だ!?」


 マイク・オーガンが叫ぶ。

 シャインは無視し、振り返った。


「ノエル、こいつらが敵か?」

「う、うん」


 ノエルは咄嗟に頷いた。


 6人に向き直る。シャインから見てお利口そうな顔立ちの連中である。

 特に男たちはこんな不足の事態でも落ち着き目に冷静さが宿っていた。

 こんな目をして人を襲えるのか。


「……殺す覚悟があるなら殺される覚悟もできているんだろうなっていいセリフだよな、誰が考えたか知らないけど」


 シャインは6人に問うように投げかけた。


「知るかバーカ」

「殺す覚悟しかないね、きっしっしっし」


 シャインは<ミラージュ:装飾>を解除した。


 夕陽にドロッと溶けるように錆びた鉄の鎧が消え失せてデスナイトアーマーが姿を現した。白銀の鎧は夕陽を浴て溶岩のように禍々しい光沢を放っている。


「なら今日覚えるんだな。殺される覚悟をっ!」

「なっなっ!?」

「なにあの鎧!?」


 マイクとシオンが驚愕した。


「浮き足立つな! いつも通りだ!」


 冷静さを取り戻した陰山聡が叫ぶ。


「OK!」

「了解!」


 その一喝でメンバー全員が冷静になった。


「鬼斬、心音」


 陰山聡が指示を飛ばす。


《エナジーボルト》

《エナジーボルト》


 鬼斬と心音の魔法弾がシャインに迫る。


 パパンッ。


 エナジーボルトはシャインに当たると乾いた音を立てて弾けた。


「ん、シャボン玉かな? 次はこっちからいくぞ。必殺、人間魚雷ーッッ!」


 シャインが水平になって錐揉み回転しながら陰山聡に突っ込む。

 陰山がそれを躱し、着地に一斉攻撃を浴びた。


「ばかめ、え?」


 幻のように消えたシャインを見て陰山は目を疑った。

 

〈幻影:分身〉で意識をそらしている間にシャインはマイク・オーガンの目の前に立っていた。


 気づいたマイクとシャインが同時に動く。

 大剣とダガーの圧倒的な差、マイク・オーガンが遅れた。


 オリハルコンダガーの切っ先がマイクの右肩に入って抜ける。

 通り過ぎたダガーにマイクはきょとんした。

 

「は? 効いてないし何がしたいんだおま――あがぁっ」


 マイク・オーガンの右腕が付け根からぼとりと落ちた。


「――ははは、弱い弱すぎるっ」


 残忍な笑みを浮かべ、シャインはゆっくりとリュ・シオンに向かう。


「どれぐらい強いのかと思ったら、ただのゴミか」

「く!」


 先ほどの光景を見てリュ・シオンの顔が緊張で引きつる。


 シャインが攻撃を放った、シオンが紙一重で避ける。

 シオンがどうだという顔をした。


「上手上手、ではもう一つギアを上げよう」


《ガガガガギギンッ》


 デスナイトアビス戦で見せたマシンガンのような連打。

 数巡、斬り結んだだけでリュ・シオンのHPがごっそり削れていた。


「ば、馬鹿なちゃんとガードしたのに。そ、そんな。だ、誰か助けて」

「どうしたどうした、こっちはまだギアセカンドだぞ」


 ガードしきれず切り刻まれる、両腕が切り飛ばされた。


「ぎゃあああっ」


 海岸に絶叫がこだまする。

 なまじっか才能がある分、残りの4人は早々に覆せない圧倒的な力の差を感じとってしまった。戦意が喪失した。

 代わりに恐怖と怯えが目に宿る。


「ひぃぃ、すいませんでした」


 陰山聡が武器を捨て命乞いを始めた。


「悪いな」


 シャインは少なくとも半数は殺す覚悟を決めている。残虐な方法で、二度と逆らわないように。リーダー格は見逃すつもりはない。


 陰山聡の前に立つ。

 陰山聡は奥歯をガチガチと鳴らし震えている。


「お兄ちゃん!」


 ノエルが叫んだ。シャインは正体も明かしていないのに、ノエルが自分の正体に気づいたことに驚いた。


「止めるな。こいつらは雑魚じゃない。見逃せば将来巨大な敵となって復讐にくるだろう」


「ううん、苦しまないようにせめてひと思いに殺してあげて欲しいの」


「……よっっしゃあ!」


「ひぃぃっ」


 股間をぐっしょりと濡らした陰山聡が絶望の悲鳴をあげた。


「お兄ちゃん!」

「なに」

「嘘。もうそれぐらいで許してあげて」

「え」


 ――こんな時に冗談を言うか?


「――まったく」


 変わらないな、そういうところは。シャインは溜め息をついた。

 しかし不思議と怒りは鎮まった。


 それでも――


「ノエルを襲った首謀者は誰だ?」

「トレビアン亭の店主に依頼されましたぁ」


 女たちが口々に言う。

 あいつか! とノエルが怒っている。


「いやこの6人の中でだ」


 全員が陰山聡を見た。


「ち、違う。最終的に決めたのは皆でだろ」

「わ、私たちはあなたに言われて――」


 陰山聡と北条王冠ティアラが口論を始めた。


「陰山です、主な作戦は全てリーダーが立てていましたので」


 平凡顔の山田鬼斬オニギリが言った。


「ちがーう! 最終的に多数決で決めただろうが、人のせいにするな!」


 陰山聡が奇声に近い声で叫ぶ。

 シャインが陰山聡を睨んだ。


「お兄ちゃん……!」

「ノエル――」


 シャインはノエルを見た。

 どうかお前は変わらないで欲しい。俺は――


 シャインは疾風のごとく振り返りオリハルコンダガーを一閃した。


 スパンッと勢いよく陰山聡の首が飛ぶ。

 頭部を失って力なく胴体が倒れた。

 

「ひやぁぁああ」


 それを見た渋谷心音ココネが発狂するように頭を抱えへたり込んだ。


「これが殺される覚悟だ」


☆☆☆


 ギフテッドが完全に観念した後、シャインは海の見える丘に立ち夕陽を眺めていた。

 

 後ろにノエルが現れる。


「お兄ちゃん、だよね?」

「よく分かったな。その通り、詳しくは後で説明するけど俺の中身はヒカルなんだ」

「……ありがとうね」


 ノエルはシャインが人を殺してしまったために海を見ながら黄昏れていると思った。しかし幾多の戦いで精神的にタフになっているシャインは落ち込んではいない。

 

「ノエルもしかして待たせてしまったか?」


 シャインが海を見ながら言う。


「え?」

「いやほらノエル結構モテてたけど彼氏とか作らなかったろ、だから」


 シャインはノエルが自分に気があると考えた。たまにオカズを作って持ってきてくれたりしたのもそれならば合点がいく。


「ばか」


 地球時代そんな気持ちはなかったものの、ノエルはシャインの背後に立ち鎧をコツンと拳で叩いた。


 ばっとシャインが振り返る。


「ノエル俺のところに来ないか。食べていく分は苦労はさせない」


 シャインがぐらりとくる提案を持ちかけた。鎧からしてノエルにはシャインが大金持ちに見えている。しかし今、冒険者として充実した日々を送っているのも事実。


 ノエルはもう一度シャインの鎧をコツンと叩いた。

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