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旅路

 快晴の空、ウクピーが草原を疾走する。魔獣らしき姿もあったが、襲ってこないというより追いつけないが正しかった。

 シャインは全身で風を感じていた。

 シャインが後ろを振り返るとネオスが顔面を真っ青にしてシャインの腰にしがみついていた。


「ごめん、酔った」


 休憩を入れながら進むことにした。

 旅は順調に進み。二日目。

 シャインたちが走っていると巨大な影が横切り一瞬暗くなった。

 上を見ると巨大な竜型のモンスターが上空にいた。


【ドレイク】

竜の下位種。強靭な肉体を持ちブレスを放つ。


「ドレイクだ! ウクピー狙われてるぞ!」 


 シャインが叫ぶ、ウクピーを見ると血相を変えてパニクっていた。


『グエエエッ』


 二人を振り落としても構わないといった感じで、蛇行しながら猛スピードで走る。

 しかしドレイクはピタリと後ろについてくる。次第にバテ始めついにヨタヨタ歩きになってしまった。

 その時を待っていたかのようにドレイクが急降下を始めた。

 ガタガタと震えるウクピー。


「ネオス、少しでも弱らせることができる?」

「やってみる」


 ドレイクが数十メートルの距離に迫った。


「《グラビティボール》」


 ネオスが魔法を唱える。ドレイクの隣に小さなブラックホールのような黒い塊が発生した、ぐにゅりとその周辺空間が歪曲しすぐに戻る。

 すさまじい衝撃だったのだろう、空中にいるドレイクがぐらりと揺れた。


 シャインの見えるHPバーから見ても1割ほどのダメージがあったのが分かる。


『GYAOOO!』


 しかしドレイクは持ち直し、恐竜のような咆哮で叫ぶと急降下して襲いかかってきた。


《ダークネス・キングダム》


 ふいの暗闇で天地を失ったドレイクが地面に激突する。

 シャインは墜ちたドレイクにさっさと近づいて<星降る夜のツルギ>で乱れ斬りする。

 MPが尽きる前に離しオリハルコンダガーでさらに叩き続ける。


 ドレイクの断末魔が響く。どさりと崩れ動かなくなった。


「ふう、危なかった」


 シャインが息を吐く。

 ネオスが口をあんぐりと開けて驚いた。


「……ドレイクを瞬殺している人なんて初めて見たよ」

「今のはネオスの攻撃とあの速度で地面に落ちたダメージで体力が削れていたから助かったんだよ」

「そ、そうか」

「ドレイクってなにかドロップアイテムあるの?」

「牙が高級素材になるはず」


 シャインを<星降る夜のツルギ>を一閃し大きな牙を切り取った。


「うへ~気持ち悪い。解体は無理だ、残骸このまま放置して大丈夫かな」

「この辺りなら問題ないと思うよ」

「じゃあ、気を取り直して行こっか」


『クエッ!』


 ウクピーが敬礼するように背筋を伸ばして返事をした。

 どうぞ乗って下さいと背を向け腰を下ろす。


 二人を乗せると、快適な乗り心地で走り始めた。

 認められたようだ。


 夜、岩場の陰でウクピーのよく手入れされたフカフカの羽毛の中で、二人と一匹が体を寄せあいながら寝た。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


<魔王国――郊外>


 星空だけが照らす夜の街道を、10台の馬車が縦に一列で走る。

 先頭と最後尾以外は大きな檻つきの荷台に人間がすし詰めにされていた。


「まさか本当に魔王の息子だったなんて、くそ」


 マハラジ・サルマーが毒づく。


「サルマーさん、今からでも考え直しましょう。せっかく魔王国で成功したんですから」


 同じ馬車の向かいの座席に座る背の低い用心棒の短髪の男が言う。


「ふんっ、ワシをないがしろにした罪は重い。こんな国こっちから出ていってやるわい」

「はあ」


 用心棒の男が額を手で押さえ大きなため息をついた。


 しばらく走っていた時、急に馬がいなないて停止した。


「なにごとだ!」


 用心棒たちが警戒しながら馬車を降りる。

 最後尾の馬車からも用心棒たちがが降りてきた。合計10人。

 最後にマハラジ・サルマーも降りる。馬の操縦者を見る。


「どうした!?」

「それが、急に前方に人が立ち塞がりまして」


 前方には、銀髪で薄黒い肌をした耳の尖った男がいた。どういう種族であるか全員が理解した。

 その男が口を開く。


「こんな夜更けにどこに行く気だ」

「貴様に関係ないだろ、どこのどいつだ!」


 人数で圧倒している、サルマーは前に出て怒り心頭で叫ぶ。しかし頭は冷静に回転していた。


 敵か味方か? 味方ではなさそうだ。

 しかし今日、夜逃げすることは誰にも言っていない。バレるはずがない。そんな考えが頭をよぎる。


「死んでいく者に名乗る必要はない」

「お、おいお前たち、な!?」


 サルマーが振り返ると血塗られた短刀を持った前の男と同じ姿の――ダークエルフが二人と一人の用心棒を除いて全員が地に伏していた。


 立っている用心棒は考え直すように進言した背の低い男。サルマーはこの男が裏切り者だと直感する。


「な、なぜ裏切った。同業者にも街の奴らにも恨みを買った覚えはない。ほどほどに仲良くやっていたはずだ」

「あんたが出ていくと魔王国の利益が減るでしょ」

「なにを言っている、魔王様は街には介入しないはずだ。そういう約束――」


 ふう、と元用心棒の男は首を振りながら溜め息をついた。


「お前みたいな豚を集めるための謳い文句さ、普通に考えれば分かるだろう」

「な、な」

「せっせと税金納めていたらこれからもいい暮らしができたものを。奴隷商会は誰かに引き継がせますから、安心して死んで下さい」

「ま、待っ――」


 サルマーの背後に立ったダークエルフが短剣を走らせた。

 こうして魔王国一の奴隷商人は誰にも知られることなくこの世を去った。

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