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冴えない元ゲーマーの成り上がり異世界冒険録  作者: 雪野
地の底からの復讐者編
10/45

階層ボス

 デスナイト・アビスの部屋に入る前に、オリハルコンダガーやブラックボーンシリーズの盾、兜、鎧を入念にチェックする。残念なことに他の部位は手に入らなかった。

 ボロボロになった靴を脱ぎ捨て、裸足で地面を噛みしめる。転ぶ可能性があるよりは素足のほうが安全だ。


 腹をくくり中に踏み込む。バラバラと崩れるように出入り口が閉じてゆく。さほど動揺はない。

 闊歩していたデスナイト・アビスに目標を定める。


《マジックアロー》


 シャインの先制攻撃。 

 光の矢が当たる、気づくやいなやコマ送りしたような動きでデスナイト・アビスはシャインに接近する。

 肉薄した瞬間、大剣を振り下ろす。盾とぶつかり轟音が鳴り響く。

 デスナイト・アビスの攻撃は機械じみたピストン運動のようであり、振り上げた時と振り下ろした時の残像しか見えない。シャインが杭であったなら立ちどころに埋まっているであろう。


 次元が違う。泣きたくなるほど強い。

 しかし幸いなのか、絶望や恐怖する余裕もない。ただ右手だけがマシンガンのようにデスナイト・アビスに連打を入れる。

 シャインが潰されないのはダメージ軽減がクッションになってくれているお陰だ。それでも骨や関節は軋んで悲鳴をあげる。


 リズムの違う両者の奏でる金属音は、初めて聞いた人には工事現場の騒音と錯覚するかもしれない。

 激しい攻防の最中、唐突にデスナイト・アビスが動きを止めタクトを振るうような動作をとった。


『《キャンセレーション》』


 唯一のバフ魔法である武器強化〈エンチャント・ウェポン〉が消えた。


 ――痛いが、1の動作で1を潰されただけ。悪くない。


 この合間にも連打を叩き込む。

 殴り合いが再開されしばらくすると、またデスナイト・アビスが動きを止めた。


『《デス》』


 ――きた、これはブラックエルダーロードで一度耐えた魔法。放置する。


 死神に心臓を掴まれるような感覚。

 しかし、打ち勝つ。


 攻防が続く。シャインの末端や鎧の上からの攻撃は〈鎧通し〉や〈確定ダメージ〉が機能しているのか確実にデスナイト・アビスのHPを削っていた。しかし手を緩めると高速で回復していくので休むことは出来ない。腕を振り続ける。

 三度、デスナイト・アビスが動きを止めた。


『《ランダム・デス》』


 視界がぐにゃりと歪む、そんな暗澹とした絶望に陥るような感覚に襲われた。


《カウンタースペル/対抗呪文》


 無意識に、対抗呪文を放っていた。

 耐えられた可能性もあるが、あまりの不吉さに使わされた。


 殴り合いが再開される。

 もしHPが見えていなければ、いつ終わるとも分からない持久戦に心が折れていたかもしれない。

 

 見えている分、頑張れる。しかし体力的な限界は迫っていた。

 両者体力が半分を切った時、デスナイトが四度目のタクトを振るう。


『《サクリファイスデス》』


 尻の穴に氷柱を突っ込まれたような感覚。


《魔力分解》


 脊髄反射でカウンターを繰り出す。

 デスナイト・アビスが組み上げた魔法が途中で霧散する。


 シャインは腕が千切れんばかりにダガーを回転させた。もう腕の感覚はない。

 デスナイトはスキルの乗った攻撃を連発し押し返すがいくつもの波の越えて、形勢はシャインが大幅に有利になっていた。


 先にデスナイト・アビスの体力が2割を切る。

 周期的にそろそろまた魔法を使いそうだと感じる。もし次何か凶悪な魔法を打たれたらシャインには対抗する術は残されていない。ここが正念場。


「うおぁぁあああ!!!」


 シャインが腹の底から雄叫びをあげながら大ジャンプ攻撃に移った。

 デスナイトは待っていましたと言わんばかりに、スキルを発動し上段に構えた。相打ち上等の打ち下ろし。

 しかし、当たったかに見えた攻撃はシャインの体を通り抜け地面を割った。


 〈分身〉が消え、背後を取ったシャインの右手には、星降る夜のツルギ。


「おぉぁああああ!」


 硬直にメッタ斬り。残りMPは気にしない。全てをこのラッシュにかける。


 デスナイト・アビスがタクトを振るう。

 体が一瞬発光し魔法が発動するかと思われた瞬間、突如デスナイト・アビスが砕け散った。

 シャインは一瞬何が起きたのか分からない。


「……勝った!? 勝ったぞー!!」


 辺りに大量のドロップアイテムが撒かれたことで理解する。

 

 歓喜の雄叫び。ヒーハー! とか言いながらわけの分からないダンスを踊りだす。

  エターナルファンタジアではボス戦で死んだことは何度もある。むしろそれが普通だ。初見のボスは死に覚えて攻略するものだ。


「信じられない。本当に勝てたのか。復活したりしないよな?」


 消えていた入り口が現れた時、安堵で喜びが爆発した。


 ステータスを確認する前に目に飛びこんできたものがあった。白銀に輝く神々しい鎧。他にも装備品が複数落ちている。


 拾って確認する。


【デスナイトアーマー】レア度:SSR+。

デスナイトが極稀に落とす鎧。アーマー、ヘルム、ガントレット、ブーツを同時に装備すれば身体能力が向上する。非損傷。


 ――おお! てか他にも落ちてるんですけど。


【デスナイトヘルム】……【デスナイトガントレット】……【デスナイトブーツ】


 ――あれ、全部あるよ!?

 説明ではめったに落とさないような感じなんだけど。


「ひ~嬉しい!」


 シャインは喜びで飛び上がる。

 呪われているか一瞬躊躇ったが、〈オーバースキャン〉の説明から恐らく大丈夫だと判断する。


 早速ぶかぶかのブーツを履くと伸縮しながらシャインに合わせるように収まった。長年使い続けてきたようなフィット感。同じように鎧、兜、ガントレットを装備する。


 スタイリッシュなシルエットになった。


 ――身体が羽のように軽い。

 

 脱いだ方が重く感じるほどだ。


 次にステータスを確認する。

 今までの感覚からシャインは大量の経験値を獲得したのを感じていた。


【レベル:33】

HP:98/373

MP:50/358


力:29(new!+1)

体力:12

敏捷:33(new!+1)

魔力:30(new!+1)

精神:30(瞑想分+4)

運:31


『スキルを4つ獲得できます』


〈ピックアップしたニンジャ固有スキル〉


【サイレントムーヴ】R。無音で動ける。

【装飾】R+。幻影シリーズ。肌や外装を装飾できる幻術。幻影シリーズは同時発動できない。

【偽装】R。幻影シリーズ。ステータスに偽りの情報を貼り付ける。幻影シリーズは同時発動できない。


〈ピックアップしたアサシンナイトウォーカー固有スキル〉


【ダークネス・キングダム】SSR。魔法〈ダークネス〉を覚えている場合に獲得可能。最大半径50メートルを暗視不可の闇で包む。このスキルを獲得した場合、魔法〈ダークネス〉は削除される。

【MP自然回復量(中)アップ】R。このスキルはステータス欄には表示されない。

【冥王の一撃】SR。技スキル。攻撃ヒット時、50%で強制死。3回成功でこのスキルは消滅する。

【ソウルブレイク】SR+。技スキル。この攻撃で死んだ対象は復活できない。10回使用するとこのスキルは消滅する。



 ――ここにきて4レベルも上がった。純粋にありがたい。


 10レベル刻みでクラスチェンジがあったけど今回はないようだ。

 一抹の不安を抱えつつ、スキルを選択する前に部屋を出て、階段を登り、上の階層を確認する。


 ――いるいる。


【スケルトンウォーリア】

アンデッドモンスター、スケルトンに比べ高い攻撃力をもつ。


【スケルトンレンジャー】

アンデッドモンスター、足が速くボウガンや弓を使う。


 スケルトン系の魔物だ。思った通り弱そう。

 剣豪を彷彿とさせるウォーリア、初めて見たら尻込みしてしまいそうな風貌をしているが、下の階の魔物を見た後では可愛く感じる。


 シャインはこれを確認しておきたかった。

 これからは地上に出た後のことを考えたスキル選択をしておくべきだと考える。


 気になっていたスキルを選ぶことにする。

 まずは今のクラスの花形のように鎮座する【ダークネス・キングダム】だ。

 クラスを選ぶ時の説明もこれを指していたと思う。

 そして将来復活が厄介な敵と出会った時のために【ソウルブレイク】

 看破スキル対策に【偽装】を獲得することに決めた。

 デスナイト装備をカモフラージュするために【装飾】も欲しいな。


 シャインはアンデッド戦と関係ないこの4つのスキルを獲得した。

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