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突発小説『好き!』

作者: 甘いのが書きたかった

どこまでがセーフなのか分かりませんが、キスくらいなら問題は無いと思います……。R付けた方が良いよ、などありましたら優しい言葉でお声かけください。

好き。


出会った時からずっと、思ってたのに。それが今は妙に溢れて止まらない。


「大好き!」


ぎゅーって抱き着いてすりすりと身を寄せる。彼は小さく息を吐き出してよしよししてくれた。私は嬉しくなって彼を見つめてまた好意の言葉を紡ぐ。


「好きだよ。今まで以上に、好き」


彼は照れたような表情を見せたあと、私にぎゅーと返してくれた。





彼女からの好意の言葉が止められない。私に対して好き、好き、と言ってくれる。とても嬉しいが、背中がむず痒い。


「好きだよ」


彼女の口からそうやって言葉が出る度に、思わず笑顔になってしまう。ニコニコ、ニヤニヤが止められない。


「大好き!」


少し大きな声でそう言ってすりすりと体に擦り寄る彼女を抱きしめて、言葉を返した。


「好きだ」


耳元で囁くと、彼女はピタリ、と体を止めて、恥ずかしそうに私の胸に顔を埋める。うーうー、唸っているかと思いきや、次の瞬間こちらに顔を向けて微笑んだ。


「ありがと、愛してる」


潤んだ瞳でそう言った後、ちゅ、と頬に口付けを貰う。私は彼女の体を抱きしめ、顔をこちらに向けて、唇を重ねた。ちゅ、と軽いリップ音を鳴らして離す。至近距離で互いの瞳を絡ませて、微笑んだあとは瞼を落としてまた唇を重ねた。そして、少し離して舌で彼女の口をこじ開ける。彼女はぎゅっ、と体に力を入れて、舌を絡ませてくれた。唾液が交じる音を聞きながら、なんでこうなったのかを思い浮かべた。







鉱山都市、という所に、彼と、私とパーティーメンバーの四人で来ていた。鉱脈があって、鍛治の街、とも言われる程有名な都市。その中にある鉱山は、迷宮と呼ばれる所で、まあ、私達はそれを目当てにこの街へ来ていた。迷宮の中にはお宝がいっぱいあるらしいから。


「すっごいねぇ……」

「浅い階層なら敵も居ないからね」

「まるで夜空見たいです〜」

「ここの迷宮は他んとことちげぇらしいからな。楽しみだ」

「お宝ザクザクだといいねぇ。キラキラしたものが楽しみだからねぇ」


皆でわいわいと楽しく進んでいたら、先頭を歩いていた私はキラキラしたものを見つけた。思わずキラキラしていた所に駆ける。


「ナリア!」


後ろから、彼の焦ったような呼ぶ声が聞こえる。私は呼び止められたので、立ち止まり、後ろを振り向こうとした。ぱぁ、と足元が明るくなり、目を思わず閉じる。


光が収まり、目を開くと、不安げにこちらを見る彼がいて、たまらなく、愛おしくなった。なるほどね、と思いながら、この気持ちが止められない。


好き好き。ぎゅーってして、すりすりして、よしよしして欲しい。好き!


そう思ったら、体が勝手に動いていて。気付いたら彼にアタックして、ぎゅーって抱きしめていた。


「好き!」

「分かった! 分かったよ」

「ぎゅーってして!」

「私は君が落ち着いて欲しい!」

「やだ! ぎゅーってして欲しいの!」

「無理! 落ち着いて!」

「なんで!?」

「周りの目! ここ迷宮だから!」


むぎゅ、としようとしたところを避けながら彼は言う。人の目なんて気にしなければいいのに、とは思うけれど彼が嫌がるならば仕方ない。


「あんこくるーむ! 周りの声は聞こえない、周りの景色は見えなくなぁ〜れ!」

「ひっどい名前にサブタイトルだね!? 逆に恥しいよ!」

「帰宅します! わたしおうちかえりたい!」

「いきなり何言ってんの!?」

「てや!」

「てや!?」


私の掛け声と共に、空間が歪む。ぐにゃぐにゃどぅーん! 迷宮の外にあった宿の一室へと強制転移。これなら周りの目なんて気にならないでしょう。私はニッコリ笑って彼に勢いよく抱き着いて、ベッドへと押し倒した。






彼女のふざけた掛け声で、視界が歪み、元に戻ったら迷宮に入る前に取っておいた宿の部屋へと移動していて。あんなふざけた掛け声でなんでこんな高等魔術を使えるのか全く分からない。ついでに、すりすりと私の頬と彼女の頬を擦り付ける意味も分からない。もちもち、ふにふに、すりすり。


あぁ、もう。


心の中で諦めながら彼女を優しく抱きしめて、よしよしと頭を撫でると気持ち良さそうに目を細めて、笑う。


「好き」


口から紡がれる言葉に私は彼女の唇を塞ぐことで返した。彼女は一瞬不満げにしたあと、抱き着いて今度は向こうからキスをしてくれる。軽いリップ音を響かせるの好きな彼女はどこか満足気な表情を見せたあと、ちゅ、と合わせたあと、舌を絡ませてくれた。あんまり得意じゃないのに、嬉しくなる。腰に手を回して身体を寄せて、近くにいるんだ、という安心を感じた。


「……すき」


口を離して、潤んだ瞳で彼女は伝えてくれた。私は抱き締める腕に力を入れて彼女の頭を肩に乗っけて、よしよし撫でる。大丈夫だよ、と心を込めて。不安にならないで。私は君の隣に居るから。大丈夫だよ。


「……すきだよ。すき。声に、出して伝えたいの」

「そう……」


涙声で彼女は私に伝える。私が頷くと彼女は抱き締める腕に力をこめた。小さく息を吐き出して、私は言葉を紡いだ。


「大丈夫。大丈夫だよ。私はここにいる。どこにもいかないから、安心して。不安にならないで。大丈夫だから」


赤子をあやすように、優しく語りかける。彼女は震えて小さな声で耳元で囁いた。


「……ごめんね」

「ナリア」


違うでしょ、という言葉を言わずに名前を呼ぶ。


「……ありがとう」


彼女は私の肩に目を伏せながら言った。私は嬉しくなりながら返す。


「どういたしまして」





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― 新着の感想 ―
[良い点] 一人一人の所作を事細かに描写していくことでその描写が時間も交えて濃いものになっていると感じました。 二人の掛け合いとセリフの使い方。“好き”という思いが重複して軽くなくなっていく、そんな流…
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