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(な……に……!?)
グレンの思考が完全に止まった。魔王幹部連合軍、通称『十神魔将』は十人のプロのゲーマー達である。運営から雇われ、運営にお金を貰ってプレイしている。その実力は、たった一人で、上級者たちのいる村を壊滅させる事も可能だったりする。
一度でもプロのゲーマーと相見えた事のある腕に自信のあるゲーマーだと、プロのゲーマーが自分とどれだけの力量差を持っているのか、ピンとくるだろう。初心者に分かりやすく一言で言えば、『次元が違う。同じゲームをやっているとは到底思えない』だろうか。もっともっと分かりやすく言えば、格闘ゲームで上級者相手に百連勝、二百連勝を平気でやってのけたりする連中の事を指す。
ちなみに十神魔将のパラメーターは優遇されて、他の者よりちょっとだけ強かったり。事実上、このゲームが成り立っているのは十神魔将の活躍が非常に大きい。彼らが討ち取られたら運営はさすがにサービスを中止せざるを得ない。魔王だけでやっていけるほど、ギルド側もナメられてはいない。中止するとどうなるのか、それはプロのゲーマーが食べていけなくなる。つまりは、十神魔将としては毎回本気で戦わなければならないのだ。
「くそっ! 一人でも厄介なのに、十人まとめてだと……? ふざけんな!」
(……? 十人まとめて?)
慌てふためく街。動きを止めている者は、現在グレンを除いて他にいない。近くにいる同業者パーティの言葉を耳にし、グレンはふと疑問に思った。
「今連絡が入った! 他の上級者の街は全て陥落! あいつらも深手を負ってはいるが、まだまだ余裕があるみたいだ!」
「だ、ダメだ……! お、俺は落ちるぜ!」
「おい馬鹿! ここで逃げたら終わりなんだよ! 中級者じゃ絶対、天地がひっくり返ってもあいつらには勝てない! 特に、なっちゅには……」
なっちゅ。十神魔将のスケ番とも呼ばれている女性プレイヤーだ。戦場で会えば『な、なっちゅだ……! なっちゅが出たーッ!』と恐れ慄かれ、全てのプレイヤーは己の不運を呪うのだという。ここは上級者の街、最後の砦。もしここも陥落させられると中級者ゾーンへと突入されてしまう。さらにそこも突破されたら……初心者のエリアだ。