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 しかし、魔王の行動は届いていない。



「コイツに死なれちゃ、金一封貰えないからな。邪魔させてもらうぜ、魔王さんよ」


「……グレン?」


「――! お、おみゃー、もしかして……!」



 突然割り込んだグレンに対し、黒猫のおまるが怪訝顔をしている。どうやらこの猫、色々と知っているらしい。ペロリとグレンの肌を舐めて、確信したかのように二、三歩後ずさった。



「どうしてこんな奴を護る。エディもそうだった。お前らは、揃いも揃ってバカなのか?」


「一つ、金のため。二つ、世界一強ぇ奴と喧嘩出来るため。三つ、王女の姿を見てみたい」


「……どうやら、貴様の方は本物のバカのようだな。動機がエディとは真逆だ。白けた。行くぞ、おまる。メルリアーヌよ、命だけは助けてやる。もう二度と俺の前に姿を現すな」


「あれぇ? 逃げちゃうんスか、先輩!」



 水のように澄みきった大鎌を仕舞い、魔王は背を向け歩いて行く。後ろからちょこちょこ足を動かしながら、おまるがチラリと振り返った。



「ここからじゃないスか! ド派手に喧嘩しましょーよ! 大丈夫ですってば。先輩がボクにビビってチビっても誰にも言いませんから」


「だ、ダメにゃ、魔王様。抑えて。あんな挑発に乗っちゃダメ」


「いやぁ、よく喋る雑巾スねぇ! こんな雑巾と一緒に暮らしてて臭くならないんスか? あっ、もう臭かった。失礼」


 フーッ、とムカ着火入ったようだ。今にも『にゃんにゃん!』と飛びかかり引っ掻いてしまいそうな勢いで呼吸が荒くなっていく。


「そ、そうカリカリするな、おまる。お前の毛並みは美しいぞ」


「明日、またここに来るにゃ! 魔王様に逆らった奴はどうなるか、全世界に向けて発信してやるにゃ!」




「そんなワケなんです……。ごめんなさい。勝手に喧嘩売っちゃいました」



 翌朝。鈍子以外のみんなが集まった所で素直にグレンは白状する。正座で、滝汗を流しながら。



「『売っちゃった』じゃないでしょ! どうすんのよこれ! だいたい、なんでメルリアーヌの後ろ追ってたの?」


「マリエッタの分まで謝りに。さすがに言いすぎたと思ってな。てか、ど、どどど、どうしよう。俺、勝てる気さらさら無いんだけど」



 喧嘩を売るだけ売ってバックレる気満々らしい。



 


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