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 悲しみと怒りの二つが混在していたように見えたが、どうやら恐怖も含まれていたらしい。


 安堵するのもつかの間、ふと誰かの気配がする。そもそも今の彼の言動は死亡フラグだ。猫だと安心したところで、別のなにかが彼の命をむしり取っていこうとする。


 振り返った先には、仮面を被った者が立っていた。黒猫は鈴を鳴らしながらその者の肩に飛び乗っている。



「……あれから、もう半年も経つのだな」


「魔王……!」


「あの時の王女か。どうだ、その後の人生は」


「悪くはない。こうして、新たな感情に出会えたのだからな!」



 彼は今まで類を見ない程の殺気を開放していた。


 両剣に聖水を振って少しだけ輝きを取り戻し、中級光魔術の呪文を早口のスキルにて完成させ、赤い瞳で本能のまま突貫。周囲の木々が反り返り、風で川の水が津波のように大きく跳ね上がる。中級魔術で昼よりもなお明るい光が剣へと吸い込まれていた。だがしかし、



「……!」


「……あの猛威を振るった聖剣ゼクルギアが、まさかここまで弱体化するとは。劣化というものは恐ろしいものだ」



 どうやら無駄だったようだ。


 鋭く突いたソードを、魔王はなにもせず受け止める。わずかに隙間を開け、剣は届いていなかった。


 ついに耐久値を超え、錆だらけの剣はバキンと折れてしまった。



「それとも、ゼクルギアを扱いきれない貴様が弱者なだけか。レベルがカンストしてもただの王女らしいな。貴様に戦いは向いていない。お帰り願おう」



 言うなり魔王は膝を鳩尾に入れた。間髪入れず足の裏でメルリアーヌの身体を高く持ち上げ投げ飛ばしている。



「ふ、ふざけるな! 貴様は私が倒す」


「そうやって、次は一体誰を巻き添えにするというのだ? 貴様ら国王軍のワガママのせいでエディは死んだのだぞ」


「……えっ」



 呼吸が出来なくとも、その言葉だけは聞き逃さなかったらしい。



「ダメにゃ、魔王様。この王女様、全然知らないみたいにゃ」


「分かっている。なぜ、あの時一緒に葬ってやらなかったのか……今では後悔している」



 無感情にて歩いてくる魔王。メルリアーヌには、その姿が不気味に映っていた。覚悟も決まらないまま無念そうに目を閉じる。なにもない空間から眩い光と共に透き通った大鎌を取り出し振り下ろした。


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