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「脈拍、呼吸、両方正常ですねー。この状況で全然ヨユーって感じですぅ。この人は、全然ウソなんて言ってませ~ん。なんだかムカつきますねぇー」



 間延びした声が突然グレンたちの間から響いてきた。いつの間に現れたのか、まったく気付かない間に変なおじさん(名前不詳)の首に笑顔で小刀を当てている。斬れてはいない。なにを考えているのかまったく分からない、光沢のない虚ろな瞳で半透明な身体を揺らめかせていた。


(い、一体、いつの間に……! 速すぎる!)



「……ミリアがそう言うのなら、おそらくそやつの言う事は真実なのじゃろう」


「残念ですぅ。普通の人なら、国王様の前に来ただけで脈拍数上がるものなんですけどね~。国王様、国王様ぁ、刺していいですか? いいですよね? あっ、今脈拍も呼吸も上がりましたぁ! やったぁー! 刺しますねー」


「やめよ、ミリア。それは、そちが脅しているからじゃろう」



 なんだか、とてつもなく病んでそうな奴が来た。てへぺろ、とでも言いたそうにウインクして、某洋菓子屋の前に置いてありそうな人形のように舌を出してみせている。



「……では、一体どこへ行ったのじゃ、エディは」



 一人でぶつぶつ考え込んでいる国王に向かって、サイドテールを揺らしながら、



「そしたらこの人たちに、王女様も探しつつエディ様も探しつつ、ついでに魔王討伐させればいいんですよぉ~」


「ちょ、ちょっと待てコラ、鈍子(どんこ)ちゃん! どっからどう考えたって魔王討伐が一番難しいだろうが! 『ちょっとコンビニ寄ってタバコ買ってきてー』みたいに言うなよ! 未成年がタバコ買うのにどれだけ苦労すると思ってんだバカ!」



 サイドテールを掴み、ぷらんぷらんと持ち上げて、我慢できなくなったグレンがもっさりしている少女へ青筋を浮かべた。



「たしかに、現状はそれしかなかろう。なに、もちろんタダでやってもらおうとは思っておらぬ。団長、ここに」


「はっ。……前金の十九万レイズだ。受け取るがいい」


(殺されないだけマシ! ほら、受け取って)


(このレベルで殺されるよりはいいです。受け取って下さい。もちろん魔王様の討伐はしませんけどね)


 同時に二人から個人チャットが飛んできた。二人とも考えている事は同じらしい。深い溜め息と共にずっしりと重い金を受け取るグレン。


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