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グレンはエディの泡で『産まれてすみません。死にます』と床に一言書いてダイイングメッセージとしたようだ。
うん、と女性陣も頷き、エディの手にネックレスを握らせようとした途端、扉が開いて団長の濃い顔が浮かび上がる。
「まだかな? そろそろ我々も凍え死にそうなんだが。……なにやってんの」
「え、い、いや。名探偵ごっこ……」
逃げられなかった。現場を目撃されてしまった。
「大丈夫なのか、君の仲間は。誰にやられたのだ。さっきまでストⅡの負け顔として出てきそうだったのに」
まさか、ほとんど仲間たちにやられたとはこの団長も思うまい。今にもコンテニュー画面で『ナーイン』とカウントが始まりそうなエディに、見るに見かねた団長が百円玉を使ってくれている。
回復薬で復活したエディは、何事もなかったかのように立ち上がった。傷もすっかり癒えて打撲跡もない。
「よし、国王の元へ急ごうか」
「「「……」」」
しっかり話だけは聞いていたらしい。
医療とはなにか、この世界の住人に聞いてみたいところだ。というか十神魔将もこの薬を使って回復したのだろう。湿布や絆創膏が必要かと言われたら……必要ないはずだ。こんなに便利なアイテムがあるのだから。
「どうやら、揃ったようだな。行こうか」
そしてグレンら四人は連行されるのだった。
「だがしかし、よかった。クルスの聖水は、一回使ったら二度と使えないアイテムだからな。まだ使っていなかったようだ」
ぱからっ、ぱからっと馬の蹄の音を叩きならしながら、団長は言う。銀色の鎧を身に纏い、得意げに。
「一杯三百万レイズもするのだぞ、ははは」
「そうスか」
なるほど。このクルスの聖水なる物は、一度しか使えないらしい。しかも、ものすごーく高い。一般庶民には買えない金額だ。なので湿布などがあるのだろう。
エディに三百万レイズの価値があるのかどうか気になりながら、都で馬を乗っているものぐさ団長に生返事する。
これから一体、どうなってしまうのだろう。勇者じゃない。勇者なんかじゃない。しかも、このうち一人は元十神魔将の長だし。




