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「ところで、当たり前の事聞いていい?」
服を着替え終えた二人。そのうちのマリエッタが、扉を開こうとしているグレンの手を遮るように取って顔を見上げる。
「あ? なんだよ? どうした」
「どうして、さっきの団長とかいう人、二十万レイズなんていう大金持ってきたのかな」
言われてみれば、たしかにそうだ。おかしい。というよりも怪しい。そもそも伝説の勇者が一体なぜ国王に呼ばれなければいけないのだろうか。
「……おい変なおじさん。コラ、お前なにか知ってんじゃねぇのか?」
いまだに痙攣しながら白目をむき、口から泡を出しているエディ。足でゴロンと回転させ、仰向けにする。
普通だったら今すぐ病院で安静にさせた方がいいのだろう。絆創膏や湿布、包帯などはあるが病院という概念がないこの世界。唯一怪我を治療出来るのが、魔術師の仕事だ。しかしなっちゅはまだ覚えていない。というかまだ一回も敵と戦っていない。レベルなんて上がりそうにない。
一応アイテムでも回復は出来る。しかし、唯一持っていそうなマリエッタは使う気がないらしい。エディの先ほどの行動に激怒したのだろう。マリエッタだけが見て、触って、履く事を許される純粋なる純白なクマさんショーツ。パンティと言ってもいいが、なんだかいやらしいのでショーツだ。敬語で『おパンティ』でも可。
「まさかとは思いますが……国王は伝説の勇者になにか依頼でもするんじゃないですか?」
グレンとマリエッタの呼吸が止まる。その線が一番高い。というか一般的にはそうとしか考えられないだろう。
「え、俺、伝説の勇者でもなんでもねぇよ?」
「まさかグレン、ものすごーく勘違いされてる……?」
そもそも伝説の勇者とは一体なんなのか。エディとはまた違うのか。身に覚えのある物といったら、もう握りしめまくり手汗だらけのネックレスしかない。
騎士団長の座を辞退したエディなら、現在眼前でお花畑に行っている。なおも痙攣が止まらない。ていうか本当に死にそうな勢いだ。
もし国王のお金を勝手に使った上、その人物がエディのネックレスを勝手に使っていると知られたら、普通は打ち首獄門だろう。
「ど、どど、どうしよう。これ、どうしよう。俺、もう一万レイズも使っちゃったんだけど。そ、そそ、そうだ。こういう時はあれだ、あの、えーと、これでよし」




