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「ちょっともー、マジ信じらんないんですけどー! 誰よ、『酒場に出る』とかテキトーな事言った奴は!」


「へくちっ! 名前の最初にグが付いて、最後にンが入る人です。許しません。レベルがカンストしたら、真っ先に炎殺します」



 互いに自分の奥歯をガチガチ鳴らしながら、唇を紫色にして睨まれるグレン。


 そんな時、宿屋の扉は開かれた。エディよりももう少し年上そうな人物が、グレンの手に持っていた国王軍の紋章へと目を光らせる。



「……ようやく見つけたぞ、伝説の勇者よ。国王様がお呼びだ。早速で申し訳ないが、私と一緒についてきてくれまいか」



 騎士風な男だ。金色の髭を蓄えマントを翻し、色白の男が一言だけ言って去っていく。一瞬だけ『あ?』と顔をしかめるグレンだったが、国王軍の紋章を持っているのだ。この間、酒場で話した事が風に乗ってこの騎士の耳に入ったのだろう。



「嫌です」


「え、国王だぞ? 国王様がお呼びなんだぞ?」



 素っ頓狂な声を上げて振り返る騎士に、



「メンドーなんで、行きません。コイツらの世話もやんなきゃいけないし」



 暖炉前。命が風前の灯になっている二人へ指先を見せ、グレンは断った。


 彼女らは乾いた服が欲しいらしい。


 外には雪が降っている。そんな中、犬を捨てるように二人を置いてきたグレン。さすがにやりすぎたのだと感じたのだろうか。



「団長、いかがでしたか。伝説の勇者殿は……」



 突然宿屋の扉を開けて入ってくる、部下らしき者。



「国王様から前金二十万レイズを預かったのだが……どうやら、いらないらしい」


「よし行こうか。城まで案内してくれ」



 そんな彼は即座に手のひらを返した。



「グレン! 最低ですねあなた! 私たちをこのままにして行くのですか!?」



 あのなっちゅが、相当頭にきているようだ。目隠しも乾かしているようで、本当にバスタオル一枚で駆け寄ってくる。普段はふんわりと柔らかな匂いがするが、男の汗の水溜まりような汚水に飛び込まされたのが原因か、今はそれがない。あの浴場にもし他の男がいたのならば、今頃どうなっていたのだろう。



「あっ、い、いや、今でなくとも。一秒を争ってはいるが、準備を整えてからで結構。わ、わわ、私は外で待っているでござる」



 あまりの剣幕に気圧されたのか。団長と呼ばれた者が、なぜかござる口調でおずおずと後ずさりしていく。


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