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 どうやらなんとなく気に入らないらしい。嫌らしい目つきでなっちゅを見つめるグレンに対し、肘を思いっきりつねっている。痛覚の鈍い場所だ。



「でも、どうしてそんなに慌てる必要があるの? ゆっくり持ってきてよかったのに」


「見つかったらマズい事とかあるんじゃないのか? ほら、よくSFにあるだろ?」


「いえ。特に見つかるとマズい事はありません。四次元時空を超越して舞い降りた世界なら因果律が関係し、見つかった場合滅茶苦茶な事になってしまいます。タイムパラドックスが発生してね。マリエッタの仮説を借りるならば五次元空間を飛んできたのです。時間の軸はズレていません。安心して下さい。なにも難しい事はありませんよ」



 ……ぜんっぜん、分からん。



「ちなみに、個人的には、私はここの私とは出会いたくありません」


「まぁ要するに、四次元時空を通らない限り、こっちの私たちにとってはまったく問題ないから安心してね、って話。もしかしたらドッペルゲンガーも、別の三次元から飛んできたもう一人の自分かもね」


 まったく関係ない話が飛び込んできた。そんなオカルト的な事を言われても、グレンはそういうのは信じないタイプだったりする。だが事実、こうやって不思議な現象に見舞われているわけで、その可能性も十分にあるわけだ。


 とりあえず、もうわけの分からないグレンは、スルーする事にした様子。



「ねっ、ねっ、グレン、私、こっちのグレンにも会ってみたいな!」


「はぁ? お前、本当に状況分かってんのか? 現実世界には戻らないつもりなのか?」


「うん! 私は、私自身とも友達になりたい! だから、私はこっちの世界にいる!」



 なんか、とんでもない話になってきた。どうやらマリエッタはこっちの世界が気に入ったらしい。いくらなんでも楽観的すぎる。



 乗り気がしないグレンの手をぐいぐい引っ張り、木々に囲まれた高校へと辿り着いた。もちろん、他の生徒から姿を覗かれるのは気分がいいものではない。


(そうだ、俺はただ単にコスプレをしているだけなんだ。そうだ、コスプレをしているんだ)


 考えれば考えるほど恥ずかしくなってくる。だが、それがいい。コスプレは個人の自由であって、他人に迷惑をかけていない。なぜかなっちゅは他人のふりを装って遠くから歩いてきているが。一つ目目隠ししている時点で同類だという事に気付かないのだろう。目元隠して身隠さず、だ。



 マリエッタはケタケタ笑いながら、実に楽しそうにぱたぱたと手を振っている。彼女にとっては見知った生徒ばっかり。ただ、若干距離を置かれているように避けられている。



「おいお前ら! どこの生徒だ! なんだ、その変な恰好は」



 鬼のように怖い先生がグレンたちの前に現れた。



「あっ、なっちゃん、元気?」



 黒崎奈津、通称なっちゃん。マリエッタの教師仲間だ。ひょいと、じたばたするマリエッタの首根っこを軽々と持っている。

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