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「そうか。ありがとう。じゃあ、またな」


「はい、また明日です」



 そそくさ、と表現した方が良いのだろうか。その言葉がピッタリだ。逃げるように、グレンはマリエッタの手を引いてその場を立ち去る。とにもかくにも、ここでも中二ななっちゅの存在が確認された。生きていて一安心。



「どういう事? せっかく会えたのに!」



 桃瀬奈津美の指示した方角にしばらく引きずりまわして、人気のない場所に着くなり、マリエッタは声を荒げた。まだ痛いのだろう、手のひらでさすっている。



「まだ気付かないのか? ここは、俺たちの住んでいた桧原村じゃない」



 バス停に設置されている自動販売機に寄りかかり、グレンは言う。



「はぁ? 意味分かんないんですけどー! じゃあなに? 私たちは、揃いも揃って別の世界に飛ばされたとでもいうの?」


「その方が自然だろ。ところでお前、百三十円持ってるか?」


「なに? 年下にカツアゲ? あー、はいはい、私が出すんだから、三分の二は私がもらうからね? んーと、百三十レイズなら……えっ」



 財布を取り出したマリエッタが、ようやく気が付いたらしい。こちらの世界では、グレンたちが『ゲームの世界から来た住人』である事に。



「やっぱりな。話を整理するぞ」



 グレンたちは元の世界に帰りたいだけだった。なぜかゲームの世界に閉じ込められ、そして出てきた先は似ているようで違う世界。


 ではそもそも、なぜゲームの世界に閉じ込められてしまったのか。なにかの因果律なのか。それすらも分からない。十神魔将と聖騎士団を一人で倒してしまうような男、魔王を討てばもしかしたらサービスが終了して現実世界に帰れるかもしれない。グレンたちはそう願ってエディも含め話し合っていたのだ。


 そのエディという男。その男はアルファテスト時代に唯一魔王と互角に戦った男だ。変態だが。しかしなっちゅの話によると、その男は色白の金髪であって、地黒の変態……間違った。銀髪ではなかったという。記憶を失っているくらいで、変態な所以外はなにもおかしな点はない。



「ど、どういう事なの、グレン」



 怯えたような瞳で彼の顔を見上げる。酒でもプレゼントして楽観的にさせようか。



「俺がゲームの世界に閉じ込められて、ログアウト出来なかった時になっちゅから聞いた話をするぞ」



 そして、彼はあの時教えてもらった漫画の話を彼女にする。二次元的存在の主人公が三次元的存在の著者に消された場合、なんのコネもアイテムもなく、別の漫画に存在出来るのかというたとえ話だ。


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