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 昼飯時。酒場にて死んだ魚のような目をして、マリエッタは料理をカメラで写していた。



「ブログにでも載せるのか?」


「ちょっと話しかけないでもらえますー? ホモはホモらしく、おホモダチと仲良くしてればいいじゃないの……」


「だから、誤解だって言ってんだろうが。お前もなにか言ってやれよ」


「んぁ?」



 一人でモリモリ食べているエディ。資金も尽きかけようとしているのに、ここまで食べられては先が見えない。



「レイズ、欲しいですね」



 レイズというのは、この世界のお金の単位だ。一レイズ一円と思ってくれればいい。現在彼らのお金は四人で四千レイズである。ぶっちゃけこの大食い野郎がほとんど平らげ、グレンたちは細々と野菜を食べていた。


 他のプレイヤーにも様々な物を売った。売ったのだが、それでも金銭面では厳しい。マリエッタはグレンが装備していた剣を売ったが、その金が尽きかけている。ゲームの世界に閉じ込められているので、リアルマネーを使えずにいた。



「……」



 さすがに気まずくなったのか、エディは喋るのをやめた様子。



「まぁ、レイズに困ったらこれで……」


「んっ? まさか売る気ではないだろうな」



 エディのネックレスに触れるなっちゅ。


 その時、現象は起きた。



「……えっ?」



 突如雷光がほとばしったと思ったら、空間に歪みが生じた。グレンの斜め向かいに座っているエディの顔が、ぐにゃりと湾曲する。



「「「……!?」」」


「……なに、これ……」



 周囲のみんなが絶句する中、好奇心からか、なっちゅがその歪みに触れた。



「なっ、なんなのですか!?」



 彼女は悲鳴を上げる間もなく、吸い込まれるように姿を消した。誰も予想出来なかった。それ故ちょっと遅くなったのか、マリエッタの手はなっちゅを掴む事は出来なかった。



「「「……」」」



 わけが分からず、三人は絶句している。



「た、食べられた!? どうなったの、グレン!」


「く、苦しい、首絞めんな! 俺に聞くなよ! 分かるわけねぇだろ!」


「ど、どういう事なのだ? 私には、なにがなんだか」



 エディがつまみ上げたネックレスには、特におかしな点はない。



「触れただけで空間が歪んでしまうほどの力を持っているようには思えないが……あっ」


「ちょ、ちょっと、グレン! 正気なの?」



 見るとグレンは、ネックレスに手を伸ばしていた。ぶちっと引きちぎった瞬間、当たり前のように空間が曲がってしまう。



「行くぞ」



 マリエッタの手をしっかりと握ってグレンは一言言う。まるで人が変わったように。



「えっ? えっ? どうして? なんでさも当然のように空間が曲がるの?」


「直感だ。イケると思った」



 強引に腕を引っ張っている。



「この先になにがあるのか分かんないんだよ? 離して! 死ぬのは嫌ー!」


(なぜだ。不思議だ。前にも、こういう事があったような気がする。なっちゅが危なくなった時、俺が……)



 そういう事を考えながら無言でマリエッタを見つめていると、



「……そうだね。私、どうかしてた。あの子は、私の生徒。行こう、助けに!」


「えっ」



 勝手に勘違いをした彼女。グレンは一言も『助ける』とは言ってない。



「私も行こう。私のネックレスだ」



 エディがマリエッタの腕を強く握る。そして、握りしめたネックレスの腕で、グレンは歪んだ空間に触れた。



「くっ……!」


「エディ!」



 不思議な事に、なぜかエディの腕が離れていく。



「必ず……必ず戻ってこい、グレン! 私は待っている!」



 エディだけを残し、酒場は静まり返るのだった。


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