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 深夜遅くまで酒場でバカ騒ぎして、グレンは酔い潰れた三人を宿まで引きずっていくのだった。



 * * * * * *



 ララバスタの村は、沈まぬ赤い月の下で自然を取り戻そうとしている。寒空の下、雪の積もったその場所で仮面の男が白い息を吐いた。なっちゅが一通りラバズを殲滅したトンネルを背後に、目元を覆った男が片手のひらに白い優しさを転がしている。


 今から少し昔の事。魔法小国ララバスタの村に一人の少年がいた。大好きだった女性のために、少年は強くなると決めた。



「今日で、ちょうど七年目だな」



 そっと膝を折り、年の数だけ包んだ花束を置く。


 肩に乗ってくる黒猫の歌に耳を傾け、仮面をつけた男性は呟いた。焼け崩れている建物は、当時のままに。



「レイチェル。俺は、今でもお前を想っている」


「……」


「もしも、もう一度だけ過去をやり直す事が出来るのならば……」


「魔王様、寒いにゃ。そろそろ行かにゃいと、ウチ死ぬにゃ」


「……そうだな。おまる、お前には温かいミルクでも飲ませてやろう。だから、あと少しだけ待っててくれ」



 重い話はやめてくれ、と言わんばかりに黒猫が割り込んだ。クスリと微笑んで、魔王は肩に乗ったおまると呼ばれた黒猫を胸にしまう。



「にゃは! 温かいミルク! 嬉しいにゃ!」



 真ん丸な目を輝かせて、おまるは魔王の温かい身体に包まれた。


 魔王の眼前、細い丸太で作られた十字架には、雪が積もっている。それには錆びついた銀色のネックレスが掛けられてあった。風化しているようで、もうデザインすら分からない。



「古の誓い……。俺は、絶対に守り抜く。なにがあってもな」



 立ち上がり、虚空を見上げた。誰もが逃げ出しそうなほどの寒さの中、覚悟を決めたかのような寂しい笑いが出てくる。



「それにしても、魔王様はどうして十神魔将と聖騎士を相手をしたのにゃ? 放っておけばよかったにゃ」



「そうもいかん。敵を欺くには、まずは味方からだ。行くぞ」


「うん!」



 魔王の胸の中で、おまるは満足そうにゴロゴロと喉を鳴らす。


(また来るからな、レイチェル)


 今一度振り返り、魔王はレイチェルの墓を見つめる。返事がくるはずもない。そこに立っているわけでもない。風化したネックレスに刻まれた約束は、果たせなかった。だからせめて、口約束だけでも。



「どうしたにゃ?」


「なんでもない」


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