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にっこりと微笑むなっちゅ。どうやらこの変なおじさん、名をエディというらしい。
「そういえば、なっちゅは魔王の元側近だろ? エディの事、思い出さなかったのか? ていうか敵同士じゃんかよ。憎んだりはしてないのか?」
すでに背中で寝息を立てているマリエッタを放り投げ、グレンは疑問に思った事を聞いてみた。
「えぇ。正直当時は、ものすごくムカついてました。だけど……。エディは確か、色白の金髪だったはず。どうも、おかしいのです。性格までイメチェンしたのですか?」
「……だから、イメチェンどうのこうのではなく、私はそもそも記憶が無いのだ。この世界の事が聞きたい。レベルはカンストしてるかもしれないが、初心者だと思ってくれて差し支えない。だいたい誰だ、そのエディ……。エ……ディ……」
どうやら聞き覚えのある名のようだ。顔が固まった。思い出そうとしているらしく、グレンとなっちゅは静かに見守っている。
「ぐっ……。覚えている。エディ……私の大切な人だ。私が、初めて心から愛した男……」
「「えっ……」」
若干ヒキ気味の二人。自分自身を好きな人はいるだろう。だが、愛するとなれば話は別だ。よっぽどのナルシストなのだろうか。
「さ、さぁ、話題を変えようか。うん、大丈夫、泣くなよ。ゆっくり思い出せばいいさ。な、なぁなっちゅ」
「そ、そそ、そうですよ。うん。そういえば、この世界の話でしたよね? いいですよ。お教えいたします! ざっくりでいいですよね?」
あせあせと二人して必死に話題を変えようとする。そうだ。元々、このエディはずっとこの世界観の事を聞きたがっていた。
「この世界はいくつかの大陸に分かれています。地図でいうと、ここ王都グレイスは北西にあるわけです」
四次元空間へ送れるアイテムパック、Bbから眩い光と共に世界地図を取り出してなっちゅが説明している。
「もちろん、王都なわけですので国王がいます。ずいぶん間抜けな国王です。王女様が行方不明になったという噂もありますが、個人的には父を見かねた王女様がもう嫌になって抜け出したという見解です」
その情報はいるのだろうか。まぁ、これも一応世界観だ。グレンも初めて聞くらしく、素直に頷いている。
「王女様を見かけた、という情報が上級者の街、メルフィスからありました。そのメルフィスの街からしか行けないのがララバスタの村です。国王は血眼になって騎士団を派遣します。おバカな国王のせいで、ララバスタの村とメルフィスの街を遮っていた封印が解かれました。そして義勇兵……冒険者のグレンが派遣され、私も魔王様からの命令でララバスタの村へと直行します」




