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3

 少年のその声に急に静寂が戻った。妙にあたふたしている声がマイク越しに聞こえてくる。



『くっ。覚えてろよ……?』



 そして、少年はクエストを断念した。アイテムを使い宿屋へ一瞬にして戻る。宿屋に常備されているログアウトする機械の前にて、少年は姿を消した。



 * * * * * *



「それにしても、さっきの緊急クエスト……一体なんだったんだ?」



 携帯ゲーム機をベッドの上に放り投げ、少年はうつ伏せに倒れこんだ。今話題のネットゲームを終えて、ばたり。マリエッタ……溝口真理恵から「絶対にやるように」と念を押されていた宿題もやる気がないようだ。自然に瞳が閉じていく。



「メンドクセ。明日……やるか……」



 そして二秒も経っていないだろうが翌日。少年は携帯ゲーム機を持って学校へ行く。自分の椅子でログインすると、昨日陥落しかけていたトンネルはなんとか無事だった。どうやら、再封印が上手くいったらしい。このゲームの不思議なところは、こういったリアルタイムな所だったりする。一分一秒、まったく同じ時間帯でもこちらとゲームじゃ、世界観がガラリと変わるのだ。魔王軍として参加するプレイヤー、魔王討伐を目的とされた冒険者ギルドに所属するプレイヤーが一進一退の攻防を繰り広げるゲームなのである。自由性が高く、こちら側に寝返ったと思ったら、情報を掴んで戻っていく奴も少なくない。


 それはさておき。少年はふと疑問に思った。一応ながら、すでにソードマスターとして一目置かれている存在。レベルもMAXだし、スキルポイントにて最強かと思われるスキルをほぼ開放している。さらに言うならば現在一番レアリティの高い武器を最高クラスまで強化しているのだ。――昨日は何故かリコーダーだったが――朝方5時で時間も時間とはいえ、少年を除いた他の人も居なかった。一体誰がどうやって、あのボロボロになった廃村へと繋がるトンネルを守り抜いたというのか。そうこう考えてるうちに、少年は隣に誰かが立っていることに気がつく。



「あ、あの。わ、私のリコーダー、返して下さい」


「ぁン?」



 おどおどした声のした方を見ると、クラスで一番の美少女系ブスがいた。背がちっこくて、目がきゅるっとして、ショートヘアの女の子。別のクラスからは天使の生まれ変わりと言われるくらいの可愛らしさを持っている。……持っているのだが。



「知ってるんです。昨日、私のリコーダー吹いてたでしょう?」



 ――!?


 ザワついていた教室が、一瞬にしてシンと静まり返った。



「は? 一体何の話だ?」



 少年は、頬を桜色に染めてもじもじもじもじしている少女から距離を取りつつ立ち上がる。



「しっ、しらばっくれないで下さい。あの、そ、その……薄暗い中で、私のリコーダーを吹いている姿を見たんです」


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