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スマホは、電話として使えて初めてスマホだと認識される。電話出来る事によって初めて『存在』し、在る事になる。それが出来なければ単なる情報端末機……PDAだ。
この現象は、メビウスの輪に隠された謎と同じように扱われるのか、それとも元々夢として認識されるのか、少年はそこまで頭が回らなかった。ただ、現状をなんとかしなければならない。
たとえばこれがメビウスの輪だとすると……。
彼は電話を鳴らし続けた。だがしかし、出てくれない。二人とももしかしたら知らない番号からは取らない主義なのかもしれない。とにもかくにも、グレンはもう一度ログインするしか方法が無いようだ。もちろん、彼の脳裏に『二人とも見捨てよう』という案が出たのだが。
「くそっ……!」
一言ボヤき、少年はもう一度ログインするのだった。
* * * * * *
「緊急会議だ。マリエッタを呼ぶぞ」
酒場に戻るなり、グレンはテーブル席にどっかりと腰を据える。
そういえば個人チャットなど今まで平気でやっていたが、彼は妙に意識しだしてしまった。よくよく思い返してみると一種のテレパシーのようなものだ。相手に向かって発信した想いを相手は受信する。そして、それのキャッチボール。発信先が無い場合は単なる一人で考えてる状況になるのだろうが。
(マリエッタ、聞こえるか? 今すぐ、グレイスの酒場まで来てくれ。緊急会議開くぞ)
(ン、ちょっと待ってて。すぐに行くから)
グレンの隣で小さくカタカタ震えているなっちゅ。怖いのだろう。いくらプロのゲーマーで十神魔将の長だったとはいえ、まだ十七歳の少女だ。
「安心しろ、なっちゅ。大丈夫だ」
「ぐ、グレン……」
「いざとなったらお前を置いて逃げるから」
首を絞めてくる小さな手。相変わらず最低な男だ。そんな時、酒場のドアが開く。
「へい! へいへいへい! お待ちィ!」
あ! やせいの マリエッタが とびだしてきた!
妙にハイテンションな言葉に、思わず変なおじさん(ハゲではない)までも食後のデザートを食べる手が止まる。




