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 グレンの同意を得る間もなく、変なおじさん(仮名)が仲間に加わってしまった。追い返そうにもこの状態で見捨てては、さすがに男が廃る。なっちゅが思い出すまで。そう、たったそれだけ、短い期間だ。



「さて、御馳走になった上にこういう事聞くのは申し訳ないのだが……この世界一体どういう物なんだ」


「……さすがにレベルをカンストさせてて、その台詞はどうかと思いますよ。そろそろ、演技はやめてもらえないでしょうか。ここはゲームの世界。あなたは記憶喪失という設定で、リアルの世界で私たちを嘲笑い、ほくそ笑みながら遊んでいるのでしょう? 冗談半分で付き合った私も悪かったと思ってますけど……」


「そっ、そうだそうだ! ここはゲームの世界だぞ。記憶喪失なんて起こり得ねぇ!」


(今の今まで俺も忘れていたけどな)


「ゲーム? ……一体なんの話だろうか。ここは王都グレイスで合っているのだな?」



 話が噛み合っていない。グレンとなっちゅは互いに顔を見合わせ次に変なおじさん(多分ニート)へと視線を向ける。冗談で言っているわけではない様子だ。



『そういえば、ジェイクは戻ってきたか?』


『いや、それが全然。あんなにやる気だったのに、一回死んだだけで一カ月経っても戻ってこねぇ』



 周囲から聞こえる他パーティの声。


 グレンはごくりと固唾を呑んだ。口をへの字にさせ、なっちゅが汗を浮かべている。なにかマズい事でも起こったのだろう。おそらく、最近ありがちな『ネトゲの世界で死んでしまったら現実世界でも死んでしまう』的な事を考えているに違いない。



「あの、一旦私、宿に戻りますね。すぐまたログインしますから」


「あ、あぁ、頼む」



 一応宿以外からもログアウト出来るのだが、宿からの方が安全にログアウト出来るらしい。PCに差したUSBメモリのように。


 なっちゅが走って去った後、食後のデザートを一心不乱に食べている変なおじさん(多分すけべ大魔王)。頭上に疑問符を浮かべてフクロウのように顔を傾けている。



「私は、なにかマズい事でも言ったかな?」


「い、いや。そうじゃねぇ。けど……」



 長い長い沈黙が続いた後、なっちゅの甘い匂いがした。顔が強張っているのか、見事なへの字をしている。



「どうだった、なっちゅ」


「……怖いです。意味が分かりません。私、なぜか家に帰ってお風呂でプレイしてました」


「――!?」



 どういう事なのだろうか。たしかに、グレンとなっちゅはカフェでプレイしだした。その時はマリエッタと一緒に。


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