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 どおりで、こんなに人がいないわけだ。皆、魔王に怯えてログアウトしているのか、それとも屋内に逃げ込んで別の作業をやっているのだろう。だがしかし、妙な話になってくる。


(魔王、なんでこの街を襲わないんだ?)


 ここは王都。プロゲーマーの三人を倒した後だ。残っているのはおもちゃのように弱い兵隊しかいない。陥落させれば終わりだ。そんなに強いなら、直接来て破壊する事も朝飯前のう○このようなものだろう。なのに、なぜそうしないのか。



「魔王様……ララバスタの村が、そんなに気になっているのですね」



 ふと、なっちゅがグレンの考えを読んでいるかのように声を漏らした。そういえば、魔王はララバスタの村に秘密を抱えている、彼女はそう言っていた。ララバスタの村は上級者の街、メルフィスからしか行けない。ここからはるか遠くだ。おそらく魔王は現在、メルフィスにいるのだろう。



「……ちょっと指令室に行ってくるね」



 珍しく緊迫した様子でマリエッタが言う。本来彼女は指令室にて、騎士団の命令を義勇軍という名の冒険者に指令を伝えるのが役割だ。オペレーターともいう。国王軍の騎士団が壊滅した場合は、一体どうなるのだろう。それが気になっていたのだろうか、行ってしまった。



「それはそうと……誰もいませんね」



 てくてくてく、となっちゅが先行して辺りを見渡してみる。



「大丈夫なのか? 運営、これ利益出ねぇんじゃねぇのか? うおぉぉ!?」



 横に並んだグレンが、突然何者かに足を引っ張られ、素っ頓狂な声を上げた。地面から手がにょきっと出ている。地面……じゃない。側溝だ。



「すまない、助けてくれないか。ここがどこかも分からん上に腹が減って動けん」



 溝に身体を滑り込ませている。顔を上げる元気もないのか、ただただグレンの足を掴んでいた。少年のようにも聞こえる男性の声だ。



「知るか。いこーぜ、なっちゅ」


「えっ、えっ、でも、この人……」


「いいから、放っておけよ。どうせ『はちみつ下さい』だろ」



 ずるずる。



「そういえば、昨日マリエッタがカメラ買って来てたんだけど、この世界で需要あるのか?」



 ずるずるずる。



「えと、どうでしょう? 私もそんなに詳しい使い道は分かりませんが。というか、カメラって存在したんですね」



 ずるずるずるずる。



「頼む。どうやら私は自分の名前すら覚えていないようなんだ。このままじゃ死んでしまう。ここは初心者の都、王都グレイスで合ってるのだな?」


「ググレカス」


「だ、ダメです! ダメですよ、そんな乱暴な口を訊いちゃ。グレンも、記憶を失ってる時に『ググれ』って言われて分かりますか?」



 なんだろう。ものすごく正論言われている気がする。さすが、なっちゅはグレンよりも長くプレイしているようだ。元魔王軍の方が優しいなんて、世も末もいいところである。


 念のために、ググれというのは『グーグルで調べて下さい』という意味だったりする。


 足を掴まれたまま動けなくなったグレンは、やむを得ず男を酒場へと連れていくのだった。

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