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破壊された村へと繋がるトンネルは、恐ろしいほどまでに静まり返っている。彼らの任務は、この先にある村の奪還だった。
少年は、なぜ現在一人なのか、なぜ作戦が裏目に出てしまったのか、なぜリコーダーが装備品として支給されているのか……獲物を見つけたラバズの静寂なる歩みを眼前にして考えていた。
(な、なんでリコーダー……?)
特に三つ目が気になって仕方がない様子で。
「ま、ままま、マリエッタさん! おいちょっと? ねぇ、聞いてます!? なんか人面犬っぽいのが俺に向かって来てるんですけど!」
なおも通信機は沈黙している。
「聞けっつってんだろーがクソババア!」
『誰がクソババアだこんクソガキゃぁぁぁぁぁッ!』
突然、クソババアことマリエッタが息を荒くし、マイクに食いついている。
『私はまだ二十九よ、二十九! わかる? 肌だって透き通ってるし、雨水だってはじき返すんだからね!』
「るせー! 産まれた時からババアはババアなんだよ!」
売り言葉に買い言葉というやつか。突然少年の口調も荒荒しくなってしまう。
『はぁ!? アンタ今、全世界二十九歳の女性に喧嘩売ったよね? 葛●ミサトも敵に回してるよね!? そんな事言ってたら使徒に襲われても●ヴァ出してくれないよ?』
「いきなりアニメの話してんじゃねーよ! 現実見ろよ!」
『この世界だって同じようなモンでしょーが!』
しょーが、しょーが、しょーが……
薄い闇に反響しながら、通信機からの声が溶けていく。それはそれは、敵の注目を全て少年に集めながら。ゆっくりゆっくり近づいてくるラバズたちを見つめて、少年は滝のような汗を浮かべた。
「マリエッタさん。僕が悪かったです。大声で叫ばないでください。食べられます」
すでに頭をガジガジ噛みつかれて、だくだくと血を流している少年が、口を一文字にしてキリッと言った。
『ははっw ウケるww』
「『ウケる』じゃねーよクソビッチ! この状況、早く何とかしやがれ!」
『じゃあもう寝る? そのクエ、別に他の誰かにやってもらっても構わないんだけど?』
「あー、はいはい、落ちます! 落ちればいいんでしょーが!」
『「真理恵大先生、助けて下さいませ」って言ってごらんなさい』
「その胸実はパッドだって事、全校集会でチクってやろうか?」




