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チャイムの音が鳴っている。グレンは、一体いつの間にログアウトしたのか分からない表情で俯かせていた顔を上げた。マリエッタの国語の授業。天使の調べのような声の朗読が続いている。
(?? ……???)
キョロキョロと周囲を伺う。珍しく彼女が授業をしている風景。十一月。更に詳しく言うと十一月二十九日。もうすぐ十二月になりそうな時期。もちろん、誰一人として授業内容を聞いてはいないのだが。
「はい、次グレン読んで」
グレンはスマホにて日時を確認する。……間違いない。十一月二十九日。いつの間に授業が始まったのか、彼は分からなかった。
「……赤城クン? 朗読してね?」
本名を呼ばれて、ハッとする。
「『あっ、ダメ。お兄ちゃんのばかっ! そこ、おしっこする所だから舐めないで! 妹は必死にやめさせようとする。しかし兄は舐め続けた。便器を』……って、ナンじゃこりゃ!」
「はいー、授業中に官能小説を読んでるグレン、アウトー」
どや顔で見下してくるマリエッタ。どうやら、寝ている間に教科書と官能小説をすり替えられたらしい。ばしぃ、と本を叩きつける後ろの席から少女の声が。
「ちがいますよ、グレン。次は『恐怖の白ジャム』の話です」
「はいー、桃瀬さんも一緒に、廊下に立ってなさい!」
おかしい。なにかが変だ。記憶が飛んでいる。
考えを整理するために、彼は大人しく従い廊下に向かう。それはなっちゅも同じだろうか。妙に腑に落ちない顔つきで教室から出てきた。
「なぁ、なっちゅ」
「我はなっちゅではない。桃瀬だ。……あっ、間違った」
素でちぐはぐな事を言っている彼女の顔を覗きこむ。まだまだ自分自身の設定が練れてない様子だ。




