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「……えっ? お前魔王軍だろ? なんでラバズを討伐したんだ?」
「……それが、我にもよく分からぬ。魔王様の言いつけだ。視界が悪く、地面もデコボコ。転んだ時にママの形見のリコーダーを落とし、泣いている時に複数の騎士に襲われたのだ。さすがにイラッとして全て、根から炎殺してやったがな」
ゴッ、と手から漆黒の炎を出してみせるなっちゅ。
「あっ……」
だがしかし、ぴゅぴゅっ、とまた出血してパタリと倒れている。
(だめだ。コイツ絶対お荷物系だ)
だがしかし、ようやくトンネルの謎が明らかになった。昨夜グレンがログアウトした後、どうやら一人でラバズ共と先発隊の騎士を処理したらしい。味方を全滅させる理由……それは魔王にしか分からないという。薄暗い中でよく戦えたものだ、と感心した途端、何故かピンとくるワードが少年の脳裏に過る。薄暗い、だ。そしてリコーダー。
「……まさかとは思うけど、お前、桃瀬か? 桃瀬奈津美?」
びくっ、となっちゅの肩が揺れる。彼女は顔を俯かせ、数秒間沈黙。
この反応だけで分かってしまう。絶対桃瀬だ。
今日、学校で『リコーダー返して下さい』と涙目で言ってきたクラスメート。なんという天文学的な数値だろうか。まさか、教師とクラスメート、両方が同じゲームをやっているだなんて。
と、そんな時、突然拳が飛んできた。顔を追って話していたためか、少年は軽く避ける。
「なっ、いきなり何すんだよ!」
「知らぬのか? 黙秘拳だ」
「知らねぇよ」
どうやら、なっちゅはファイターの方が性に合っているらしい。魔法を使おうとしていちいち倒れられては、この先やっていけない。
「だけど、まさか桃瀬がなぁ。桃瀬が、なっちゅだったとはな……」
「わ、我は桃瀬ではない! 誰だ、そやつ。我は知らぬ」
「ふーん? さっき顔確認させてもらったけどよ、やっぱりお前桃瀬だろ」
「あっ、あっ、や、やめて。それ、本当に痛かったんですよ?」
みょーん、とゴム製の一つ目目隠しを引っ張り、再度顔を確認している。ぱちーん。
「うっ、うっ。ひどいです」
真面目な子が悪役ごっこをやるから、こうなる。勇者(屑)にイジられ倒されるのである。




