表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

彼女との出会い-1

 オレの高校の陸上部の活動はそれなりにハードだ。

 筋トレはもちろん、七週ほど校内を外周するという練習メニューをほぼ毎日組んでいる。

 そうとも知らず陸上部に入部してしまったオレは、無論そんな練習を余儀なくされていた。


「ねえねえ、女の子ってどうしたら喜ぶんだと思う?」

「あ? 何だ急に」

「特に、ツンデレ……いや、ツンツンツンツンツンデレな女の子ってどうしたら喜ぶんだろう」

「知らねえよそんなの……」

 陸上部部員の田中と喋りながら走っていると、

「喋ってないでしっかり走りなさい! ほらそこ、チンタラしない!」

 顧問の怒鳴り声が背後から響いたので、オレは田中を抜かして少しスピードを上げて走った。


 こんなときに隣に弥生ちゃんがいてくれれば、もっとヤル気出して走れるんだけど――弥生ちゃんはもうとっくに帰っちゃってるから、仕方がない。

 足を進めながら、ぼんやりと弥生ちゃんのことを思い出すことにした。

 

 オレはチャラいとか軽いとか、失礼極まりない印象を抱かれるコトもまあ少なくない。

 見た目故かなんなのか、さっぱりわからないけれど。

 女遊びが激しそうとか言われたこともある。弥生ちゃんへの恋の妨害にしかならないから本当にやめてほしい。

 オレは一途に恋をしている。

 つれないけど、誰よりも可愛い彼女に。


 

 ***



 弥生ちゃんに心を奪われたのは、そう昔のことではなかったりする。ついでに言えば一目惚れでもない。高二になって初めて彼女と同じクラスになって、最初に抱いたのは「いつも眠そうな子」っていう印象だった。

 最初は――本当に本当の最初の頃は、弥生ちゃんのことをそんなくらいにしか思っていなかった。

 まあそれも、程なくして「いつも眠そうな子」ではなく、「いつも寝てる子」だということが判明するんだけど。


『宮田! 起きなさいッ!』

『……』

『今は授業中なのよ? 何度言ったらわかるの』

『……すみません』

『それでテストで悪い点取ったりしても、あんたの自業自得よ!』


 弥生ちゃんは授業中いつも寝ている。

 この高校で最も恐れられている杉野先生(陸上部の顧問でもある)の国語の授業でもゼッタイ寝ている。どれだけ怒号が飛んでも懲りずに寝る。

 すごいなー、この子。

 一番前なのに堂々と寝る勇者に、感心に近い憧れを持った。

 しかも、すごいのはそれだけじゃなかった。



 



『えええ、スゴイね宮田さん!』

『弥生ちゃんっていつも寝てるよね!? 何でこんなに出来るの!』

『今度勉強教えてよ~!』


 ある日の朝、何やら廊下が賑わっていた。主に女子がわらわらと群がっていて、どういうわけか弥生ちゃんを囲んでいる。朗らかな雰囲気でいじめでは無いとすぐにわかったけど、一瞬びっくりした。


『どうしたの?』

『あっおはよ、碧! 見てよコレ!』

 群がっている女子の一人に聞いてみると、女子は興奮気味で掲示板を指さした。

 そこにはこの前の中間テストの結果が貼られている。

 この学校は、中間テストが終わると、成績上位トップ20を紙に貼りだすというシステムをとっている。一度もランクインしていないオレにっては、正直縁のないことだ。


『あー、貼り出されたんだ。一位はだ……』

 誰だろう、と言いかけて、オレは思わず言葉を失った。


 悠々と綴られた“一位 宮田弥生”の文字が目に飛び込んできたからだ。


 え!? まさかの!? まさかの弥生ちゃん!?

 失礼な話だけど、オレはかなり驚いた。どの授業でも必ず寝ていて、まったく勉強に関心を示していないようなこの子が……!

 思わず拍手してしまうくらいだった。

 授業内容は全部理解できるから、いつも寝てたってコトなのかな。うわあ、やばい。かっこ良すぎる。


『すごいね! 何でそんなに勉強できるの?』

 そう弥生ちゃんに聞いても、彼女は小さく首を傾げるだけで、面倒そうに教室へ入ってしまった。

 その後、弥生ちゃんは誰に褒められても『さあ』とか『いや』とか短く返すだけだった。

 めちゃくちゃ頭良いくせに、全く調子に乗らない所がますますかっこいい!!

 オレはすっかりハートを鷲掴みにされた。


 ――このときはまだ完全には射抜かれていなかったけれど……でも、彼女を目で追うようになったのはこのときからだった。


彼女との出会い-2に続きます^^

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ