第4話 Duel not admitted
「……はぁ、本当に面倒くさいな」
あの事件を終え、無事に彩葉の攻撃からも避けきった後。
俺は職員室前まで来ていた。
というのも、何でも転入するためには教師と戦い実力を示さないといけないのだが、
俺の場合、全員を救った特典みたいな感じで試験なしでいいらしい。
まぁ、その代わり書類を書かないといけないらしいけどね。
コンコン
「失礼します。柊 隼人です」
そういって中に入ると先生達、全員の視線が俺に向かってきた。
普通に考えると『あの子が欠陥魔導士なんだ?』って感じだよな。
ホント、なんで俺はあんな言葉を大声で言っちゃったんだろうな……。
別にあんな台詞をいう必要はなかったのにな。
「……ああ、よく来てくれたね。柊君」
職員室の奥の方から見るからに偉い立場にいるであろう、
銀色短髪の男性がこちらに向かってきた。
「柊です。これからよろしくお願いします」
「ああ、よろしく。俺はお前の担任になる紅 玲也だ。
さっそく、一つ確認しときたいことがあるんだが」
俺の担任になる人か……。でも、結構偉いほうの人っぽいな。
さっきまで周りの先生達がこっちを見ていたけど、
紅先生と話してから見てこなくなったし。
「はい?なんでしょうか」
「お前が“欠陥魔導士”っていうのは本当なのか?」
「ええ、本当ですよ。診断してもらってもそうでてますし」
笑いながらそういうと先生は反応に困ったみたいで、
かなりわかりやすい苦笑いをしていた。
ーー別に笑ってくれても良いんだけどな。
「そうか……」
「で、先生。俺を呼び出した理由はそれだけですか?」
「いや、それだけではない。俺と一緒にクラスまでついてきてもらう。
転入生として挨拶をしてもらわないとな」
……やっぱりそうなるよな。
だけどもあんな空気の中、挨拶をするのは困るんだよな。
何を言ったら良いのかわからないし。と、
予想していた流れとまったく同じになったことに、がっくりしながら思う。
「はぁ、了解です」
軽くため息をつきながら返事をする俺。
「なんだ?なんか不服そうだな……」
「そうではないんですけど。なんか転入してきたときの空気が嫌なんですよ。
珍しいものを見た、みたいな感じで見られるのが」
今まで何回も転入したことあったけど、どこでもそんな感じだったしな。
「……なるほどな。だが、ここなら大丈夫だと思うぞ。
俺のクラスのやつらは逆に興味を示すかもな。良い意味で」
良い意味で、ね。
まぁ、その言葉が本当かどうかは見てから考えたらいいや。
◇
「それじゃあ俺が呼ぶまでここで待ってろよ」
「……了解です」
俺に忠告だけして先生は教室に入っていく。
(それにしても、なんか急に憂鬱になってきた……)
『……というわけで、転入生ーー!入ってこい』
帰ろうかな?と、考えていたらいつの間にか時間は経っていたらしい。
教室の中から先生の声が聞こえ、呼ばれたのでドアを開けて中に入る。
「全員、知っていると思うが、
さっきの事件で俺達を助けてくれたヒーローの柊隼人だ」
そして中に入ってわかったことを言うと、
先生の言った言葉の意味がわかった気がする。
珍しいものを見たっていう感じなんだけど、
なぜか嫌じゃない。そんな空気だった。
(これが先生の言ってた言葉の意味か。
なんか始まってばっかだけど、このクラスならやっていけそうな気がするな)
「ええっと、先生がいうようなヒーローではないですけど……柊 隼人です。
皆より知識も魔力も少ないですが、これからよろしくお願いします」
自分の中での満面の笑みを浮かべながら言う。
(やべぇ、なんか挨拶を間違えたかな?)
そう思って焦っていたのだが、みんなの反応は俺の予想と完璧に違った。
女子達は頬を軽く赤くし、
男子達には嫉妬的な感情が込められた視線で睨まれた。
まぁ、男子達の中にも普通にしているやつはいるけど、な。
(ーーってか、なんでそんな視線で睨まれてるわけ?)
別にそんな嫉妬されるようなことしてないんだけどな。と思う。
「はい、というわけで柊からでした。で、柊の席は……っと」
無理矢理、話を終わらせる先生。
いつもならそれに怒るのだが、
今回に限っては話を終わらせたほうがありがたいので、スルーする。
「水城と霧島の間の席が空いてるな。そこでいいか?」
(水城ってもしかしてーー)
先生が指さしたほうを見ると、空いている席があり、
その隣の席に彩葉とその反対の席には男子生徒が座っていた。
「あー、はい。良いですよ」
「なら、柊はその席につけ」
やっぱり水城って彩葉のことか。と納得しながら席に向かう。
そして席に向かうため、水城の横を通るその瞬間。
「……悪かったな」
「えっ!?」
取り乱すようなことを言ってしまった俺も、悪かったと思ったので謝る。
すると、水城は戸惑ったような感じの声を出すが、俺は無視して席につく。
また、謝り返されてもこまるしな。
「へぇ……」
右隣の男子生徒が独り言のように何か言っていたけど気にしない。
「では、自己紹介も終わったことだし、真面目に授業でも……」
「ふざけんなよ」
授業を始めようとする先生に愚痴を言う男子生徒。
いや、この場合……俺への文句になるのかな?タイミング的に。
「なんでオレが欠陥品と一緒に授業を受けないといけないんだよ」
ほらきた、やっぱりな。
絶対にいるんだよな、
こういう欠陥魔導士だからって見下すやつ。
「……それになんでこいつは入学出来たんだ。魔法も使えないくせに」
その言葉を聞いて俺は完璧にキレた。
「あぁ?文句言ってるんじゃねぇよ。それとも何ですか~?
お前の口からは文句しかでてこないんですかね?」
「何だと!!」
挑発すると簡単に乗ってきた。
(こいつ、バカだな)
「ああ、バカの頭では一回で理解できませんか」
「テメェ……」
あと一押しだな。
「文句しか言わない負け犬は黙ってろって言ってんだよ!!」
俺がそう宣言すると同時に男子生徒は魔導器を起動させる。
「テメェはここで殺す!!」
剣型の魔導器で俺に切りかかってくる。
同時に女子達の悲鳴や、男子達の絶叫が教室中に響きわたる。
「……甘いな」
が、俺は冷静にポケットから拳銃を取りだし、それで剣を受け止める。
「なっ!?」
それに驚く生徒達だが、特に驚いていたのはバカだった。
まぁ、そりゃそうか。自慢の剣を欠陥品に防がれたんだからな。
しかも魔導器ならともかくただの拳銃で。
「どうした……。俺に喧嘩売るのやめておくか?
ーーまっ、それが妥当だろうな。威張ってるくせに実力のないお前なら」
ブチッ、という音がバカから聞こえた気がした。
まあ、こんな台詞言われたらムカつくよな。
俺でもムカつくよ。言うがわは超楽しいけどね。
「ふざけるのも大概にしろ!!」
その叫びと同時に剣に力が入れられる。
……無駄な力を抜けよな。
「よっと!」
持っていた拳銃をほんの一瞬だけ手放し、剣を大きく振らせる。
そしてもう1つの拳銃をバカ目掛けて構える。
「しまった!?」
銃口を向けられている直前、そんなことを言っていたが無視だ。
俺がバカに銃口を向けたほんの少しあとに、拳銃が地面に落ちる音が響きわたる。
「チェックメイトだ」
こうして教師が認めていない状態での決闘は、俺の勝利で終わった。
今回は自分の作品の中ではかなり長かったかな。
いつもは平均、1500から2000だからですけどね。
とまぁ、雑談は置いておいて。
いかがでしたでしょうか、第4話。
一言、言いますと、バトル描写が難しいですね。
なんかこれをみてて光景が予想できないんですよね。
なので読者からの指摘は絶賛、
受付中ですので、気楽に送ってください。