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Valche《ヴァルチェ》  作者: 神城 奏翔
序章 学院転入編
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第2話 Rescue operation




「……ここか」

俺は“一人”、体育館前まできていた。

そして中の様子が見たいので、体育館の扉を少し開き中を覗く。



中を見ると、舞台にはいかにもボスっぽいやつと、

学園長なのかはわからないが妙齢の女性が話していて、

舞台の下には、全校生徒であろう大勢の生徒がいた。

ーーでも、なんで魔法を使わないんだ。

そう思っていたのだが、すぐに疑問は解決した。



『なんでアンタらには、魔法が効かないのかしら?』

『ふっ、それはな。この特殊スーツのおかげだ』

……なるほどね。そういうわけか。

こいつらが着ている妙なスーツは、対魔導士スーツってことね。




「お前、そこで何をやっている!!」

不意に後ろから声が聞こえたため、

後ろを見てみるとさっきのやつらと同じような服を着た男がいた。

なるほど、これが魔法を反射する特殊スーツで、手には拳銃を持っていた。



(そりゃあ、この装備じゃあ魔法学院もやばいよな。

魔法が使えないうえに敵は拳銃を持ってるからな)

「……おい、話を聞いてんのか!!」

考え事をしていたせいなのだが、男には無視していたように見えたのだろう。

いきなり、掴みかかってくる。



「そんなに近づいて言わなくても、聞こえてんだよ!!」

「ぐあっ」

男を体育館内に放り投げ、瞬時にポケットから拳銃を取り出し3発撃つ。





「お前、何者だっ!!」

ほら、お前のせいで見つかったじゃねぇかよ。

そんな思いを込めて足元に転がっている男を見る。



「俺か?俺は……ただの“欠陥魔導士”だ」

ベルトにつけている代えのマガジンを手に持ち、リロードしながら呟く。

欠陥魔導士(ディヴァルチェ)ーーそれは魔法の素質はあるが、

どの魔導器とも契約できなかった出来底なりの魔導士のこと。




「欠陥魔導士だと……」

俺の言葉に驚くボスらしき男。

「ええ、説明はしなくても知ってますよね?

今では魔導士・魔導器関係の話はほとんど毎日してますから」

主にテレビや新聞でな。



「なるほどな……。お前がその有名な魔導士の欠陥品ってわけか」

「ええ、まぁ」

「フフフ、ハハハハハっ」

魔導士の欠陥品だと、肯定するとボスらしきやつは大げさに笑いだす。

そのとき、俺は体育館舞台のよこにかけている時計をチラッと見る。




(今の時間は、9時55分。約束の時間まであと5分……)






     ◇




~~30分前~~


「私がそんな難しいことをしないといけないんですか!!」

学院の廊下、物陰に隠れながら俺達は作戦を考えていた。

そしてアイデアは出たのだが、それはかなり難しい作戦だった。

俺的にも……、彼女的にも。



「ああ、それしか全員を無傷で助ける方法がない」

「で、できませんよ。私にそんな作業……」

「無理を承知で頼む。これしかないんだ」

彼女に向かって、必死に頼む。




「……もう、この作戦しかないんですよね」

「ああ、そうだ。これしかない」

「わかりました。……ですが、学院に誰もいないとはいえ、

この作業には時間がかかるので、35分ぐらいください」

肯定すると、彼女も覚悟が決まったのか首を縦にふる。



「35分か……。それ以上、縮まったりしないか?」

「無理です、この学院はセキュリティーが厳しいので」

「……わかった。なら、そっちは頼むぞ」

「了解です」




     ◆







「はははははっ、これは傑作だな!!

お前ら魔導士が忌み嫌っている欠陥品に、助けられるなんてなぁ!!」

ああ、なんで笑ってんだ?頭、可笑しいんじゃねぇの。と思ってたけど、

そうじゃなくてそっちに笑ってたのか。



「……はぁ、俺はどちらかといえばお前らの頭のほうが傑作だと思うがな」

「あぁ?」

事実を言うと、男は笑うのをやめ、こちらを睨んでくる。




(あと2分……)

「だって、そうだろ?この学院は、魔導士の中では中立なんだぜ。

だから、欠陥魔導士でも、素質があれば入学してオッケーなんだよ。

それにバカにも、してねぇしな。この学院の先生方は……」

逆に、欠陥魔導士の人にきて欲しい。って、言われたけどね。



なんでも、今まできた生徒の中で欠陥魔導士はいなかったらしい、

だから逆に気になるから来てください。と、ウチの親に頼み込んでたからな。




「人を嘲笑う前に、真面目に勉強したほうが良いんじゃない」

「……調子、乗ってんじャァねェよ。欠陥品風情がァ!!」

俺の台詞にムカついたのか、胸ポケットから拳銃を2丁、取り出す。

そして男は、まるで暴走したかのように俺に向かって乱射してくる。

(こいつ、完璧にキレてるな)

間一髪のところで銃弾を避けながら思う、俺。




「ぐっ……」

銃弾を避けていると、不意に右胸に痛みを感じる。

ーー傷口が開いたか。


「おらおら、どうしたどうした?もう、疲れてきたのかァ?」

「まさか、それよりお前のほうが疲れてきたんじゃねぇの。主に頭の」

だが、今の状況では傷を直すことも休むこともできないので避けることだけに集中する。


「そんな軽口叩いても、俺にはわかってるんだぜェ。

てめぇ、右胸の辺りを怪我してるだろゥ」

男は銃弾が切れたのか、リロードしている。

だが、片方の拳銃にはまだ弾が残っているのか、

俺に標準を向けたままなので、迂闊に動くことができない。




「……何のことだ?」

「恍けたって無駄だぜぇ。その黒い制服でもわかるぐらい染みてるんだからよォ」

(チッ、やっぱバレたか)

バレなければいいな~。とは思ってたが、やっぱ無理だよな。

受けた本人でもわかるぐらい、かなり深い傷だし。

ふと時計を見ると、長い針は10時を示し、短い針は0のところを示していた。



(……時間だな)

そう思うと、思わず笑みが溢れてしまう。



「まぁ、バレたんならしかたねぇ。俺も一つお前に教えてやるか」

「あァ?なんだよ」

俺に両手の拳銃を向ける男。

「……周りを見たほうがいいぜ」

ーー刹那、決着をつけるかのように拳銃の音が体育館に響いた。


どこかからか放たれた銃弾は、見事に男の両腕に持っていた拳銃だけに当たり、

「なっ!?」

いきなりのことで慌てた男は、拳銃を離してしまう。

「チェック・メイト」

それに乗じた俺は拳銃を強く握りながら、男の額に銃口を当てる。



「……チッ、これまでかよ」

「さようなら」

心底、悔しそうな男に俺は短く呟いてから、引き(トリガー)を引く。



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