第25話 Vice-chairperson
「はぁ……、なんで俺が行かないとダメなんだよ」
愚痴る俺の手元には1枚の紙があった。
これはチームを作るために、
指定した相手に絶対に見せないといけない紙だそうだ。
チームを結成するに当たって必要なものが二つある。
一つ目は言わずともわかると思うが、自分達の担任の了承だ。
これについてはまぁ、簡単に手に入った。
そんなに簡単に手に入るなら、
別に憂鬱になる必要はないのではないか?
そう思う人もいるだろう。
実際ーー俺もそう思っていた。そう、思っていたんだ。
もう一つ、見せに行かないとだめな場所を見るまでは……ね。
コンコン
『はい』
目の前にある部屋のドアをノックし、
相手の返事を待っていると、中から女の返事があった。
個人的には、あまり聞きたくなかった声なんだけどな。
「……1年A組の柊 隼人です。
チーム結成許可書にサインをお願いしたいのですが」
『入りなさい』
ホント、この上から目線の口調が嫌いなんだよな。
まぁ、短にそんな口調のやつがいないからだろうけど。
「失礼します」
ドアを開け周りを見てみると、生徒会執行部のメンバー全員がいるようだった。
……こいつら、ずっとここにいるわけじゃないよな。授業だってあるんだし。
だけどこの集まり方は異常じゃね?
だってさ、ソファーが3つほどあるけどもそのうち一つで藤原が寝転がってるんだぜ。
絶対にずっとここにいて暇してただろ。
と思っていたのだが、俺の姿を見た瞬間……藤原は起き上がった。
「……おっ、やっと来たか」
「隼人君、お久しぶりですね」
暇してた藤原はともかく、書類を整理してた永瀬まで挨拶をしてくれる。
「お久しぶりです」
「水城さんの様子はどう?」
あれからずっと気になっていたのか、永瀬は悠里の容態を聞いてきた。
「あ、大丈夫です。医者の処置が完璧だったのと、
先輩達の助けが早かったので助かりました」
「いいえ、私達は何もしてませんよ。
水城さんはあなたが助けたんですよ。私達はあなたに力を与えただけです」
ソファーに座りながら『俺は普通に戦ってただろ!!』と
騒いでる藤原を放って話を続ける。
「ですが、アレがなかったら俺も悠里も死んでいたかも知れません。
なので感謝してるんですよ。永瀬先輩」
「隼人君……」
「あと、藤原先輩にも……」
「はっ?」
いきなり話を振られたからか驚いていた。
「あなたが戦って時間を稼いでくれてなかったら、
俺達は死んでましたしね」
頬を掻きながら、明後日の方を向いて言う。
……やっぱアレだな。
お礼を言うのとかって、なんか恥ずかしいな。
顔見ながら感謝の言葉を言うなんて出来ねぇや。
「………………」
「これ以上、この部屋に男を連れ込むのだけはやめてね」
素直に感謝した俺を見て、絶句した藤原に永瀬は一言いう。
「連れ込まねぇよ!!」
「……そうよ。連れ込んでもらっては困るわ。
まぁ、私が居る限りもう男を連れ込まないようにさせるから安心して。
するのまでは反対しないから、するのなら他所でやりなさい」
「はいはい、わかってますよ。
……って、勝手に俺をホモキャラにするんじゃねぇ!!」
うわぁ……、と藤原を見て引く。
こいつってやっぱりホモだったのか、どうりでな。
1回戦で戦ったとき、怪しいと思ったんだよな~。
永瀬も言ってたしな『生徒会室に男、連れ込むな』って。
「ほら、見ろよ。お前らの言動で1年生が引いてるだろうが」
「……だって事実だし」
「まぁ、いいわ。どうでもいい藤原の性癖だしね」
どうでもいいなら会話に出すなよ!!とまてしても騒ぎ出す藤原。
「で、柊君はコレを渡しに来たのよね」
あれ、スルーでいいのか?
と、心の中で思ったりしたが藤原なんてどうでもいいのでスルーする。
「あ、はい。まぁ、そんな感じです」
「どれどれ………、おお、いいチームだね」
「ちょっと私にも見せてください。
……うん、これは凄いね。1年生最強って言ってもいいんじゃないかな」
(これはそんなにすごいのか?)
目の前で騒ぎ出す先輩達を見て思う。
「……へぇ、君が噂の欠陥魔導士ね」
ふとこの部屋に通じるたった1つのドアの方から低い声が聞こえた。
振り返ると短い銀髪の男がいた。
髪の毛にパーマを当ててるのか、規則良くはねている。そんな男が。
「初めまして、かな? 柊隼人君。
生徒会執行部副会長の【霧島 悠斗】です」
前にMFJ文庫、新人賞に出す。と言ってましたが、
その一ヶ月後のファンタジア大賞にも投稿します!!
勿論、違う小説をですよ?