表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Valche《ヴァルチェ》  作者: 神城 奏翔
序章 学院転入編
2/27

第1話 The start is an event.



「ここが、今日から通うことになる【クラリア魔法学院】か」

とても大きく、立派な校門の前に立ちながら呟く俺……(ひいらぎ) 隼人(はやと)

家庭で色んな事情があって、入学式に間に合わなかった一人の学生だ。

なので、転入生扱いになっているらしい。


その証拠に基本的に黒く、ところどころに赤のラインが入っている

学院指定の制服(ブレザー)を着ている。




「それにしても、大きな門だな」

(こんなに門を大きくする意味ってあるのか?)

今、俺の目の前にはとてつもなく大きな門があった。

あまり詳しくはわからないが、5メートルぐらいだろうか?

もしくは5メートル以上あるかもしれない。

「で、それは置いておいても良いとして……」

遅れてきた場合って、どうやって入ればいいんだろうか?と、不意に思う。


このクラリア魔法学院は、学生寮があって基本的には外出できない。

つまりは、外出することなんてあまりないので、この校門の通り方がわからないということだ。




それに俺も場合、家の都合で遅れると報告を入れていたんだけど、

学校側から何の連絡もきてないんだよね。


「これって、どうしたら良いんだろうか?」

ツンだ?と思いながら視界を動かすと、その横に少し小さい門を見つけた。


「……こっから入れそうだな」

小さい門を軽く押してみると、それだけで軽く開いたので学院内に入る。






           ◇





「それにしても、本当にこの学院は大きいな」

さっきから職員室を探して学院内を歩き回っているんだが、全然、見つからない。

それどころか、ここに通っているはずの生徒の姿さえ見つからない。

(さすがに誰一人として生徒を見てない、っていうのはおかしいな)

この時間だと、普通に授業をしてるはずだが……。



『……おい、学院内にはもう誰もいないか?』

『ああ、こいつ以外誰もいねぇぞ』

「っ!?」

不意に聞こえた男の声ーー声だけだったら驚くようなことでもない。

仮にも学院なのだから、男の教師や女の教師など色んな人がいるだろうからな。

だが、俺が驚いたのは声じゃなく、男達が話した内容のほうだ。



(学院内にもう誰もいない、ってどういうことだ?)

顔には出していないが俺はかなり動揺していた。

そこで俺は男達の話を聞いておこうと思い、会話が聞けるように物陰に隠れながら近づく。





『それにしても、この学院は不幸だな。

有名すぎるから、こんな被害を受けたんだからな』

『まぁ、そうだな。で、ボスはなんて?』

ボスっていうことは、人数は多いのか。と物陰に隠れながら思う。


『……いや、まだ何も。人質の前で交渉をしようと思って、

体育館の舞台でしようと思ってるんだが中々、学園長が交渉に応じなくてな』

なるほど……。ってことは、確実に教師は体育館にいるな。





「で、こいつはどうする?」

「ーーーっ!!」

かなり近くまで来た時、やっと気づいたのだが、

男達の足元に四枝をかなり頑丈に縛られた女の子がいた。

あまりの恐怖にか、宝石のように綺麗な瞳から涙がポロポロと溢れていた。


(こんなの見てしまったからには、絶対に助けねぇとな)

物陰に隠れながら、もしもの為に持って行けと母親に言われ、

半場、強制的に持たされた拳銃を構える。




(こんなところで使うことになるとは思わなかった。

強制的だったけど渡してくれて、ありがとう、母さん)

心の中で、子供のことを一番に考えてくれていた母親に感謝する。

そして次の瞬間、真剣な表情で少女を見つめる。



「……こんなことが起こったら、両親は心配するよな」

男達に聞こえないよう、音量(ボリューム)を落として呟く。

それと同時に拳銃も男達に向ける。




「そりゃあお前、殺すに決まって……」

男が物騒なことを言い終える前に……

(だから、君は絶対に護ってやるよ。俺が)

心の中で呟き終えた後、狙いを男達の右胸に定め一発ずつ撃つ。



「ぐあっ」

「うぐっ」

俺が放った銃弾は男達の左胸にあたり、男二人は倒れそうになる。

「……お前も道連れにしてやる!!」

が、男二人のうち一人が、最後の反撃のつもりか、少女に狙いを定める。




(しまった!!間にあえーーー!!)

もう死んだだろ、と思って油断してた俺は、急いで少女の下へ走っていく。

何故、こんなに必死に彼女を護ろうとしてるのかも、俺にはわからない。



「ぐっ……」

少女を護るために体を使って、

少女に銃弾が当たることは阻止したが、その代わり、右胸に銃弾を受ける。

そのせいで、銃弾を受けた場所から制服が赤く染まっていく。



「ごめん、大丈夫だった?」

出来るだけ傷を見せないように少女の縄を解いていく。

「……は、はい。だ、大丈夫です」

少女は俺に気を使わせたくないからか、気丈に振る舞うが

体がぶるぶると震えてるので、説得力はない。けど、これは仕方のないことだよな。

魔法の素質があったって怖いものは怖いんだから。




「そう、良かった……っ!?」

安心した瞬間、右胸に激痛が走る。

くそっ、これじゃあ体育館に行けないじゃねぇか。


「私は無事でも、あなたは……」

激痛で悶える俺を見て、少女は更に泣きだしそうになっていた。

「だ、大丈夫。俺が勝手にしたことだから気にしないで」

これは君を護りたいと勝手に思って、勝手に助けて勝手に怪我を負っただけだし。




「ですが……」

この少女は諦めが悪いだろうな。と、思ってこっちが先に折れる。

「なら、頼みたいことがあるんだ」

「なんですか?」

俺が頼むのは、たった一つの願い事。




「ーー今から、体育館にいる全員を助けたいんだ。手伝ってくれないか?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ