第18話 Attack person
「……テメェ、どういうつもりだよ。
こんなことしてタダで済むと思ってんのか!?」
「無論、タダで済むとは………あらっ?死んじゃったかしら?」
女は悠里を目の前に持ってきて、じっくりと観察する。
「やっぱ人間はダメね。簡単に死んじゃうわ」
人間はダメ。
自分は人間ではない。
そんなふうに言い放つ女に俺は怪訝そうな表情を浮かべる。
「……ま、目標が自ら来てくれたことだし、この子は用済みだけどね」
そういって悠里を地面に放り投げる。
「悠里っ!?」
放り投げられた悠里の場所まで急いで向かい、
スライディングをしながら悠里をキャッチする。
「……悠里、しっかりしろ!!おい、聞いてんのか!?」
「無駄よ。その子は死んでるわ」
死んだ。
悠里が死んだ……?
そう言い放つ女を睨みつける。
悠里を一旦、会場への入口付近の安全な場所へ連れていき、
そこの壁に背をあずけるように寝かせておく。
……ここなら、今はある結界が無くなれば誰かが助けてくれるだろ。
本当なら今すぐにでも、悠里を医者に見せたいんだけど、このままじゃ無理だ。
だったら、結界を貼った犯人を殺さねぇと。
だから、それまで死ぬんじゃねぇよ。
◇
「あらっ、悲しみの別れはこれぐらいで良いのかしら?」
「……………………」
おそらく俺の直感だが、結界を貼ったのはこいつだろう。
さっきからの言動と、悠里を殺そうとしたその態度でわかる。
「殺すっ!!」
腰につけているベルトから、実弾入りの拳銃を抜き取り構える。
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
敵に標準を合わせて撃ってるのだが、
一発も当たる……掠ることもなかった。
「チッ……なら、これならどうだ!!」
拳銃をベルトに直す。
そしてブレザーのボタンを外し、中からマシンガンを二丁取り出す。
「へぇ、そんな物騒なモノまで持ってるのね。
どうやって手に入れたの?」
「……誰が好き好んでお前に教えるか!!」
敵に向かって突っ込む。
もちろん、走りながらずっと銃は撃つ。
……ホントに時間がねぇ。早くしないと悠里がーーー。
グサッ
「ぐはっ……」
いきなり血反吐を吐く俺。
はっ?なんで俺は急に血を吐いてんだ。
そう思ったとき、ふと腹に異変があるのがわかった。
「……………」
ゆっくりと頭を動かして、その場所を見ると、
髪の毛のようなものが俺の腹を突き刺しているのがわかった。
髪の毛のその先には、ニヤリと笑いながら
俺をじっと見つめてるあの女の姿があった。
「……この、クソやろうが」
そう呟いた直後、女は俺から髪の毛を抜く。
それと同時に傷口から、大量の血が吹き出す。
「…………」
血を吹き出した後、俺の体は地面にドサッと倒れる。
「教えてあげましょうか?
あなたが必死になって護ろうとしていた子を殺した理由」
そんな地面に倒れてる俺に向かって、女が言う。
「本当の目標はあなただったわ。
だけど、物事を冷静に対処できる能力が邪魔だった。
……なら、あなたの仲間を殺せばっと思ったわけよ」
つまり、最初からこいつらの狙いは俺ってことか。
なんで、標的が俺なんだよ。
なんで、そんなくだらない理由で悠里が殺されなくちゃいけないんだよ。
なんで、俺に仲間を守れる力がねぇんだよ。
「これで、終わりね」
そういって髪の毛を俺の体全身に飛ばしてくる。
……悠里、絶対に生きててくれよ。
そんな思いを持ちながら、俺はゆっくりと目を瞑る。
「さようなら…………」