第13話 Transitory love
「……なぁ、俺達、勝ったんだよな?」
「ああ、勝ったな」
あの試合を終えた後、俺達は控え室に戻って休もうと思い、
控え室まで戻っていたのだが、どうにも休めそうになかった。
というのも、
「柊君、どうやってあんなに強くなったの?」
「学院2位の藤原君に勝つなんて凄いね!!」
「いつからそんなに強くなったんだ?」
「……柊君、彼女いる?」
「柊ーー!!俺だーー!!結婚してくれーーー!!」
控え室にて質問ぜめにあっていたからだ。
ってか、最後のやつ。
ふざけんじゃねぇよ、俺は男に恋する趣味はねぇんだ!!
◇
「うわっ、何この人混み……」
隼人のやつが質問攻めにあってる最中、姉さん達がこちらの控え室に来た。
「あ、姉さん。学院2位のやつに勝ったよ。
これでウチの優勝に一歩近づくね」
「あ、うん。そうだね」
姉さんは隼人のことが気が気で仕方ないのか、妙にそわそわしていた。
……ホント、なんであんなやつに惹かれてるんだか。極普通の男じゃないか。
まぁ、オレより強いということは認めてやるけどさ。
さっきだってあいつがいなければ正直、勝てなかった。
あいつが藤原を相手に善戦をしなかったら……惨敗だった。
オレがしたことなんか、あいつより弱い永瀬と戦っただけだ。
それでも3年生だから強かったが、
藤原のやつと比べれば永瀬には悪いが、天と地ほどの差がある。
そんな永瀬に勝つのにも時間がかかった。
……あいつが永瀬と戦ったら、もっと早くに終わったのかな。
……強くなりたいな。
隣で隼人のことをずっと見てる姉さんの姿を見ながらオレはそう思う。
強くなって、姉さんを護りたい。
色んな障害や、敵ーーそれから家の柵からも。
「あれ、隼人はどうしたんですか?悠里」
姉さんが来た数分後に修史とアイリスの二人がやってきた。
手にはそれぞれ二人分のジュースを持っていた。
「ああ、あいつならあっちで質問攻めにあってるよ」
人混みのほうを指さすと、修史は苦笑の表情を浮かべる。
「……あぁ、やっぱりこうなっちゃってましたか」
「やっぱりってどういうことだ?」
「いえ、普通に考えてみてください。
いきなり新入生が3年生を倒してみてくださいよ。そりゃあこんなことになりますよ」
「……確かに」
良く考えると、そうだな。
しかも隼人は欠陥魔導士ときたものだ。
それなのになんで学院2位に勝てるんだよ?となるな。
そりゃあ、こんなことになっても仕方ないな。
「あ、はい。これどうぞ……悠里さん」
アイリスが手に持っていた缶ジュースを渡してきた。
ちなみに持っていた缶ジュースは、オレンジジュースだった。
「ありがとう」
これを選んだのは、絶対に修史だな。
そんなことを心の中で思いながら受け取り、飲み始める。
「それにしても彩葉も、自覚すれば良いんですけどね」
そう呟く修史の表情は、あたかも彩葉の兄らしい顔つきだった。
「……なんでお前は、そんな顔してるんだよ」
「はい?どんな顔ですか?」
「何ていうか、こう……妹の旅立ちを見守る兄みたいな」
オレがそういうと、修史はいきなりの言葉に顔をキョトンとさせる。
「そんな顔してましたか?僕」
「ああ、してたぜ」
「してたわね」
オレとアイリスの肯定の言葉を聞き、修史は笑い出す。
「ま、それも仕方ないでしょうね。
彩葉が隼人のことが好きなんでしょ?アレはどう考えても」
「……そうだな」
あの行動は好きな人相手にしか出来ないはずだし。
「で、僕は考えたわけですよ。
彩葉の恋は全力で応援するって……」
そう言い聞かせるように宣言する修史の顔は、とても悲しそうだった。
「……お前はそれで良いのか?」
「はい?何のことですか」
「恍けるなよ。お前が昔、姉さんのことが好きだったのは知ってるんだ。
だけど、その好きな人を隼人に取られたんだぞ?」
「ええ、まぁ、考えようによっちゃあそうなりますね」
「だったら……」
「でも、僕は彼らを応援しますよ」
再び、応援すると宣言する修史。
「なんでだよ……」
「色んな柵のある魔導士の僕だったら彼女を護れない。
だけど、柵のない欠陥魔導士の彼だったら彩葉を護りきれるはずだから」
ま、隼人が欠陥魔導士じゃなくても彩葉を任せることは出来たでしょうけどね。
と、付け加えるように言ってくる。
……ホント、なんでそんなに簡単に諦められるんだよ。