第11話 The first game, a start
「……大丈夫でしょうか?」
隼人と悠里の対戦相手が決まった頃、
モニター越しに彼らの親友、修史は彼らの心配をしていた。
理由としては単純明快、対戦相手が自分達より年上の三年生だから、
というのと、その対戦相手の強さは学院2位だからである。
「悠里、隼人君……」
彼の隣では悠里の姉でもある彩葉も二人のことを心配していた。
「大丈夫よ」
そんな中、たった一人だけ心配していない人がいた。
アイリス・スカーレットだ。
「彼らを信じなさいよ。私達の仲間でしょ?」
彼女がそう聞くと、二人はまぁ、そうだけど。と言う。
「だったら信じてあげなさい。
それが今の私達に出来るたった一つの方法でしょう?」
アイリスが満面の笑みを浮かべながら言う。
それは見とれるのも仕方がない。
と全員が全員言うであろう。天使の微笑みのようだった。
「……そうですね」
納得したのか、修史はため息を一回ついてから表情を変える。
それはまるで、仲間を信じきっているかのような顔つきだった。
「それに………」
『ほら、あいつらだぜ?』
『ああ、あいつらが可哀想なやつらか』
『ホント、可哀想だよな。学院2位と戦うことになるなんて』
これで負けは決定だな。
そういって笑いあう二年生の男達を見ながらアイリスは言う。
「あんなやつらを見返してやりたいのよ!!
隼人、悠里ーーーっ!!ぜっっったいに勝ちなさいよーーー!!」
イラつきが限界に達したのか、モニターに向かって
おとなしい彼女にしてはらしくない大声をあげる。
その光景を見て、修史は思った。
(隼人、悠里。勝たないと死ぬことになるかもしれませんよ……)と。
◇
『では、両チーム、前に出てきてください』
司会者……学院長ではない女性がステージの中心辺りまで来て言ってくる。
それを聞いた俺達は一斉に中心地点まで歩き始める。
「……お前が柊 隼人だな」
俺達に向かって……特に俺を見ながら言ってくる藤原。
ちなみにこっちで話してる間に司会者は、
他のみんなを違う場所に連れていったりしていた。
「だったら、どうなんだ?」
「ふっ、話は早い。俺とタイマンで勝負しろ」
どうやってタイマンに持ち込むか。挑発でもするか。
そんなことを考えていたのだが、あちらさんからタイマンの申し込みがあったので、
作戦通りにいきそうだな。と思い嬉しさで少し口角がつり上がってしまう。
「別にやっても良いけど。なんでだ……」
「お前は≪最強の欠陥魔導士≫と名乗ってるらしいじゃないか」
「まぁな」
名乗ってるのは俺じゃねぇけど。
「最強という称号は、副会長しか使ってはいけないんだよ。
だから、俺が勝って最強と名乗る権利を剥奪してやる」
「…………」
えっと話が支離滅裂すぎて良くわからないんだけど。
つまりこいつの言いたいことは、
俺が最強を名乗ってるのが許せないってことだな。
こいつの言う副会長しか名乗ってはいけない、と。
要するに、アレだな。
副会長バカですね。
言い方を変えるとゾッコン。
でも、一つ気になるんだが、
最強って生徒会長じゃなかったか?そう思った俺は悪くないだろう。
俺の聞いた話だと、この学校の会長が一番強いらしいけど。
……もしかしてこいつは、その副会長が好きなのか?
ふと、そんなことを思ってしまうが、勝負に必要ないことだな。
そう思い、考えるのをやめるかのように首を横にふる。
「やれるもんならやってみろよ」
腰のベルトから拳銃を抜きながら言い放つ俺。
銃弾は既にこの大会仕様になっている。というか、紅に渡された。
「上等だ。千穂っ!
あいつには手を出すなよ。あいつは俺の獲物だ」
俺に真剣な眼差しを向けながら言ってくる。
既にやる気なのか、手に光が集まり魔導器を作り出す。
武器の形は長剣なのか、長細い剣の形になっていた。
「はいはいっ、わかってるわよ。でも、喰わないようにね」
喰わないようにってどういうこと!?
もしかして、こいつってあっち方面の人なのか?
「……努力はする」
「まったくもう。
これ以上、生徒会室に男連れ込むのはやめてよね」
……もう何も考えたくない。
というか、自身に起こりうる最悪な結末を一瞬でも考えてしまい。
背筋がゾクっとする。
駄目だ、絶対に勝たないと俺が危ない。
「……隼人、まぁ頑張れ」
励ますかのように俺の肩に手を乗せながら悠里は言ってくる。
「頑張るけどさ。ーーお前もその可能性があることわかってる?」
俺がそういうと悠里はキョトンとする。
アレ?なんかこいつの様子おかしくね?
「あ、ああ。そうだったな」
一瞬、自分の体を見回してから言う。
「わりぃ、なんかあいつのせいで頭ん中、訳わかんなくなってきた」
ああ、なるほどね。
だからさっき、あんなことになってたのか。
それは仕方ないけど。
「勝負はしっかりやれよ」
「ああ、それはわかってる」
それなら良い。
そう小さく呟いてから俺は、銃弾のチェックをする。
『両チーム、準備が出来たようなので始めます。
Aチーム 水城悠里・柊隼人ペア対Bチーム 藤原智也・永瀬千穂』
両チーム、構え。
司会者にそう言われ、全員して武器を構える。
俺と藤原は既に構えていたのだが、
二人は構えてなかったので、瞬時に魔導器を作り出す。
『レディー……………ファイトっ!!』