第10話 The worst first game
「おっ、そろそろ始まるな」
「そうだな」
さっき試験会場に来たばかりの女性は、マイクを持つとこういった。
『えぇ、これで参加者全員が揃いました。
学年混合チーム対抗戦を始めます』
あれ、ちょっと待てよ。
これで全員が揃ったってどういうことだ?
まだ、彩葉に修史。そしてアイリスも来てないのに。
「ちょっと待ってください」
すぐに始めようとする女性に待ったをかける一人の男。
ネクタイの色を見る限り、俺達と同じ赤色なので一年生だろう。
その光景を見て、俺らのネクタイと色の違う生徒達は
やれやれ、またか……とため息をつく。
ちなみにネクタイの色は三つある。青・赤・緑だ。
これはどうでもいい話だが、青・赤・緑になった理由は、
蒼・紅・翠からきたんだったかな?ホント、どうでもいい話だが……。
俺達一年が赤だから、青と緑のやつは二年か三年のどちらかだな。
雰囲気的に緑のほうが大人っぽいから三年かな?
「まだ、二人しか揃ってないんですけど」
どうやらあっちのほうも俺らと同じ状況らしい。
「俺らのところもです」
「私のとこも」
それとキッカケに赤いネクタイをつけた生徒達がそんなことを言い出す。
だが、青のネクタイのやつらと
緑のネクタイのやつらが何も言わないところから、何かあるだろうな。
「何かあるな……」
隣の悠里も俺の意見と同じらしい。
「ああ、そうだな」
真剣な表情で学院長らしき女性を見つめる。
というか、こいつは絶対に学院長だろうな。
こんな学校行事……ここは学院だから学院行事かな?
ま、それはどうでもいいとして、
そんな大事な行事に学院長自ら出てこないなんておかしいしな。
「…………」
途中、隣から視線を感じたりしたが気にしないことにした。
『それに関しましては、こちらで説明します。
ですが、少々お待ちください』
そういってから、目の前に出現したモニターらしきものを弄る。
そして五分ぐらいすると、
試験会場に設置されている大きなスクリーンモニターになにやら映像が映る。
そこに映った映像は……
生徒達が整列してる映像だった。
そしてその中には彩葉や修史、アイリスもいた。
『ああ、そちらの生徒達も聞こえますね。
……これより学年混合チーム対抗戦の説明をします』
その言葉を聞いた瞬間、俺の体が緊張のせいか硬直するのがわかった。
『まず初めにこちらにいる二名ずつでチームを組み、トーナメント戦を行います。
そしてその結果を元に、上位10チームにポイントを渡します』
ああ、なるほどね。
コレだけで大体、わかったわ。
ってか、上位10チームってどんだけ多いんだよ。
まぁ、一学年6つのクラスがあるから仕方ないっちゃあ仕方ないけど。
『そしてそれから三名ずつのトーナメントを行います。
そしてその結果とさっき出た結果を合わせて、
一番ポイントが高かったチームの勝利ということです。わかりましたか?』
学院長の言葉に全員がはい。と元気良い返事をする。
『うん、いいお返事です。
では、今から二名チームのトーナメントを行います』
学院長が指パッチンをすると、
スクリーンモニターが変わり、トーナメント表になる。
『なお、順番はシャッフルになりますのでご了承ください。
シャッフル、スタート!!』
シャッフルスタート。
そう言った瞬間、トーナメント表に映った俺達の名札がバラバラに動き始める。
そして学院長の『ストーーーーップ!!』という掛け声と同時に動きを止める。
その瞬間、俺達の名札があった場所は……
「……マジ?」
「嘘でしょ?」
『おっと、これは最初っから期待出来そうですね』
一番左のところだった。
つまりは一回戦、一試合目。
別にそれは良いーーだが、一番良くないことがあった。
『なんということでしょう。
まさか一回戦から一年生が三年生に当たることになるとは……』
そう、三年生が一回戦の相手なのだ。
それだけならもしかしたらなんとかなるかも知れない。
そう思うことも出来るのだが、もう一つ嫌な出来事がある。
対戦相手の名前をさっき、見てみたのだが、
【藤原 智也&永瀬 千穂】と書かれていた。
そしてそのうち、片方……藤原 智也の名前を入学前に見たことがある。
藤原 智也 クラリア魔法学院、生徒会執行部書記。
現在、この学院で会長の次に強いとされている人物だ。
「はぁ、これは一回戦負けかな。姉さん達に謝らないとな」
隣で悠里が暗いテンションで何かを呟いていた。
「……悠里、一つだけ勝つ方法はあるぜ」
コレは限りなく賭けに近い。
というか、俺が頑張らないといけない。
「どういう作戦だ?」
「おまえ、永瀬の方とタイマンで戦えるか?」
俺の言葉を聞いて、悠里は考える。
「もしかしたら出来るかも知れないが、それがどうかしたか?」
そうか、なら良い。
そういってから作戦を考えるのをしめるかのようにある言葉を言う。
「……俺が藤原とタイマンで戦う」と。