第四話 戦闘で空になっちまったぜ
麻名瀬はまだ、中級の邪を倒せる程度しか力が無く上級とやりあっては負けるのも目に見えていた。しかし、彼女は成長することを急ぐ余り上級とばかり戦っている。コレは良くない傾向だ。夏休みになれば成長に協力してやることが出来ない訳ではない。このまま無理させると危険だし早く夏休みになってもらった方が良いかも。
「邪上級か一発で決めるぞ」
『はいです』
左手には札が4枚握られている。
「青式零番!」
陣が発生し陣から水が大量に湧き出る。
「青式二番!」
下に落ちようとする水を即座に空中に止めて自分の周りに浮かせる。
「青式四番!」
作り出した水のなかに長刀をいれ、まとわせる。
この式を使うと、武器の周りの水が敵を追加として貫いてくれる。
人とは違い、刃で切られたところで消滅はしない。というかダメージだけでは霊や邪等は消滅しない。
消滅はしないが、それの耐え切れるダメージの限界を超えると動かなくなるのだ
このときに手に持っていた札は1枚になっていた。
その状態で邪に突っ込み、横薙ぎに払うと、周りの水が敵の体を貫き、敵は停止する。
「大丈夫か?薫」
「ちょっとドジっちまったぜ。まあ怪我は無いぜ」
「だから、邪上級と戦うのはまだ早いって。夏休みにでも鍛えてやるから」
「お・・おう」
ここだけの話勇の訓練はスパルタである。薫としては出来れば受けたくない。
「ところで、昇天させられるくらいの霊力は残してんだろうな?」
「スマン。戦闘で空になっちまったぜ」
「やっぱり」
肩を落としながら昇天の準備に向かう。
「青式十一番!わが聖なる水にてかの者の罪を洗い流し、最後の試練を与えよ」
試練とは、三途の川を渡ることを象徴していると言われている。ここに残った者達は肉体が死んでいるのに川を渡ろうとしなかった者達であるのでこの試練は再度やらされるのだ。
「昇天!!」
コレで、邪の姿は消えていく。
そして、最後の札も無くなる。
「全く、お前は何で自分より強い奴に当たりに行く?人間相手じゃないし上級になると黒式って言うまだ解明されてない技を使って来るんだぞ」
「だって早く強くなりたいじゃん。オレだって上級相手に互角にやり合いたいんだぜ」
「あせるな。それだと死に急ぐことになるぞ」
『自分と同じくらいの強さの相手と戦って徐々に段階を上げていくほうがいいです。私の前の契約者も貴方と同じようにやってすぐ死んでしまったですから気を付けた方が良いです』
薫は皆から反対の声を受け何も言えなくなった。
「お前はもう少し段階を踏めば普通に邪上級なんて倒せるから安心しろ。それにお前は何のために陰陽師になった?」
「両親の仇を討つため」
「だったら、仇を討つ前に死ぬようなことは止めろよ。俺が協力してやるから。あ、あと風鎌も今度からは止めろよ。いつでも具現できるように霊力込めた札一緒に埋め込んでやるから」
俺は薫のパートナーの鎌鼬。飯綱風鎌に了承を取る。
『うむ、承知した』
薫の顔から血の気が引く。
(あ~、風鎌が具現すると手がつけられないもんな~。なんていうか早すぎるし。止めに行くと切られそうになるし。ま、20秒くらいしか具現できないだろうけど)
これからは、心配事も少し減るだろう。
「あ、薫、お前戦闘で札使ってるか?」
「いんや、使ってねえけど何か?」
所詮札は式のイメージを固定するだけのもの。使わなくても出来るが、使った方が威力は増えるし、霊力も消費が減るので邪位の相手なら使った方が得をするのだ。まあイメージ固定の時間はかかるけどな。
「今日みたいにすぐに霊力切れないようにするために札使え。それで威力もちょっとカバーできるとこもあるしさ」
「・・・おう」
「さっきも言ったけどさ。別に焦って強くならなくてもいいんだよ。そうやって強くなるとなにかあった時かえって折れやすいから。今は我慢だ。それにお前陰陽師ははじめてからまだ7年しか経ってないだろ。普通は上級の邪を倒すのには12年くらい必要なんだよ。中級でさえ10年はかかるのにお前もう倒せてるだろ。十分強い方なんだって。・・・大体魔術の方だと俺より強いし・・」
何故こいつが魔術を使えるかはそのうち言うことにする。
「そうか、俺はまわりと比べると結構成長が早い方なのか・・・。よし、なら今年中に絶対上級を倒してやる!!!夏の特訓頼んだぞ!勇!!」
うわ、凄い変わりよう・・。
大体、焦るなって言ったのは聞こえなかったのか?今年中とか結構きついだろ・・・
そんな事を考えていた俺は、頬をかきながら困ったような顔をして軽くうなずくのだった。
今回からサブタイトルをその話の台詞にしました。
次投稿するとき今までの奴もこういう風に変えますので。
これからもよろしくお願いします。