第13話 ・・・暑い・・暑い・・・あつい・・・・熱い
7月26日終業式
7月も終盤になり、梅雨もあけ、例年よりも気温が高くなり真夏日の今日。
朝から体育館に集まらされた俺たちが行うのは終業式である。
今日の予想最高気温は37度。最低気温でも30度ととても暑い中、全校生徒が集まり、式を
行うのは、拷問としか思えない。
「・・・暑い・・暑い・・・あつい・・・・熱い」
こう呟いているのは後ろの奴で、決して俺ではない。
10分ほど前から急に呟き始めたので、前にいた俺としてはホラーである。
まあ、この後ろにいる奴というのは拓也であり、漢字の間違いは気にしてはいけない。
「そう暑い暑い言ってるから暑いんだ。誰かさんもそうやって夏の部活と駅伝練習を乗り切ったらしいから見習ってみろ」
ここで会話はストップ。
なぜなら・・・・
一言しゃべるごとに相当暑く感じんだよ!!
校長の話は、こういう時に限って長い。
校長はどうやらこの暑さを味方につけ、自分も一緒に熱くなっている様だ。
そのせいで、もう5人も倒れたと言うのにかまいもせず話し続ける。
あ、また一人倒れた・・・
7月28日 8時
今日は山篭り出発の日である。
土曜日のうちに薫には連絡入れといたし、昨日までに準備は終わらせてある。
待ち合わせは薫の家に9時にしてあるから、少し時間には余裕がある。
薫の家の場所は俺の住む市と同じである。
薫は俺と同い年だが、学校は違うのである。
「じゃあ行ってきます」
玄関前、俺が山に出発すること、真実を知っている2人が送りに来てくれている。
「気をつけてね」
「しっかりと鍛えてくるのじゃぞ」
「分かってるよ」
『じゃあ、行ってらっしゃい』
祝詞は送る言葉をかけてくれなかったが、やはり前言われたとおり心配されてないのだろうか
まあ、そんな事は気にせず薫の家に行こう。
今日から厳しい訓練の始まりだ。
祝詞view
昨日勇が荷造りをしていた。
だから多分今日どこかに行くのだろう。
去年も一昨年も毎年勇は長期休暇になるとどこかへ行ってしまう。
「はあ・・・」
心配だ。
だからといって、面と向かって言葉をかけてやることも恥ずかしい。
憂鬱だ。
って何考えてんだ私。
そう考えていると3人が玄関から出てきた。
勇は姉さんとじいちゃんと少し会話をするとすぐに行ってしまう。
面と向かっては言えないし、この前は心配なんてしてないって言ったけど、それは本当じゃな
い。本当は誰よりも勇を心配してる。勇が何してるかは知らないけど誰よりも。
だから、
「気をつけて。行ってらっしゃい」
少女は外で歩く一人の少年に向かって小さな声で、しかし、はっきりと言った。




