第12話 私が作ったんだから
屋上
弁当のふたを開けると、俺が今日まで食ってた奴と雰囲気が違う。
「これ、お前が作ったのか?」
「ええ、そうよ」
やはり。じゃあ今までの俺の奴は姉さんが作ってたのか。
「お前料理できたっけ?」
「出来るようになったのよ」
「味は?」
「保障する。けど、あんたそれ全部食べるつもりじゃないわよね?」
取り分けを行おうとしない俺に見かねたか、祝詞が催促する。
「じゃあふた借りるぞ。あ、そういえば箸買わないと。じゃあ購買行って箸買ってくるわ」
「・・・私の使っていいわよ」
祝詞が少し赤くなりながら呟く。
しかし、余りに小さい声だったので聞き返してしまう。
「え?なに?」
「私の使いなさいって言ったのよ!」
「え?でも」
「いいから使いなさいって言ってるでしょ!!」
またもや切れ気味になった祝詞に負けておく。
弁当を食い始めると祝詞がなにやら少し赤くなっていたようにも見えたが、どうしたのだろう
か。そんなに恥ずかしいなら俺箸買ってくるのにという台詞は言ったらまた(理不尽に)怒られ
そうなので、礼を言ってその箸で食べることにした。
まず一口卵焼きを食ってみる。
「ん、美味い。美味しいなこれ」
祝詞が作った弁当はとても美味しかった。
祝詞は弁当をほめられるとぱぁっと明るくなり、どんどん食べろと催促してきた。
食い終わった後
「祝詞。お前の料理美味かったぞ」
「ふ、ふん。そんなの当たり前じゃない。私が作ったんだから」
「ありがとうな。自分の分まで減らさせちまって」
「心配ないわよ。昼は余り食べない方だから。それより、本当に美味しかった?」
「ああ、かなり美味かったぞ」
「じゃあさ、今度から私が勇の分作ってあげようか?」
祝詞は小さくこもった声で顔を赤くしながら言ってくる。
「え?いいのか?」
「いいのよ。私が言ってんだから」
「じゃあ頼むよ。弁当をありがとう、そしてこれからよろしく」
「あ、明々後日から夏休みね」
「ん?ああ。そうだな」
「今年もどこか行くの?」
「ああ、1週間くらい居なくなる」
陰陽師の訓練は毎年恒例となっているものであった。
「全く毎年毎年何やってんのよ?」
「別にいいだろ」
「なんで言わないの?」
「お前が嫌いなことに関係してるから」
いつもはヒントも言わないようにしてるのだが、その日は口が滑った。
「私の嫌いな事?運動?」
確かに、祝詞は運動が苦手ではないのだが嫌いなのだ。
何故だろうか。
「あ、ああ。そうだ」
「まあ、じいちゃん達にあんまり心配かけるんじゃないわよ」
「お前は心配してくれないのか?」
「してやらないわよ」
「酷いな」
と笑いながら言うと祝詞も笑い返してきた。
もう昼休みも終わる。
本当は祝詞は勇が居ないとき気が気でないのは黙っておくべきか・・・




