タイトル未定2025/11/04 00:13
時々見せる葉月の優しい顔が困る。意識してなかったけど、あんな顔されたら恋人じゃないのにそんな気分になってしまう。
待ち合わせの時間までもう少しある。早めに来てしまった自分が恥ずかしい。
どうやら浮かれている感じがして、傍のカフェでドリンクを買うと待ち合わせ場所に戻る。
冷たいカップが指先を冷やしていく。頭を冷やすには丁度心地いい。
道の向こうから葉月が歩いてくるとすれ違う女の子たちが彼に振り返った。葉月は前しか見ておらず周りの視線など関係ないらしい。
「待った?」
一見チャラいこのイケメンはサングラスをずらして笑ってみせる。
「待ってない。ドリンク飲んでたし」
「ああ、俺も飲みたい」
「買いに行く?」
「いや、いい」
葉月は手を伸ばすとドリンクのストローを銜えた。葉月の髪がかじかの頬に触れて甘い匂いが鼻を掠める。
「うーん、甘い。うまい。うん?」
急な接近にかじかの心臓がドッと走り出していた。ぎゅっと目を瞑り顔を背ける。
「どうした?」
「なんでもない」
「うん?」
葉月が顔を覗きこむので手に持っていたドリンクを葉月に押し付けた。
「ほら、飲みなよ。美味しいよ?」
「ああ、ありがと」
何、これ?だって葉月は友達じゃない。おかしいよ、こんなの。
隣を歩く葉月を見上げる。サングラスを外した顔はいつもどおりでかじかの視線に気付くと優しく笑った。
最近の自分は変だと思いつつ課題を作るためにラップトップとにらみ合っている。
かじかは頬杖を付くと机の上にある携帯電話を見た。何かメッセージが来ているらしく点滅している。気が散るといけないから手には取ってはいないが、さっきから数分置きくらいに届いている。迷惑メールの類だろうか?
またピコンっと音がして、かじかは仕方なく携帯電話に手を伸ばした。
「うん?」
メッセージは葉月だ。開くと今丁度送ってきたらしい、迷惑メールにまぎれている。
「何してる?」葉月らしいメッセージに噴出すとかじかは指先で文字を打つ。
「課題やってる」
「課題?進んでる?」
「進まない。ウサギにしようかネコにしようか悩んでる」
「うーん、じゃあネコにしたら?」
「ネコか、そうしようかな」
「出来たら見せて。俺まだ、かじかの作品みたことないし」
「まじで?」
「うん、誰かに見せるために作るほうがモチベ上がるよ?」
「そっか……そうやって作ってるの?」
「うん、俺は被写体がいるし……良い物作って見せたいって思うから」
「わかった。頑張ってみる」
「うん、頑張れ」
やり取りが終わり、電話の向こう側で葉月が笑っているような気がして、かじかは微笑む。
最近本当にこういう感じになることが多い。なんだかんだ一緒にいて、いろんな話をしている。それでも時々ドキっとすることが多くなって、どこか居心地が悪い気もしている。
かじかはラップトップに向かうとネコを描く。デザインは、モチーフは、考えることは山積みだが、葉月が頑張れと言ってくれたのだから頑張れそうだ。
以前作った画像のファイルを呼び出すと一つ一つ確認を始めた。
「で、課題クリアしたんだろ?」
カメラをいじりながら葉月が笑う。かじかは両手を伸ばすと頷いた。
「うん、今回はありがと。助かった」
「そっか……で、俺はそれ何時見られるの?」
「え?」
「見せてくれる約束じゃん?」
「そうだっけ。じゃあ」
かじかは鞄から小さなパソコンを取り出すと電源を入れた。すぐに立ち上がりデータを呼び出すと再生した。小さなネコと風景のアニメーションだ。
「おお、凄いじゃん。てか・・・上手だな」
「そう?ありがとう」
「うん、色合いとか最高。俺の好きな色だ」
葉月が微笑むとかじかが頷く。
「そう、ネコにしたらって言ってくれたから。それに誰かのために作るっとモチベ上がるって言ってたでしょ?だから好きなのに寄せてみた」
「そっか……。どうだった?」
「上がった。ってか……凄い楽しかった」
「だろ?」
葉月が嬉しそうに笑うとかじかの胸がぎゅっと締め付けられた。
「うん……ありがと」
「うん。俺もさ、今回は色々撮ってるけど、最高のができそう」
「そうなの?」
「ああ、出来たら見せる。課題とは違うのでコンテスト用のやつ。応募するかはわかんないけど……」
「応募しないの?」
「個人的に撮ってるからなあ……」
「そっか。前のさ……賞取ったの素敵だった」
「ああ、あれはさ、まぐれだと思う。いつもラッキーなんだって思ってる。だってさ、良い写真ばっかなんだぜ?丁度目に留まって選んでもらえた……そんな風に考えてるんだ」
「謙虚なんだね。もっと自信満々かと思ってた」
「まさか……いっつもドキドキしてるよ。今だって」
「今?」
かじかが葉月の顔を見ると彼の顔が赤く染まっていた。




