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フィルター  作者: 蒼開襟
2/6

タイトル未定2025/11/04 00:11

 翌日のランチで訪れたカフェ。何故か目の前には葉月優雨がカレーを食べている。どう してこうなったのかはかじかにもよく分かっていないが、二度目ましての二人が合席し ている。

「冷めるよ?」スプーンを口に運びながら葉月がかじかを見る。

「ああ、うん」

 とりあえず目の前のカレーに手をつけて口を動かす。昨日の夜ははっきりとわからなか ったけど、目の前の葉月優雨という男の顔をまじまじと見る。

 女の子たちがキャアキャア言うのは間違いないルックスに、どこか無愛想な話し方。い ままでこんな雰囲気の男の子は傍にいなかったから不思議な感じだ。

「何?じろじろ見て」

「え?ああ……ごめん。昨日はよくわかんなかったから……確認してる」

 かじかが淡々と言ったので葉月が笑う。

「何それ。睦原さん、面白い」

「そう?っていうか……葉月君ってすっごい見られてるね?」

 さっきから周りの視線が彼に注がれている。傍にいるかじかに向けられる視線は冷たい が。

「うん?ああ、ごめん。俺、ファンがいるみたいで」

「……へえ」

 かじかの反応に葉月が噴出す。

「面白……今までいなかったタイプだ。ふうん」

「なに?」

 カレーをすくったスプーンが止まる。葉月の目が悪戯っぽく笑った。

「睦原……かじかだっけ?かじかって呼んでいい?」

「……え?」

「俺のことは優雨って呼んで。今から俺ら友達な」

 葉月はそう言うと楽しそうに頬杖をついた。丁度ランチのデザートのアイスが二つ運ば れてくる。

「ほら、早く食べないと溶けちゃうよ」

「ああ……」

 かじかは眉をひそめると急いでカレーを食べた。



「友達って?」

 葉月と出会ってから二ヶ月が経とうとしている。ランチを供にして友達と宣言した葉月 はあれから時間があれば、かじかと過ごしている。

「うん?」

「だから、友達ってこんな感じなの?私男の子の友達いなかったから」

「ああ、俺も女の子の友達はいないな。そういや」

 今日は休日ということもあり、葉月から誘われて紅葉を見に来ている。カメラマンらしく彼はちょくちょく何かを見つけてはカメラを覗き込む。

「こういうのって……一人のほうがいいんじゃないの?集中できるの?」

「うん?」

「だから……撮影の邪魔にならないの?私は」

 かじかが足を止めると葉月はカメラを覗いたまま即答した。

「ならない。かじかはな」

「それってどういう?」

「どういうって……かじかは邪魔しないじゃん。俺が好きにしてても怒らないし、大体 は文句言うもんなんだ。せっかく一緒にいるのにってさ」

「そうだろうね」

 カメラを下ろして葉月はかじかを見る。

「そう、分かってるのにそれをしないから」

「……しないわけじゃ……」

「怒ってんの?」

 かじかは首を横に振る。こんなことに怒る意味なんてない。

「ほら。そういうとこ」

 葉月は優しく笑う。かじかの胸がドッと鳴った。

「居心地がいい。こういうの初めて、俺」

 友達ってこういうもの?

 かじかの心を読んだのか葉月は悪戯っぽく笑った。

「そう……じゃなくてもいいよ?」



 撮影のたびに葉月はかじかを誘う。遅くなるときは必ず送ってくれる。

 けして送り狼にはならない葉月はかじかにとって良い友達……なんだろうか?

 二人で会う時間が多くなっていても嫌な気はしない。

 でも葉月といると感情が複雑になってくる。前の彼氏と比べたら圧倒的で、思い出すこ とすら無駄な時間だ。そんなことを葉月に零したら彼は笑っていた。

「そんな奴、さっさと忘れちゃえよ」

 海にカメラを向けて葉月は言う。

「俺がいるんだし、忘れちゃえよ。新しい恋見つけたほうがいいよ」

「簡単に言うなあ……」

 かじかがぼやくと葉月が笑う。

「当たり前じゃん。忘れたほうがいいからな」

「……それって友達として言ってんの?」

 かじかが投げた言葉が波に消えた。葉月はただカメラを覗いている。

 何度目かの波が打ち寄せて葉月の足元を濡らしては消えた。

 何か囁くような声が聞こえた気がして、かじかは視線を上げたが、葉月は相変わらずカ メラを構えたままだ。違うのは時々こちらを向いているだけで。

「撮ってんの?」

「いいや、撮ってない。撮ってもいいなら撮るけど」

「あー、それは無理。写真は好きじゃない」

「ん?かじかは映像専攻だっけ?」

「……まあね。作るのは好きだけどさ、なんかね」

「うん?自分に自信ないの?」

 いきなり図星をつかれてかじかは苦笑した。

「うっわ。そう、美人でもないし、ほら背が高いからさ……」

 かじかは175センチ近くある。普通の女の子と比べると背が飛びぬけている。おかげでヒールも選んだことがないし、流行の可愛い服も着た事がない。

「そう?」

 葉月はかじかの傍に立つと片手で頭に触れた。

「俺はかじかよりもでかいから、気にすることないんじゃないの?」

 頭一つ分背の高い葉月。話しているとき少し目線が高いのは少し新鮮だ。

「それに美人じゃないなんて誰が言ったんだよ?お前は自分を知らないだけだよ」

 誰もが振り向く男に言われてもと、かじかが苦笑すると葉月はかじかのおでこをつついた。

「何でそんな顔すんの?本当……そういうのはよくないぜ」

「……うん。心に留めておく」

 かじかの心無い返事に葉月は小さく溜息を付くと、かじかの前髪を指先で跳ねた。

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