僕のことをとても理解して優しくてどんな事でも許してくれる彼女の目的
僕にはとても大切な彼女が居る。
彼女は僕のことをとても理解してくれていて、僕が「あっ」と一声言うだけですぐに何をしてほしいか理解してくれる。
おまけにとても優しくてどんなことをしても笑って許してくれるのだ。
そんな人だから僕は彼女に心から惚れていた。
それを知ってか知らずか、彼女は僕の隣でいつでも微笑んでいた。
彼女は僕の好物をよく知っており、僕の大好きな味付けの濃い美味しい料理をいつでも作ってくれた。
僕が移動するのも大変だと言うとすぐに車を出してくれる。
いや、時にはどうやったのか分からないがヘリコプターまで出してくれるのだ。
挙句の果てには僕が望めばいくらでもお金を渡してくれる。
おかげで僕はほとんど何もすることもなく大人になった。
きっと僕は彼女が居なければ生きていけないだろう。
だけど、大丈夫だ。
何せ、彼女が僕の隣から消えるなんて考えられないから。
そんなある日、僕にとんでもない病気が見つかった。
医者は不摂生のせいだと言っていた。
呆然とする僕を彼女は励まして、一緒に自宅に帰宅した。
少しずつ落ち着きを取り戻し、僕の隣に居てくれる彼女に僕は言った。
「ありがとう。これからも二人で生きていこう」
すると彼女は微笑むと不意に見たこともない機械を取り出して言った。
「するわけねえだろ。馬鹿じゃねえの」
今まで聞いたこともない言葉に唖然とする僕に彼女は吐き捨てるように言った。
「私はあんたに人生を狂わされたんだ。だから、あんたの人生も狂わせてやったんだよ。このバカ」
その言葉と共に彼女は機械を操作して僕の前から消えた。
何が起きたか分からないまま僕は独り誰もいない空間を見つめるばかりだった。
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タイムマシンを使い、私は『自分の』現代に帰宅する。
私を散々に弄んで最後は裏切った末に捨てた男。
そんな唾棄すべき存在を同じように弄んでやったが、私の心に残ったのは虚無感だけだった。
何せ、別の時間軸の人物に干渉しても、この時間軸の『私』には何の影響はないからだ。
いや、むしろこの胸糞の悪さから察するに……。
「人を呪わば穴二つって奴か……」
ため息と共に私は後悔を吐き出していた。
これで私はもうあの男を心から憎む権利を失ったのだ。
「あんな男に拘って馬鹿みたい」
過去に干渉しようとも何の意味もないことを実感する。
何も変わらないと言う意味ではタイムマシンなんて使わないで、頭の中で延々とあの男に復讐をした方がマシだったかも知れない。
「ほんっとに馬鹿みたい……」
後悔を呟き、私はため息をつくばかりだった。